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2010.01.31

クックパッド

ネット上には多くのレシピサイトがあります。クックパッドはその中でも圧倒的なレシピ数70万点弱を誇りますが、ユーザーが自由に投稿できるため《玉石混合》です。私も料理レシピを探すために、いろんなサイトを検索してきましたが、クックパッドに関しては、どちらかというと敬遠してきました。《石》を取り除いた《玉》だけサイトのほうが効率が良かったからです。そういうわけで、私の評価が低かったクックパッドに対するイメージを変えたのは、料理レシピを公開したことがきっかけでした。

 料理を作るのが好きな人ならわかると思いますが、既製のレシピを再現するだけに満足せず、自分なりのひと工夫を皆に知ってもらいたくなるのは、人間の本性です(正確に言うと私個人ではありません。本人がパソコン音痴なので私がネット処理を代行しています)。
 そこで、クックパッドに無料ユーザー登録し、レシピをアップロードしてみました。うん、使いやすい。説明を全く読まずに、最後までできました。この使いやすさなら、レシピ情報発信の敷居はかなり低いと感じました。女性に人気があるという理由の一つがわかりました。
 そして、非常に考え抜かれていると思いました。例えば、twitterは140文字という制限が長所となっています。これより長くても短くても、上手くいかないような気がします。それと同様に、クックパッドは、材料の入力欄、手順の入力欄、写真、そういった分量と配置のバランスが絶妙です。これは、クリックのデータから導き出したものだそうで、13文字を超えると可読性が下がることを発見したため、1箇所8文字から13文字という設定を決めたそうです。同じように、解説文は80文字。つくれぼは30文字。

 誰かが登録したレシピに対して、「そのレシピで作ってみました」という料理写真を登録する別のユーザーの報告が「つくれぽ」です。例えるなら、つくれぽは、ブログで言うところのトラックパッドみたいなもの、と言えます(日本のブログの世界では、トラックパッドはイマイチ活用されていませんが)。私は、つくれぽに写真をアップすることで気がつきました。クックパッドは、「観るサイト」ではなく「参加するサイト」つまりコミュニティーサイトなんだなと。ユーザーは「日記」も書けるので、ほとんどブログ化している人も多いです。

 ブログとかSNSとかの世界では、(このブログのように)株とか、いろんな趣味とか実用とか、いろんな興味関心で、いろんな人がネット発信していますが、クックパッドは《料理》というテーマに特化し、それに最適なフォーマットを提供しているサイトなのです。おそらく、日本の《料理人口》は、《株人口》や《いろんな趣味人口》などと比べても、最大規模ではないでしょうか。

社長 
毎日の事で作業になりがちな料理を、どうしたら楽しくなるだろうと考えた時に、二つの答えが挙がってきました。一つは、一生懸命作った料理は、食べると無くなってしまうので、成功した料理を記録しておけるアルバムを作ると良いと思ったのです。 そして、もう一つ料理をして一番嬉しいのは、作った物を食べてもらって「おいしい」と言ってもらえる事です。しかし、毎日友達を呼んでおもてなしをするわけにもいきませんし、意外に自分が作った料理を評価してもらう場は少ないのです。
田中 
確かにそうですね!
社長 
そこで、この二つを実現するのは、インターネットだと思ったのです。自分が作った料理のレシピを書き、写真を撮ってアルバムにしてネットに載せると、それを見た他の人から「おいしかったよ」という嬉しい意見をもらえます。自分のレシピをインターネット上に載せた人が、一番楽しくなる仕掛けになっているので、是非投稿してみてください。(オフィスWATCH)

 そのように考えていくと、当初は《玉石混合》と考えていた数多くのレシピが、けっして、そのようなものではないと考えるようになりました。

 今、「カレー」と検索すると、23000以上のレシピがひっかかりました。そこから絞り込み、「ごはんもの」のカテゴリで「カレー」なら800以上。そこから「チキンカレー」で140以上。このうち、本格的に作りこんだ専門店並のレシピもあれば、普通の家庭用のもあり、手抜き簡単用もあります。しかし、そのいずれにも、ニーズが有るのです。本格的なカレーを作りたい人もいれば、簡単に作りたい人もいるのですから。以前、クックパッドには、「掲示板」があったそうです。しかし、「料理は千差万別で、議論なんかしても仕方がない」と止めてしまったそうです。
 そして、ユーザー別にレシピが有り、それらがつくれぽで他のユーザーとつながっている。そのことによって、「この人のレシピは私にちょうど、参考になるな」といったんするユーザーを決めると、そこから、つくれぽのつながりで他のユーザーに広がっていく、そういうことで、自分の料理の腕や嗜好に合ったレシピが数珠つなぎでつながっているということなんです。

