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2008.06.21

リサ・パートナーズ

3回めの投稿です。前期の純利益増益率は119%、今期予想も、31%と勝ち組企業であることを明確にしたリサですが、20.5.12発表の1Q決算も純利益で前期比232%の増益となりました。

 ただ、この大きな要因は、寶組に対する大型アドバイザリー案件(財務リストラ及び海外不動産売却)が、この時期に売上計上されたというものです。が、それでも、大きな顧客を捕まえたのが、國場組の債権回収終了と次のステージ移行というタイミングの良さ。
 
 寶組との財務再構築支援に関する基本合意は、20.1.8。寶組は、日本国内で約1,300億円、米国で約1,500億円(鑑定価格ベース)の不動産を保有しています。20.5.30には、早速、寶組から開発用土地を取得しています。
 これからも、いくつも、収益機会を与えてくれそうですね。
 
 ところで、19.2.16の2回目の投稿で、リサとアセットの営業CFを比較し、アセットの変調について書きました。その後、しばらくしてアセットショックがありました。不動産市況の状況もあり、リサについても、最近どうなんだろうと思うところがありますので、少し触れてみます。
 
 

- 営業CF投資CF
19-3△17,162△2,596
19-622,467△7,069
19-9△6,268△7,338
19-124,188△7,498
20-3△9,144△3,751

 
 営業CFから投資CFへのシフトはありますが、フリーCFベースでは問題ないですね。
 
 では、プリンシパル事業の不動産を見ていきます。
 
 プリンシパル事業の利益内訳は公表されていません。しかし、貸付債権は、投資額に回収額が達するまでは、貸借対照表の買取債権から現金に数字が移るだけで損益計算書には反映されません。貸借対照表の買取債権がゼロ(つまり全額回収)になって始めて、利益(売上げと同額)が損益計算書に積み上げられていきます。純額方式です。
 一方、不動産は総額方式ですので、差し引きすれば、容易に分別できます。以下は、原価明細が記されている19.12単体での数字です。
 株式など「その他」を考慮に入れていませんので、やや正確性を欠きます。共通経費は半分ずつとしました。
 
- 回収額売上計上売上原価粗利益
債権39,5522,6363452,291
不動産11,31611,3166,8124,504

 たな卸資産年間利回りでは、買取債権は(回転率1.14なので)6.6%、不動産は(回転率0.47なので)19%となります。買取債権については、利益計上が回収の最終局面であること、長期案件ほど利回りが高いこと、を考えると、現場的には、もっと利回りが高いイメージだと思います。決算説明書資料には、IRR7-15%(連結)と書いてあります。
 不動産は、連結子会社を経由するケースが多いと推定され、連結では利回りが落ちると思います。が、
 不動産は、資金効率性も高く、(単体では)利益の2/3を占めており、やはり影響は大きいです。さて、その不動産ですが、
 
 以下の2本は、東洋経済5/31号より
 

 バブル崩壊後は売り遅れた会社が淘汰された。今年は地方案件などを多少の損失覚悟で売却していく。(アセット・マネジャーズ)P45

確かに不動産への金融機関の融資はつきにくくなっているが、賃料収入は下がっていない。都心オフィスビルの空室率は低く、ファンダメンタルは極めて良好だ。(略)
 現在のような調整期では、競合が減るため投資機会は多くなるだろう。(ゴールドマン・サックス証券)P46

 
 資金繰りが影響を与えているとはいえ、両社は驚くほど対照的です。リサは果たして。
 
 次は、不動産仕入と販売の推移(連結)です。
 
- 仕入物件売却収入
17.129,0554,875
18.1215,2087,832
19.127,6466,965

  
 仕入急減ですが、売り急いでいる観もないです。
 さらに、直近の20.1Qを見てみますと。不動産だけの数字の公表はないですが、全体損益計算書の売上げ原価が、たったの511百万円であることから、収益のほとんどが純益計上分。原価から労務費を差し引くと、不動産売却はほとんどなかったと推測できます。
 
 ちなみに、19.12決算説明資料P10に「不動産投資」という表示があります。この頁だけ何故か単体です(つまり連結内取引が含まれている)。さらに数字に、物件購入だけなのかバリューアップ費用も含まれているのか(不動産購入と不動産投資では範囲も金額も大きく違うのですが)。単純に前者であると思い込みがちですが、後者です。では、販売用不動産(流動資産)だけなのか有形固定資産も含まれているのか、電卓を叩けばすぐにわかりますね。しかし、こういったことを曖昧にして数字だけ評価しても意味がないです。わかりにくい。
 決算書の場合には、統一ルールがあります。しかし、企業の任意の説明資料は任意の基準で掲載されます。基本的に、分析は決算書に基づいたほうが良いです。説明資料は決算書でわからないことの補足のみに利用したほうがいいと思います。
 
