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2009.08.01

セルシス

今回取り上げるのは、今、注目を浴びているiPhoneを中心とした携帯端末用電子ブックの世界で飛躍しようとしているセルシスです。ニュースは山のようにあり、頭の中が整理しきれないので、今回は、そういった業界情報的な分析は封印し、財務情報を中心に見ていきます。

 事業内容を見る前に、決算情報(以下、単位は百万円)を軽く見てみます。

-売上高経常利益
16.105497
17.1067931
18.101,12088
19.101,77371
20.102,445432

 上場したのが、18年末(19年度初め)です。売上利益ともに順調に伸び、売上が急拡大を始めたのが、18年度始めです。利益だけ見てみると、16年度ぐらいから、ずっと問題ないように見えます。しかし、
 一方、収支で見たのが下の表です。収入(売上)から支出(資産計上前の原価と販管費に有形固定資産購入を加え、減価償却費を引きました)を引いたものが収支です。最初、キャッシュフローで作っていたのですが、未収未払等を資金の範囲に入れたほうが全体の傾向がわかりやすいと考えました。
 
 

-収支借入株式発行
16.10△70△989
17.10△63△7183
18.10△68△51297
19.1020△22365
20.10263△1419

 収支がプラスに転じたのは、19.10期からです。それまでは、支出(ソフト作りの人件費を中心に)に収入が追いつかず、しかし、借入金は少しずつ返していっています。その資金繰りは、ベンチャーキャピタル等に株式を発行することでまかなっていました。計算書上は利益が出ているけれど、恒常的に資金繰りが気になるという感じです。この段階では、夢見る人はともかく慎重な投資家はとても投資対象にできないところです。
 しかし、19年度に入ってからは収支逆転(売上が急拡大し回収が追いつかなかったので、フリーキャッシュフロー的には19.10が、一番悪い数字で、転換点は20年度です)しました。ご存知のとおり、ソフトウエア商売は、製品が多く売れても、製造費がたくさんかかるというものではありません。これまでは、仕事をすればするほど現金が減っていきましたが、(売上次第といえ)現金が貯まっていく状態になりました。
 
 ちょっと、それを確認するために、従業員一人当たりの売上高の推移を計算してみました。
 
17.10 11,327千円(60人)
18.10 12,589千円(89人)
19.10 14,900千円(119人)
20.10 17,595千円(139人)

 これを見ると、今後、人員拡大していっても、それを上回る勢いで売上が拡大していく(つまり、利益はそれ以上の伸び)、と考えても良さそうです。
 しかし、上記は正社員だけで計算しましたが、臨時職員(従事時間数が様々)や外注もあるだろうということで、今度は、外注費も含めて、人件費500万円あたりの売上高推移を計算しました。
 
17.10 7,394千円
18.10 7,165千円
19.10 7,907千円
20.10 8,623千円
 
 まあ、ビジネスモデル上、売れれば売れるほど、一人当たり売上高が上昇するのは当然ですけど。

 貸借対照表は、無駄な資産もなくシンプルで問題はないと思います。ソフトウエア企業にありがちな、研究開発費の資産計上を巡る監査法人との認識のズレ、みたいなことが起こる余地は少ない(あったとしても金額が少ない)と思います。ちなみに、監査法人は新日本。 では、ROEを分解してみます。
 
 ROEは、売上高純利益率 x 総資産回転率 x 財務レバレッジ、です。
 
 下記式の、
 第1項の売上高純利益率は、純利益/売上高、
 第2項の総資産回転率は、売上高/総資産、
 第3項の財務レバレッジは、総資産/株主持分、
 3つを掛け合わせて、分子と分母を消していくと、純利益/株主持分、すなわち、ROEになります。ちなみに、貸借対照表上の数字は、当年度と前年度の数字を足して2で割っていますので、四季報とかの数字とは異なります。
 
19.10期=2.2% x 1.25回 x 1.24倍 = ROE3.4%
20.10期=9.8% x 1.26回 x 1.39倍 = ROE17.1% 
 
 第1項の利益率が伸びていることは、上に書いた収益と費用の関係から当然に予想できるところです。もっと伸びるでしょう。第2項の回転率はほとんど変化がありませんでした。けど、コンテンツの回転率が上がれば、当然に、こちらの回転率も伸びることになります。