 昨年暮れの12/26にNHKの「経済ビジョンe」にクックパッドの佐野社長が出演して述べていました。
 「台所で働いている人は、なかなか評価されず、社会とつながっていないと感じている。だから、日本中の台所をネットで繋ぎたいんだ」
 クックパッドのレシピにパソコンで実際に入力してみると、パソコンの前でずっと座って入力するのではなく、調理器具とパソコンを行ったり来たりしながら、書き込んだりするようなことを前提に作られていると感じます。
 本屋サイトは沢山あるのに、いつのまにかAmazonばかり使っているように、料理サイトは沢山あるのに、気がつけばクックパッドが独り勝ちしていたのは、利用者が「日本中の台所とつながっている」と感じることができるユーザーフレンドリーなところで差別化していたんだなと思います。

 「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス (角川SSC新書)」 によると、橋本最高技術責任者は、博士課程で遺伝子配列の意味を分析する細胞コンピューターシュミレーションの研究をおこなっていたそうです。しかし、研究者になっても、解析結果が世の中の役に立つのは数百年後といわれている世界。大学同級生の佐野社長の「どうやったら料理が楽しくなるか、テクノロジーで解決してくれ」という口説き文句でクックパッドに入ったそうです。そこで、ユーザーの辿った形跡を自動的に再現するプログラムにより、ユーザーがアクセスしてきてから出て行くまでの動線を徹底的に調べ、ユーザーの行動から次を感知し、ユーザーの望んでいるであろう動線の候補をクックパッドが考えて提案する、といったところまで作り上げていったそうです。

 

 そもそもたくさんのことをユーザーに求めるべきではない。機能は多いほうがいい、という意見もありますが、ユーザーはそんなにたくさんメッセージは受け止められません。あれもできます、これもできます、ではユーザーには一杯一杯。まずは一つひとつのメッセージで少しずつ信頼関係を築くしかない。だから、クックパッドは4年前のリニューアルでびっくりするほど機能を減らしました。おかげで、ユーザー数はむしろ大きく伸びました。
 僕の好きな言葉に、優れたドアノブは押せばいいか引けばいいかがすぐにわかる、があります。優れたモノは無言語なんです。説明が必要なサービスはレベルが低い。何も説明なしで機能が果たせる。それを目指さなければいけないと思っています。(「クックパッドを作り上げた佐野陽光の事業哲学と技術論」

 売上の推移をみていきます。

- 売上高 (広告事業) (会員事業) (マーケッティング支援)
07.4 310 111 32 165
08.4 676 214 62 399
09.4 1,083 300 177 605

 広告事業も会員事業(会費は月294円だが、無料会員もサービスにそれほど差がない)も、アクセス数の伸びとともに伸びると思いますが、いちばん興味深いのは、マーケッティング支援。この事業には、3つのメニューがあって、一つが食品メーカーが提供する題(つまり商品を利用した)に沿った「レシピコンテスト」。もう1つが、食品メーカーがレシピそのものを提供する「スポンサードキッチン」。それと、検索のデータベースを販売する「たべみる」です。


 レシピコンテストですが、これがクックパッド会員の一番の知恵の出しどころ。目玉です。


マーケティング支援ビジネスの一例に、松下電器産業株式会社(ナショナル)の「電気圧力なべ」がある。このなべを使ったレシピと、なべに対するユーザの感想を元にページを構成したところ、「10年分のなべの売上をキャンペーン期間中だけで計上」するという驚愕的な効果が現れた。これが、料理好きな主婦が毎日のように訪れるサイトの実力なのだ。

また、お酢のミツカンでは、ミツカンの酢を賞品として、酢を使ったレシピを募集。同時に、店頭に並ぶ商品ボトルに、クックパッドのロゴとレシピ、QRコードを印刷したネックリンガーをつけた。ウェブと店頭の連動で、酢の人気を訴求しつつ、新規顧客を呼び込むことに成功した例だ。

また、コンビニのローソンとタイアップし、夏の健康維持に注目されるネバネバ食材(トロロ、オクラなど)を使用したレシピを募り、受賞したレシピを共同開発してローソン店頭に並べるという季節限定企画を行った。これにより、日ごろあまりコンビニを利用しない主婦層を店舗に呼び込むことに成功したという。。「日本最大のメディアを利用したマーケティング&テクノロジーカンパニー
」GREEN

 このようにして作られたレシピが蓄積され、その後もユーザーから利用され続けることになります。メーカーから見れば、テレビなどで不特定多数向けにCMを垂れ流し続けるよりも、ずっと広告宣伝効果があると思います。

