技術力よりも商品開発力よりも
iPod + iTune Music Storeや、iPhoneのヒットの今日的意味は、《技術力》や《商品開発力》の問題ではないと思います。もちろん、アップルの《技術力》や《商品開発力》は素晴らしいと思います。しかし、
iPod + iTune Music Storeの価値は、音楽業界の力関係を逆転してしまったこと。
iPhoneの価値は、通信業界の力関係を逆転してしまったことなのだと思うのです。
そして、それを実現する能力、立役者スティーブ・ジョブスこそが、アップルの最大の財産なのです。
iTMS実現の最大の壁は、技術ではなく大手音楽会社の協力を取り付けることだ。(略)
ジョブスはその不可能な交渉に乗り出した。そして、業界を驚かす「大手5社の新リーグ」を結成したのである。
音楽というコンテンツの供給を受ける側は、いつも弱い立場だった。iTMSは、その力関係を逆転させた。コンテンツの供給を受ける側が始めて強い立場に立ったのだ。
音楽業界の力学さえ変えたiTMSの交渉の細かい経緯は、まったくといっていいほど表に出ていない。(略)
だが、ソニー・ミュージックエンタテイメントのCEOアンドリュー・ラックが、
「ジョブスが話し始めてから、アップルにライセンスをしようと心に決めるまで、15秒かからなかったよ」
と言っているほどだから、ジョブスの提案はよほど魅力があったのだろう。なおかつ、熱意やカリスマ性が彼らを圧倒したと考えられる。別の関係者は、こう表現している。
「ジョブスは、音楽業界にズカズカとやってきて、いきなり胸ぐらをつかみ、怒鳴り散らし、帰っていった」
こんな乱暴なヤツはそれまで音楽業界にはいなかったので、あっとういう間に虜になったトップもいたらしい。
ジョブスは音楽界社のトップだけでなく、音楽グループU2のボノなど、トップミュージシャンたちにも直接あって説得していった。その熱意とカリスマ性は、魔法のように人を惹き込んで、音楽界でも威力を発揮した。
(「スティーブ・ジョブス〜神の交渉力」P144)
技術や商品なら、真似をすることもできる。(→本当はできないと思っています。)しかし、この、とんでもない経営者の真似をすることができますか??
これが、アップルの差別化ポイント。
単に「技術が素晴らしい」や「商品が素晴らしい」では、単なる《一発屋》に終わることが多いです。しかし、それを用いて、《業界のルールを変える》になれば、その影響力は(次の変化が登場するまで)持続します。そして、その《価値の連鎖》の中枢で威張っているのが、《ゴリラ企業》なのです。
ここからは、私の妄想タイムの始まり。
私はまだ、iPhone に触っていませんが、ハードウエア的に既存PCにかなうわけないので、PC用の重装飾サイト閲覧などは、ストレスがあるんじゃないかと思います。快適生活というわけでもないでしょう。しかし、それは時間が解決することです。バージョン1や2なんて、そんなものです。
今の、iPhoneは、数十年前の小さな画面の白黒テレビだと思っています。そのころは、テレビの登場に感動する人がいる一方で、「何だ、こんなチッポケな箱が、大画面の《映画》を圧迫するはずがない」という人も多かったのです。違う違う、小さな白黒テレビは、バージョン1にすぎないのです。。
ちなみに、この場合の《映画》とは、パソコンのイメージです。《映画》と《ラジオ》しかなかった市場に突然、テレビが出現したように、パソコンとケータイの間にある潜在市場は大きいと思います。パソコンは、これだけ成熟したのに、使わない層は、まったく使わない。だけど、ネットへの関心は高いので、貧弱なケータイのネット環境にはまっているのです。映画とテレビとラジオが棲み分けているように、これらも共存するでしょう。しかし、パーソナルなニーズに最も適しているのはどれか、すこし想像するだけでわかると思います。
今のアップルは、iPhoneを低価格で普及させる《種蒔き期》です。本格的な利益の刈り取りは、その後のこと。アップルのサクセスストーリーは、始まったばかりなのです。
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