 はっきり言って、激動する事業の未来を考えていくのは私の手に余りますけど、数字だけで見れば今のままでも優良銘柄だといえます。
 そういう意味では、大きな夢を見つつ、確実にゲインをしていく手堅い銘柄といえると思います。2年前の現金収支状況を見ると、とてもそんなことは言えませんでした。事業内容は考えずに財務だけで判断するとしたら、投資タイミングとしても、非常にいい気がします(事業内容を考えずに投資するなどありえませんが、念のため)。
 
 
 さて、ここから、事業内容別に見ていきます。
 まず事業内容ですが、セルシスのウエブサイトを見ると、事業ビジョンについて、次のように書かれています。
 

 当社は、アニメ・マンガ制作環境のデジタル化を推進してきた実績とノウハウをベースに、グラフィックコンテンツにおけるトータルソリューションプロバイダーを目指しております。
 コンテンツの制作/閲覧環境から、流通支援、そしてコンテンツを通じたコミュニケーションまで、クリエイターの創作活動をIT技術でトータルに支援し、日本が世界に誇るコンテンツ文化を活性化する、これがセルシスのビジョンです。

 事業区分は、三つです。
 携帯電話などへの電子書籍配信ソリューションを提供している電子書籍サポート事業
 アニメ制作ソフト「RETAS STUDIO」やマンガ制作ソフト「COMIC STUDIO」など、グラフィックコンテンツの制作環境や各種サービスの提供を通して、クリエイターをトータルに支援するクリエイターサポート事業
 コンテンツ制作をしているコンテンツ制作事業です。

 しかし、セルシスの公表資料には、各事業の売上別データは載っていますが、費用及び利益については見つかりませんでした。そういうことで、どの事業が利益に大きく貢献し、どの事業がそうではないのか、という確認ができません。残念ですが、以下、その点が物足りないものとなります。

 まず、電子書籍サポート事業ですね。
 
 セルシスの資料では、電子書籍(携帯向け)の市場規模は、2008年で385億円、2009年予想で480億円となっています。一方、セルシスの電子書籍サポート事業の売上は、2008年で15.0億円、2009年計画で18.7億円。それぞれ、割り算してみると、両方とも3.89%となっています。つまり、現況では、電子書籍(携帯向け)の市場規模の3.89%が、セルシスの売上と計算できます。
 この分野におけるセルシスのビューワーBookSurfingのシャアは9割であり、ビューワー利用料が、この事業の売上そのものです。その料金は、利用料金表を見ると、キャリアによって色々ですが、NTTドコモ向けでは「5%以下」とか、ソフトバンク向けでは「回収金額に対する5%」とか、なっていまので、そういう数字に落ち着くのでしょう。
 2007年度は事業区分が違い、2010年度以降は売上予測が公表されていないため、数字がありませんが、電子書籍市場規模予測からこの計算式で推測すると、売上高(百万円)は次のようになります。
 
2007.10 1,128(推定)
2008.10 1,505
2009.10 1,871(以下、予測)
2010.10 2,178
2011.10 2,334

 こういう市場規模予測は、数字自体は当てになりませんが、イメージはわいたのではないでしょうか。

 ちなみに、説明では、ビューワーであるBookSurfing利用料から大きな収益をあげていることになっています。しかし、その内容は、BookSurfingは、閲覧者に販売するのではなく、提供者から利用料を徴収するという方法によっています。利用料は、コンテンツのレベニューシェア方式(パートナーとして開発や運営を共同で行い、一定の割合で収益を分け合う方式)で、この実態は、コンテンツの電子配布にあたってのトータルソリューションに対する報酬であり、《関所型ビジネスモデル》というイメージはちょっと違うんだろうと思います。
 
 次のIR、

 ACCESS は「ROS」を採用することで、電子コミック市場において圧倒的なシェアを持つ、セルシスとボイジャーの電子書籍ビューア「BookSurfing」向けに制作されたコンテンツデータを、ACCESS の携帯電話向け電子書籍ビューア「NetFront Book Viewer」で活用することが可能になります。(ACCESS とセルシスが電子書籍事業での協業に合意(2009.4.2)

 あるいは、
 
 