 日本人女性6,500万人のうちクックパッドのユーザーは800万人(12%)で、うちクックパッドをほぼ毎日利用している人が全体の51%です。週に1回以上は、なんと92.8%なのです。ミクシィやGグリーの飽きっぽく移ろいやすい会員数と比べてみても意味がない。忠誠度の高さが、全く違います。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)とスパイアの実施したインターネットメディアに対する生活者意識調査によると、「信頼度が高い」「伝えたくなる」「集中してみることが多い」の3つの項目で、日本中の数ある有名サイトの中からクックパッドの評価が最も高くなっています。
 また、30代女性に限定すると(日本全女性に対する)ユーザー比率は40%、20代でも30%。おそらく、ネットに親近感のある世代の年齢が上がっていくに連れ、この比率は伸びていくと思います。驚くべき数字ではないでしょうか。私の職場でも、既婚女性が、夕方になると、こっそりクックパッドを閲覧している姿を、見かけます。

 一方、食品メーカーの広告宣伝費マーケットは年間3000億円。クックパッドの売上高は10憶円(会員事業入れても)。クックパッドが一人勝ちであること、その影響力と比較して、あまりにもギャップがありすぎないでしょうか。

  広告マーケットは7兆円くらいある。その殆どがテレビ。2兆円位がテレビコマーシャルに投下されているのが現状なのですが、果たしてそれが効果をちゃんと計算して払われているかといえば、違う。昔からやっているからなどという理由で継続しているケースが多いと思います。昨今の原材料費の高騰は、本当に効果を生めるメディアを判断して、そこに適性予算を投下してマーケティングを行なっていく世の中への後押しになっていると感じています。

 今の広告業界は、お客さんから課題をもらったら、まずテレビをどうするかを考え、その次に雑誌や新聞をどうするか、余った予算でWEBはどうしましょうか、と考える。大手の代理店でもそういう手法が、未だに本流になっていて、クライアントの本質的な課題解決になっているのかといえば疑問が残ります。(略)

 食品業界はまだ7割くらいが、数億円かけてまずテレビコマーシャルをうつというのが本流の流れですが、数億円かけるとクックパッドではここまでできる。クックパッドだったら売上をここまで伸ばせるのに、かつ具体的な効果も見える形で、と思います。
(クライスインタビュー)

 では、ROEを分解してみます。

ROEは、売上高純利益率 x 総資産回転率 x 財務レバレッジ、です。

下記式の、
第1項の売上高純利益率は、純利益/売上高、
第2項の総資産回転率は、売上高/総資産、
第3項の財務レバレッジは、総資産/株主持分、
3つを掛け合わせて、分子と分母を消していくと、純利益/株主持分、すなわち、ROEになります。ちなみに、貸借対照表上の数字は、当年度と前年度の数字を足して2で割っていますので、四季報とかの数字とは異なります。

19.4期=20.1% x 2.05回 x 1.69倍 = ROE 69.8%
20.4期=26.0% x 1.73回 x 1.60倍 = ROE 72.1%
21.4期=22.1% x 1.57回 x 1.45倍 = ROE 50.2% 

 さすが、とんでもない数字ですねぇ。

 なにしろ、利益率が高い。その理由は、売上原価と販売費の双方合わせても売上高の5%程度。費用の大半は、人件費、家賃、賃貸料、減価償却費などです。
広告及びマーケッティング支援の単価は、知名度アップにより上昇していくでしょうし、利益率が大きく下がる理由は思い浮かびません。
 急成長故に売掛金は膨らみ気味ですが、それでもキャッシュフローは良好です。
 財務面では、心配要素は見当たらないと思います。先行投資及び管理費の伸びは続くでしょうが、売上の伸びで吸収できると思います。23年12月完成分まで4億7千万円のデータセンター等の設備投資が予定されていますが、現預金(プラス売掛金)で問題ありません。
 要は、事業面での評価次第です。各食品メーカーが、「広告費のネットの比重を、もう少し増やそう」と動き始めてくれれば、いいのですが。今は、3000憶円市場の0.3%にすぎません。がっぽりいただきましょう。

ちなみに、類似企業の時価総額は次のとおり

ディーエヌエー  2,536憶円
グリー  2,359憶円
ミクシイ  937憶円
クックパッド  281憶円

10年後には、クックパッドは一番上にいると思います。

(おまけ)

 ちなみに、「iPhone女史」のクックパッドアプリ紹介をリンクしておきます。台所でパソコンはつらいですから、アップルのiPadって、台所で調理器具と行ったり来たりする用途には最適ですよね。

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コメント

いつも拝見させてもらってます。

当方クックパッドに興味があり色々と調べていたのですが、競合他社としての楽天レシピの存在をどう思われますか。

さすがにクックパッドのブランド力があるとはいえ、レシピを投稿すると50円もらえるというのには、それになびく会員も多いかと思います。

今後の展望をお聞かせ頂けたらありがたいです。

それでは、失礼します。

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