タビオ
4回目の投稿です。かつては、水泳における水着なんて何でもいい時代があったのかもしれませんが、今や、水着が成績を作る時代です。同じことが、陸上競技と靴下の関係に当てはまる時代が、いずれは来るのでしょうか。最近のタビオは、エアロビクスインストラクター100人のアンケート結果をもとに開発された、理想のエアロビクスソックスとか、特許申請中の土踏まず部分サポート技術やメッシュ、立体製法などスポーツに必要な機能が搭載された高機能スポーツソックス。みたいな展開もしています。
そのときには、タビオのブランド価値も変わるかもしれません。
さて、消費不況は、これからが本番なのかもしれませんが、タビオの前期(09.2)決算は、売上高5.5%増加、経常利益0.9%増加、当期純利益3.6%減少という、(前々期の反動もあり得ただけに)まあ及第点でした。問題は、今期予想が、売上高9.9%減、経常利益58%減、当期純利益72.5%減ということです。
これについては、株主総会((「株主総会レポート」さん、「ラララ日常ときどき株」さん、参照)で、最悪を想定した予想と述べています。確かに、決算年度末あたりは、最悪と言える状態でした。売上進捗率が、2月(年度末)が△14.5%、3月(新年度)が△9.6%。しかし、4月が2.9%、5月が6.6%、6月が6.2%。まあ、新年度は始まってまだ、1/3ですが、前年度比プラスとなっています。
それと、費用について、仮に売上高1割減として計算するとしても、過去の費用推移から計算すると、販管費で2億円も超過があり、さらに特別損失が2億円弱ということになります。
販管費の大半は、人件費と家賃ですけど、それでは数字の説明がつきません。広告宣伝の強化でしょうか(電通出身の人を雇ったとか)。ウェブPOS関連でしょうか。再飛躍のための物流整備でしょうか。
特別損失は、店鋪改装関連ぐらいでしょうか(一息ついたと思っていたのですが)。でも、多めです。
マーケティング部門を強化し、広報・販促活動を積極的に行うことによって、(略) 従来より検討して参りましたウェブPOSの導入を開始し、店頭での業務効率のアップを図っていくと共に、(略) 以上の政策を達成するための先行投資を堅実に行い、規模の拡大よりはむしろ現場体制の最適化を実現していくことにより、(前期決算短信「次期の見通し」)
同社では、在庫リスクを最小限に抑えると共に機会損失をなくすため、店頭、物流から生産現場までの一気通貫の情報網を活用し、顧客ニーズに機敏に誠実に対応するプロ企業集団の育成に力を注いでいる。製販一体化を強固にするため、主要原糸の調達、より店頭に密着した生産体制の構築を実現と店頭支援体制強化として、今後ウェブPOS導入を開始し、店頭での業務効率の改善と更なるSCMの精度アップの実現に近づけていくという。
なお、物流業務を行なっているタビオ奈良は、靴下の品質管理の強化を図るとともに、入出庫業務の改善、物流施設の整備・増床を行い、今後の業容拡大に見合った物流機能の確立を目指すとしている。(LNEWS09.04.10)
まあ、先行投資と言われれば、しょうがないとします。
さて、日経ビジネスオンライン(09.7.1)にタビオが紹介されていました。内容は、上場後、投資家のプレッシャーにより短期利益を追い求めていった結果の混乱、低迷、そして、そこからの再飛躍といったところです。
上場をきっかけにガタガタになり始めた社内。「閉塞した現状を打破するには、売り場を再生させるしかない」。そう考えた越智社長は、売り場の本音を聞こうと、全国の店舗をお忍びで回り始めた。2006年頃の話である。ところが、現場の店長やバイトに話を聞こうとしても、最初は口も聞いてもらえなかった。
「少し話を聞かせてよ」。店長やバイトの女性にそう声をかけても、「嫌です」「時間がありません」とすげなく断られた。「本部は敵。口も聞きたくありません」。ある店の店長にはこう言われた。本部と売り場の信頼関係はそれほどまでに崩壊していた。(略)
現場の不満は突き詰めると、従業員の待遇と本部主導の体制だった。いくら頑張っても時給が増えない。店長になってもバイトのままで、その後のキャリアパスが見えない。お客さんに喜ばれるようなカワイイ店にしたいのに本部に言っても何もできない。売れそうもない商品が本部主導でやってくる。(略)
そして、越智社長は2007年以降、改革を実行に移した。(略)