 株式会社セルシスは、5digistar株式会社のFlash技術を用いた電子コミック配信サービス『Star ビューア』の取り扱いを、2009 年1 月より開始いたします。(略)
 これまでは、携帯電話公式書籍サイトでの有料配信ビジネスを中心にソリューションを提供してまいりましたが、『Star ビューア』がサービスに加わることにより、いわゆる勝手サイトでの配信や広告対応など、非書籍サイト等での電子コミック配信をより簡単にご利用いただけるようになります。
 『Star ビューア』はFlashLite上で電子コミックを閲覧できる仕組みであり、「ComicStudioEnterprise」で制作されたデータを再利用することが可能です。そのため、BookSurfing ビューアが利用できない環境であっても、Flash Lite が搭載されている携帯電話向けに、画像や画面効果についてBookSurfingコンテンツと互換性のあるデータを配信できます。(「Flash Lite による電子コミック配信サービス『Star ビューア』の取り扱いを開始」

 
 つまり、前者はNetFrontBookViewerで、後者は、Flashで、電子コミックを見ることができるよという提携で、別に、BookSurfingは要らないよ、ということになります。セルシスは、ビューワーのシェア拡大ではなく、コンテンツが(セルシスが定める)標準形式で見ることが出来る環境拡大のほうに注力しているようです。そのための、Flashです。
 
 先行するネット動画の世界に目を転ずると、主流は、Flashです。YouTubeでもニコニコ動画でも、FlashVideoを使っています。しかし、それでは、課金や著作権保護に問題があり、DRM(著作権保護)コンテンツではWMVが利用されています。
 電子コミックでも、アマチュアが発表するのは、自由度の高いFlashで、しかし、プロの場合には、課金ができる方法で、ということになるのかもしれません(Star ビューアでもDRMしているようです、念のため)。
 
 この選択はおそらく正解でしょう。ビューワーを商品として消費者から金を取るというビジネスモデルは、うまくいった例は、思い浮かびません。YouTubeはあれほどの盛り上がりを見せていますが、ビジネスとして大成功しているわけではありません。インターネットの初期に一世を風靡したNetscapeNavigatorは、最初は有料でしたが、お試し版ということで実質は無料化しており、後に、実際に無料に追い込まれました。ユーザーにとって、操作を覚えることが難しいソフトを乗り換えることは大変ですが、ビューワーを乗り換える(複数利用する)なんて、どうということはありません。
 いや、携帯の世界はパソコンと違うと言われるかもしれませんが、iPhone以降、そうとはいえないと思います。
 
 ところで(話題はずれますが)、私は以前、米国のマクロメディアという企業の株を持っていたことがあります。同社は、マルチメディア制作ソフトのDirector、ウエブ制作ソフトのDreamweaverといったキラーアプリを持っていました。特に、Flashは、ネット上での動く表現手法としては、完全にネット上を制覇した状態となっていました。ライバルのアドビも、LiveMotionというFlash互換ソフトを出さざるを得なくなっていました。しかし、その割には、同業のアドビに比べて時価総額が過少だったのです。

 しかし、2005年にマクロメディアはアドビに買収されてしまいます。こうした制作ソフトは、制作者は少数者であり、閲覧者が圧倒的多数です。マクロメディアの収益は、(市場が小さい)制作者向け販売に頼っていました。閲覧ソフト(後にプラグインが、IEとかに標準インストールされる)は、無料配布していたのです。

 Flashは、今でもネット上で相当に普及し利用されている技術です。しかし、技術があっても、収益を上げるビジネスモデルがなければ、報われないのです。
 
 さて、私が最初にセルシスという会社を知ったとき、「ビューワーで90%のシェア?」「制作者向けソフトで収益をあげてる?」とあって、「あ、これはマクロメディアのパターンだ」と思いました。Flashコンテンツと、コミックでは商品性が違うこともわかってますが「こういう企業って、パッと見は華々しいんだけど収益には乏しいんだよね」今では、私の間違いであったことを認めますが、そういう偏見のせいで、セルシスへの注目が遅れてしまいました。
 
 話しを戻します。
 次に、クリエイターサポート事業です。グラフィックコンテンツの制作環境や各種サービスの提供ですね。
 売上高推移(百万円)はこんな感じです。
 
2007.10 356
2008.10 381
2009.10 530(予測)
 
  
 当初、私は制作者向けソフトの市場がニッチだと考えていました。しかし、プロの漫画家は1万人、アマチュアで漫画を描く人は、日本に100万人だとか。日本の人口の1%ということですが、私の周りを見回すと潜在人口は、この何倍も存在するように思います。
 かなり昔、パソコンを始めたばかりの知人の《パソコン師匠》だった私は、「イラストのソフトはないですか?」と相談を受けました。その人は、PTAとか自治会とかの行事案内などに頼まれてイラストを描くような、まあ、よくいるイラストを趣味にしている方だったのですが(上記の100万人の外側に位置する数100万人の予備軍のうちの一人)、キッドピクスでは子供すぎるし、ペインターではリアルすぎる(当時は重かった)し、Flash(当時はイラストソフトだった)はラフすぎるし、イラストレーターはちょっと違うような気がすぎるし、で適当なものがなく、「やっぱり手描きがいいかな」となってしまいました。でも、今では、そういう需要も取り込めるのではないかと思います。ワコムのタブレットはまだまだ改善の余地が大きいと思いますが。
 
 セルシスは、アマチュア用にクリエイターサポートプラットフォーム 「CLIP」というサービスを始めようとしています。前年度から「ツール事業」という名称を「クリエイターサポート事業」に変更しています。「CLIP」の展開を見ても、セルシスはパッケージソフトを売って終わりではなく、トータルにサービスしていこうと事業範囲を広げたということです。まだまだ伸びる余地があります。クリエイターサポート事業の昨年度売上が381百万円。百万人で割ると、一人当たり年381円、月30円。根拠のないイメージですが月に300円(今の10倍)はいけるのではないでしょうか。
 ちなみに、医者17万人を囲い込んでいるソネットエムスリーの時価総額が900億円(セルシスの10倍)、会員137万人を囲い込んでいるゴルフダイジェスト・オンラインは43億円。参考にならない。
 
 ソフト販売だけに限ると、BCNのグラフィックソフト売れ行きランキング(09.06)では、セルシスのllustStudio パッケージ版(6,500円)が1位、Comic StudioPro4.0(19,100円)が2位と、アドビのPhotoshopやIllustratorを押さえています(もっとも値段が違いすぎ、金額シェアではアドビのほうが20倍ですが)。Comic StudioPro4.0の19,100円は、(周辺機器も必要とはいえ)アマチュア漫画家に十分な値段設定だと思います。
 Comic Studioの現在の累計販売本数が、日本語版8万本、海外版5万本。1年に直すと、日本語と海外、それぞれ1万本ずつぐらいの売上です。100万人のうち4人に1人が5年に1回は買替えるとして、年に5万本で、今から2.5倍の売上本数となります。この数字を、3人に1人にはならないかな、とか、アップグレード料金は、とか変更してみることで想定成長余地は変わりますが、ともかく、うまくすれば市場拡大余地はかなりある、うまくいかなければこれ以上伸びない、という感じだと思います。
 
 活字離れと言われつつ村上春樹が爆発的に売れていることからわかるように、結局は、コンテンツです。そして、良質のコンテンツが生まれるためには、裾野が広く、《制作ツール》と《発表の場》が整っているほうが良いに決まっています。気の長い話しのようですが、制作者の裾野を広げ、キラーコンテンツを幾つも生み出すことが、セルシスの長期的利益になるのだろうと思います(当たり前すぎることを書いてしまった。つまらない)。
 
 さて電子書籍配信ソリューション事業でのBookSurfingシェア9割を支えているのが、クリエイターサポート事業でのComic Studioシェア9割です。Comic Studioからのデータ含むコミックのデータ(紙ベース含む)をComic Studio Enterpriseというソフトを経由して、BookSurfing用データとして販売するという展開となっています。しかし、電子書籍配信ソリューション事業での収益は、上記で書いたとおりBookSurfingというより、Comic Studio Enterpriseで展開するトータルソリューションにあります。今は、そこで結構手間暇がかかるから、トータルソリューション事業として成り立つ余地があります。
 しかし、前述したFlashのように、制作ソフトから、電子コンテンツであるFlashファイルが、クリック一つで再生できてしまうようになったら(近い将来にそうなるでしょう)、どうでしょう。そのときに、果たして、必要とされるビジネスであろうか、という疑問が生じてきます。つまり、コミック制作ソフトのメニューから「電子書籍形式で出力」をクリックすると、電子書籍ファイルがあっというまに生まれてしまうようなイメージです。
 おっと、今回は事業予測には深入りしないのでした。
 