その効果はてきめんだった。それまで、既存店の収支は惨たんたるありさまだったが、販売員の正社員化や店舗のリニューアルを進めただけで、既存店売り上げが2ケタの勢いで改善した。「やっぱり店がきれいになるとうれしい。今はモチベーションが違う」と稲葉エリアマネジャーは現場の声を代弁する。生産重視から従業員重視に少し舵を切っただけで、現場の士気を高めただけで、見違えるように売り場は変わった。
詳しくは本文を読んでいただきたいのですが、この記事は、一代目と二代目の個性の違いも良く出ていて面白いです。それにしても、目先の利益を追求する《短期投資家》は、企業の長期的繁栄を願う《長期投資家》にとって害人だと再確認しました。短期投資家は、無視してください。
タビオは、海外戦略についても、中国やアジアに進出すれば短期的には早く利益が増えるけれども、長期的に考えて、今はブランド価値を高めることが大切だとして、ヨーロッパ、アメリカ、そして最後にアジアという順番で進めていくということです。海外展開は路面店よりネット販売(前述、株主総会記録より)ということで、いい方向性と思います。何万円もする服ならネット販売は抵抗がありますが、数点買っても数千円ならネットでも買いやすいですし。足元ファッションはネット向きです。バリエーション豊富なほうが選ぶのも楽しいですし。現在、売上の12%は家賃等(減価償却含む)、16%は人件費の費用となっていますが、ネット販売では家賃はもちろん、人件費も低減で、利益率も向上すると期待できます。
そう、タビオは、この6.18にフランスのパリに新店舗を出しました。ロンドンでは、既に、7店鋪出しています。パリでは、今後5年間に10店鋪程度にするとのこと。こういう展開は、期待できます。
ということで、私がタビオを保有する理由を再確認しておきます。
(1)素足を見せずにショートパンツやミニスカートを楽しめる足元ファッションは、ブームを超え定番化しつつあり、なお広がりを見せるであろうこと(←私の思い込み)。
(2)その場合、流行の変化に即対応できる国内供給体制を持つタビオに優位性があること。
(3)タビオのシェアは、女性ものにおいて、7%程度(?)。男性ものにおいて、泡沫勢力。シェア拡大余地が大きいこと。もっとも、高級化路線だけでは限度もあります。
(4)財務分析上も、規模拡大だけではなく、在庫回転率と売上総利益率も含めたトリプル効果が見られること。季節外れロス等の低下(在庫回転率向上)やブランド化(利益率向上)などで、まだまだ改善途中であること。
(5)欧米は、日本より更に足元ファッションが遅れており(たぶん)、世界進出余地が大きいこと。ロンドン7店の一店あたり売上高は、1億円から2億円程度で、日本よりかなり高い。ロンドンでの価格は日本の2倍だとか、高価格路線で大変よろしい(海外なので当然に費用もかかるが)。
(6)中国経済の発展に伴い、中国生産の人件費は右肩上がり。ライバル社にとって、大きなマイナス。
(7)タビオは、ROE20%程度(今年度はダメみたいだが)と、株主資本リターンにおいても、優れていること(もっともアパレル系は高いのが多い)。
まあ、ちょっと甘いです。
ブランド化といっても、「品質や機能に見合うなら金を出してもいい」というもので、洋服や鞄のように「機能よりも記号に金を出す」ものには、さすがになり得ないでしょう。
それと、そもそも、タビオの主顧客層は若い女性ですが、このクラスが、品質を重視するかな、むしろ価格に敏感では、と思わないでもありません。足元ファッションも、「ブームで終わったね」とならないと限らないし。さらに景気が。そういう心配もしつつ。
ということで、今期は大幅な減益予想ではありますが、もちろん保有継続です。ただし、資産運用の効率性を考えて、持ち玉は減らしました(すみません)。
ROE20%といえば、野球で言えば20勝ピッチャーのようなもの。ROE10%といえば、10勝ピッチャーのようなものです。
タビオ投手は、20勝、20勝ときて、今年度は10勝ぐらい(会社予想は弱気すぎると私は思っているので)なので、前年度比で50%減ですが、それでも、10勝もすれば十分です。
他の投手で、前期4勝だったのが6勝になれば50%増、8勝になれば100%増と大騒ぎしますが、本当に価値があるのはどちらでしょうか。株式市場は、短期的には増益率やモメンタムを重視しますが、長期的に重要なのは絶対的水準ROEです。
20勝の実力のある投手が、安い給料で雇えるのですから、文句はありません。
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