 最後は、コンテンツ制作事業です。売上高(百万円)推移は、
 
18.10 288千円
19.10 558千円
20.10 370千円
 
 途中で事業区分の変更があったので、18.10は、前に書いた計算式による推定です。内容的には、他2事業に比べるとセルシス独自性の薄い普通の受託事業かな、と思っていますが。
 
 ということで、だんだん書くのが疲れてきた(他のブログでセルシスに関する質問をしながら、並行して書いています。tousizさん、ありがとうございます)ので、そろそろ終わりにします。
 
 全体財務分析でも触れましたが、
 今後のベストシナリオ、ワーストシナリオを私なりに考えてみました。まあ、ベストシナリオはおいといて、ワーストシナリオでも、それほど悪い展開は思いつきませんでした。コンテンツ制作事業で、成果物に満足できず何回もやり直しを強いられるとか、そういうこともあるかもしれませんが、万が一、売上が低迷することになったとしても、少なくとも、初期投資の費用が大きくのしかかるという段階はすぎました。
 
 ということで、ラインナップに仲間入りです。
 
 ところで、ドコモ携帯でBookSurfingのサンプル作品を見てみましたが、はっきり言って読みにくく長時間読もうという気持ちが全くおきませんでした。最低でも、iPhoneぐらいの画面は必要です。一方、Comic Studioで書いた作品のPC版コンテストグランプリ受賞作品「豆腐にまつわる、ある少女の話。」を見ると、こちらは技術的には完璧です。私なら、携帯よりPCで見たいですね。今は。 
 かつて、映画で活躍していた石原裕次郎は、テレビの「太陽にほえろ」への出演依頼がきたときに、「あんな小さい箱の中に入るのは嫌だ」と言ったとか。しかし、時代とともにテレビ画面の大型化は進みました。ハードの進化は時間だけの問題なのでしょう。
 セルシスの飛躍は、そちらの事情もにらみながらということになると思います。
 
 もちろん、アップルの株主でもある私は、日本のガラパゴス携帯が消滅するのは時間の問題だと確信しています(それがわからない方は、「iPhoneの衝撃」「iPhoneショック2」を熟読のこと)ので、そちらに注目したりするのは時間の無駄だと思っています。iPhoneとGoogleのAndroidだけ見ていればじゅうぶんです。Androidはいまのところ、一通りのサービスをすべてiPhoneに最適化するようにしていますので、iPhoneを追いかけておけば足りるでしょう。
 アマゾンドットコムのキンドルDXは、狙うのは、教科書市場、法律関係者、航空地図を見るパイロット、音楽家のための楽譜、などで、コミック市場とは違うみたいです(日経ビジネス2009.8.3号による)。
 DSやPSPは別かも。
 

 2009年6月に開催された米アップルの開発者向けイベントWorldwide Developers Conferenceの基調講演には,米ScrollMotion社が登場し,50のメジャー雑誌,170の新聞,そして100万冊の本をiPhoneで読める形にして販売すると発表した。同社は既にApp Storeで500のベストセラー書を販売中だ。
 この市場を狙っているのは同社だけではない。2009年3月には,米アマゾン・ドット・コムが同社の電子ブック端末Kindle用の電子本が読めるアプリケーション「Kindle for iPhone」の提供を開始した。それ以前にも米国には,DMBC社,Hot Potato社,IDW Publishing社,Lexcycle社が手掛けている。日本国内でもボイジャー社,セルシス社,ヤッパ社らがiPhone用電子ブックを提供する(写真4)。
 これらの企業の電子書籍は,iPhone側の制約で1冊1冊が個別のアプリとなっていた。しかし,6月にアプリ内課金が可能な新OSのiPhone OS 3.0が登場したことで,ボイジャー/セルシスの両社も電子書籍配信ソリューションの提供を開始したほか,電通がヤッパと組んで電子雑誌有料配信サービスの「MAGASTORE」を発表するなど競争が活発化している。
 日本は漫画などの独自カルチャーで優位性を保てるという考え方もあるが,漫画ビューアの世界にも競合がいる。グラフィックノベルという独自の漫画文化を持ち,日本の漫画も大ブームとなっているフランスのアクアファダス社は有望な競合だ。構想3年という極めて優れた使い心地の漫画ビューアを開発し,漫画販売サービス「AVE!COMIC」(アヴェ・コミック)を展開する予定だ。(「iPhoneショック2-第4章」IT PRO

 これまで(iPhoneOSの2まで)は、仕組み上アプリ(ブックビューワー)とコンテンツの抱き合わせ販売となっていました。売上の30%をアップルが徴収するという仕組みです。つまり、コミックコンテンツが売れたら、アップルが30%、セルシスは残りのうちから5%未満(多分)という分け前となっていました。(携帯コミックの将来を期待するなら、セルシスと同時にアップルも買いましょう!)
 コンテンツ単体毎に購入する仕組みでした。しかし、iPhoneOSの3では、アプリケーション内決済が可能となったので、電子書籍の定期購読みたいなこともできるようになったのです(その場合もアップルが30%徴収します)。
 
 環境はどんどん整ってきています。
 

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コメント

ゆきをんさん

こんにちは。精緻な分析、お疲れ様です。上場当初から今までの財務的変遷は、非常に興味深いものがありました。最底辺のセントレックススタートも含め、セルシスは、まさにザ・ベンチャー企業という道を順調に歩んでいますねぇ。某紙によりますと、東証はもちろん、ロンドン、ナスダックという目標もあるようです。

なお、今後、増えていくであろうROSやスタービューアにおける収益性ですが、私が社員の方と話したときは『差はない』とのことです。手元の資料によると、スタービューア向けのレヴェニューシェアは最低9.5%ということから、他のビューア使用=即、セルシスの収益率低下とはならないようです。

また、いずれのビューアにせよ、携帯コミックの入り口となるComic Studio Enterprise(制作ツール)の利用料を見ますと、商用で必要と思われる最低ラインである3ライセンスで販売価格240万円・年間保守料(60万円)ということから、現在、紙→デジタル化携帯(演出)化作業がメインである以上、この辺の収益も馬鹿にならないと思っています。

とにかく、コミックスタジオやRETASの完成度、製作者サイドからの支持率の高さ、独占性を見ますと、ライバルがソフト屋から出るとは到底思えません。といいますか、調べれば調べるほど、技術的参入障壁、蓄積の高いツールだということを思い知らされます。

いずれにせよ、携帯コミック(ゲーム同様、これはPC電子書籍と完全に分けて考えるべきだと思いますが)市場の伸びシロがまだ大きい現状、その中で最も面白いポジションを占めるセルシスに投資しない手はないと思いつつも・・・議論している間に、いちよしの新規レーティングきて、沸騰きちゃいましたねw

さて、どこで、どうしたものか・・・

将来の勢力図は、キャリアの動向やライバルも含めて不明な部分はもちろんありますが、携帯コミック市場で、主要な地位を占め続ける明らかな理由が、セルシスにはあるということで、よいと思います。環境の激変に応じて、形を変えて生き続ける独自の生命体、みたいなものこそ究極の成長株だと思っており、セルシスには、そんな期待があります。ワーストシナリオは、私もあまり想像できませんねぇ。

 tousizさん、こんにちわ。
 私は、十年以上のアップル株主ですが、まさか、アップルが音楽配信や携帯電話製造の会社になるとは思っていませんでした。セルシスの所属する業界の、5年後、10年後の変化は大きくて誰も予測できないと思います(変化が小さかったら悲しい)。
 客観的にはセルシスの魅力はポジショニングでしょうけど、私は、アニメに飛び込み90%のシェアを取り、コミックに飛び込み90%のシェアを取り、そして、電子配信へ、というセンスを買いたいと思います。
 株をするのも、ブログを書くのも(悲しいときもあるけど)楽しいから、続いています。「時間をかけてお金だけ儲かった」だけじゃ、つまらない。わくわくさせてもらえる銘柄だと思います。

ゆきをんさん

投資に夢を、というのは非常に興味深いです。

アップルについては私も、アップルⅡの登場・独走も、マック全盛期も、その後潰れかけた時期も知っていますが、仰るとおり、当時から、今の状態は全く想像できません。Sジョブズが、アップルに復活することすら想像できなかったでしょう。潰れかけた時から見たら、株価は一体、何倍になっているのでしょうか。

私は、ファミコンが出た頃小学生でしたが、あまりの衝撃ゆえに任天堂の株価を新聞で毎日チェックしていた時期があります。その後、SFCで覇権を握った後、N64で躓き、GCで大転びして、任天堂は終わった、と思われた時期もありましたが、今は世界最高のゲーム会社?になりつつあります。

結局、何が言いたいのかといいますと、独自のDNAを持っている会社は、どんな過酷な環境下においても、しっかりと自立進化を遂げ、どこかで大飛躍を遂げることがある、と言うことです。もちろん、セルシスがそうなると言っては、今の段階では、明らかに言い過ぎでしょうし、そんなことは誰にも分かりません。でも夢のある、その可能性のある会社であることは確かです・・・

投資していて、ワクワクする会社。確かにそれは凄く大きいですね。ただ、もちろん、儲かるに越したことはありませんがw

私は、幼少の時に見た衝撃の超新星=次の任天堂を探しているだけなのかも知れません・・・

駄文失礼。

兼ねてより、私の持ち株に次々にご興味を示して頂き、私事ながら大変光栄に思っております。(ライフステージは失礼いたしました・・)

さて、
>十年以上のアップル株主ですが、まさか、アップルが音楽配信や携帯電話製造の会社になるとは思っていませんでした・・

のくだり、銘柄発掘のヒントとして大変興味深いのですが、それでもなぜ、アップルに投資したのでしょうか?
①将来は、MACがMSに勝つ
②経営者、社員のレベルが優秀
③何か新しい分野に進出する予感がしていた?

ちなみに、私がセルシスに投資したきっかけはシェアを独占しているという事実(90%超)と粗利益率が高い。(50%超)からといった定量的なとこが決め手で。。

※ちなみに、イーギャラも粗利益率が高いです。

恐らく上記を裏付ける何かが(私が見つけられない裏に)隠れているのだろう・・というのは想像でした・・

(1年後にtousizさんがたくさん暴いてくれましたが、これは想定外に嬉しいw)

ただ、セルシスはリンク先の方と友人になり、直接お会いする機会が何回かあって、その時に喫茶店で話してて教えてもらった銘柄です。

(彼は雑誌にたまに乗るぐらいで個人投資家としては結構有名)、なぜか、彼のブログではセルシスの銘柄の事は避けてる感じですが・・影響力か?(笑

その方の紹介が銘柄を知ったきっかけなので、誰もの情報を全て信じるのは無謀ですが、信頼できる仲間・・みたいのは長い投資人生を送るにあたってとても重要ではないかと感じてます。

イーギャラティの場合は、純粋にアセマネやフィンテックを研究していて

不動産の証券化 → その他の証券化 → 売掛債権の証券化が面白そう → 売掛債権の証券化をやってくれる会社を探していた → イーギャランティを見つけた

といった発掘経路です。

アップルのようなパターンとか、小さいころのソフトバンクとか・・セブンイレブンとか・・当時から目をつけられるようになるには、何が決め手なのだろう?

というのは、自分の中では、これから考えていきたい課題です。

ライフステージの場合は、販売代理とかノッキングローラの特許とか何か面白そうな点もあったのですが、寧ろビジネスモデルというより、かもめりあ物件 にひかれて買ってしまった点が反省点です。

 10年前の私は、Macフリークでしたから、毎日、Mac情報はむさぶるように収集し、周りに伝道していました。しかし、状況はどん底でした。なぜ、アップルを買ったかというと、

(1)もう、浮動層は皆、ウインドウズに行ってしまった。私のような固定ファンは、離れることがないだろうから、今が底だろう。(←アプリ会社が離れていくリスクまで考えていなかったので、今から思えば甘かった)
(2)キャッシュフロー的には問題ない。今の状況が続いても会社は簡単につぶれそうにない。
(3)パソコンのGUI(デスクトップ上のアイコンをクリックするインターフェイス)という仕組みも、数年で次の仕組みに進歩するだろう。そのときにチャンスがある(←これも、想定外に長く続いています)。

 直接的な答えとしては、このようなことになります(たぶん、こんなことを聞いているのではないと思います)。
 
 もちろん、私が答えを見つけたわけではありませんが、続きは、新投稿に書きます。

 セルシスについては、iPhone銘柄をさがしていたということになります。
 ビューワーのシェア90%については、頼りにならないと考えています。ユーザーのスイッチングコストが低すぎるから。
 制作ソフトのほうは、操作を覚え直したり過去の遺産データを再活用したりすることを考えると、スイッチングコストはかなり高いと思っていますが。
 ですから、制作ソフトとビューワーの間に、アナログが介在するケースが多い現状は、まだまだ心配な部分もあります(Enterpriseがあるんですが、全行程デジタル化すれば、万全という意味で)。

 それと粗利益率の話しですが、
 フランス料理店と大衆餃子店の、どちらが儲かるか?みたいな話しで、フランス料理店は確かに粗利益率が高い、けど、客は何時間も居座って、なかなか帰ってくれない。餃子店は、薄利多売で、どんどん客が回転してくれる。
 どちらが儲かっているかは、回転率との兼ね合いで考えないと意味がないと思います。イーギャランティは私の保有銘柄のなかでは、回転率が低いほうなので、その点が今イチだと思っています。

ゆきをんさん ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。

>(3)パソコンのGUI(デスクトップ上のアイコンをクリックするインターフェイス)という仕組みも、数年で次の仕組みに進歩するだろう。そのときにチャンスがある

>ビューワーのシェア90%については、頼りにならないと考えています。ユーザーのスイッチングコストが低すぎるから。

2番手を買っていて(或いは1番よりホントは2番を買いたいと無意識に思っている)逆転を狙う・・といった投資手法にあたるのでしょうか。(手法はたくさんあるのかと思いますので、その中の1つかも知れませんが)

任天堂を買わずにセガを買う・・というのも似てるのかもしれませんが・・(これからはセガの時代だ・・と言って聞かない頑固な友人が、クラスに1人はいたという感じが・・MACに似ている・・)

>(2)キャッシュフロー的には問題ない
ここも参考になりました。

ここを気をつけていれば、流動化銘柄は手を私も出さなかったはずで、実は、ダヴィンチは1番手だから・・2番手のが伸びる余地あるだろうと・・アセマネ(セキュアードとか含む)を買ってしまった反省もあります。。

私には、ゆきをんさんのように定性的に物を見る力がないし、それに裂く時間も気力も適正もないと気づきだしていて、ある種のシステムトレードを組もうと思っています。

時価総額小、CFプラス、粗利率大、シェア独占、無借金・・条件はこれだけですが。

CFプラスってのは、やはり重要なんだな・・と再認識したので、このご質問をした甲斐がありました。

2番手が1番手に迫るギャップを取りにいくってのも、考えとしてあり・・かな・・と思いました。とはいえ、ターン・アラウンド的で、この考え方は、今の私のスキルではリスキーなので、これは、次回の課題かも。。

セルシスのライバル(といっても、残り10%の内訳は今は、定かでない)が、名前が見えてきた時、少し、今、考えた内容を思い出してみようと思います。

ありがとうございました。

 いやいや、2番手を買うという考えは私にはありません。むしろ、2番手買いは、一見魅力が大きいですが失敗が多いと思っています。
 シスコに対するジュニパーとか、
 インテルに対するAMDとか、
 
 山本潤氏は、シェアトップが好ましい理由として、次の点をあげています。
 
1)優秀な人材が集まる
2)顧客からの情報が多い。顧客ニーズを正確に捉えることが可能
3)営業効率や広告費などブランド構築に有利(固定費は売上に比例しない)
4)R/Dの規模で有利
5)特許の過去の蓄積で有利
6)購買で有利。規模の経済が働く。量産効果を期待できる。
7)不況に強い。顧客は不況期に2番手、3番手から切る傾向があるから。

 1番手は市場供給量をコントロールできます。2番手以下はできません。つまり、2番手以下は1番手の戦略に振り回されます。
 
 私は当時、アップルが2番手だという考えはありませんでした。「新製品創出」には成功するが「新ビジネスモデル創出」に結びつけられない不器用な企業、という認識でした。(市場に出てくるのは常に2番目である)マイクロソフトに、いつも横取りされていると。

 
 下記も参考にしてください。
 
 「競争相手を生かさず殺さず・任天堂の収益性が高い理由
勝間和代のITマーケットウォッチ)」
 http://it.nikkei.co.jp/business/column/katsuma_market.aspx?n=MMIT2n000006102008&cp=2
 

 それと、次の投稿に書きますが、システムトレードが有効なのは、環境に大きな変動のない成熟業界だけだと思います。

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