 続けますが、
 
 
- 有利子負債うち担保付きうち不動産部分不動産残高(不動産負債比率)
17.1214,8156,0536,0538,588(70%)
18.1257,42227,78616,70119,623(85%)
19.1275,03923,96811,02622,050(50%)

 
 あれあれ。不動産に対する融資が激減しています。
 
 不動産は、債券や株式と違って、原則、貸し倒れがありません(火事とかあれば別ですが保険ぐらい入っていますよね)。市況次第の不動産転売屋なら別ですが、リサは、バリューアップして売却することを得意としていますので、購入価格より売却価格が下がる可能性は低いんです。債権(特に不良)や株式は、貸し倒れリスクがあるので、自己財源もある程度入れておかないと、となりますが、不動産は、できれば借り入れで対応し、レバレッジをかけて欲しいと、私は思います。
 
 リサといえども、金融機関の不動産融資貸し渋りの影響はあったのではないかと推測します。20.3.31に総額45億円のシンジゲートローン契約締結のIRがあったと思ったら、対象は貸付債権投資資金でした。リサの扱う債権はリスクが高いです。不動産のほうがよっぽど堅いと思うのですが、金融機関のすること。あるいは、リサが自発的に戦略選択したのかもしれません。どちらにせよ、不安材料です。今の市況で無理に不動産に投資する必要がないと言われるかもしれませんが、他社の「損切り覚悟」の美味しい物件が出てくる可能性もあり、機動性があるに超したことはありません(もっとも担保なし融資は増えています)。
 
 一方、買取債権の直近の推移を見てみます。
 
 18.3Q 36,097
 18.4Q 35,075
 19.1Q 50,013
 19.2Q 32,940
 19.3Q 37,916
 19.4Q 35,719
 20.1Q 43,480
 
 毎年1Q(金融機関の年度末)に、大きく増加するのですが、この1Qは伸びが低いです。が、先ほどの寶組から開発用土地取得といい、20.5.30には、ホテルJALシティ那覇を80億円で買収していますし。債権以外用途でお金を払いこむために債権残高が増やしにくかったのかもしれません。
 しかし、買取債権は利益率が低いので、不動産が伸び悩んでも、その利益の穴埋めをするためには、2倍以上の残高が必要です。リサの株主資本比率(20.1Qで22%)を考えると、なかなか難しいとも。
 やはり、プリンシパル事業に関しては、不動産のがんばりは必要です。ただ、ファンド事業の伸び、を考えると、全体の業績が大きく落ち込むリスクは低いと思います。

 19.12末、リサの連結対象総資産のうち、プリンシパル事業分が675億円(前年度17%UP)。ファンドが312億円分(前年度170%UP)です。

 では、プリンシパル事業以外にも目を向けます。下記は部門別の営業利益の推移です。貸借対照表をフルに使う自己勘定投資のプリンシパル事業の伸びに比べ、他人の資産を運用する(一部、自己勘定)ファンド事業が大きく伸びています。
 

-17.1218.1219.12
プリンシパル1,2593,0854,848
ファンド9902,5836,700
 インベストBK1,2161,7251,873

 
 では、ROEを分解してみます。
 
 ROEは、売上高純利益率 x 総資産回転率 x 財務レバレッジ、です。
 
 下記式の、
 第1項の売上高純利益率は、純利益/売上高、
 第2項の総資産回転率は、売上高/総資産、
 第3項の財務レバレッジは、総資産/株主持分、
 ちなみに、貸借対照表上の数字は、当年度と前年度の数字を足して2で割っていますので、四季報とかの数字とは異なります。

17.12期=15.1% x 0.43回 x 3.93倍 = ROE25.5%
18.12期=18.2% x 0.30回 x 4.21倍 = ROE23.1%
19.12期=24.3% x 0.27回 x 4.31倍 = ROE28.3%

 財務レバレッジが高いなあ、と印象。
 さらに、部門別で見てみます。財務レバレッジは配賦せず省略します。つまり、ROA。今の事業割になったのは2年前からですので、2年分。
 
【プリンシパル事業】
18.12期=27.9% x 0.28回= ROA7.8%
19.12期=30.1% x 0.25回= ROA7.8%

 売上高にカウントしていない純額計上の分を考慮すると、たぶん利益率が1/4、回転率が4倍ぐらいになります。ただし、利益率は営業利益ベースなので、純利益で見るときはアバウトですが6掛け。
 旅館など、明らかに数字を下げそうな投資先が含まれています。
 
【ファンド事業】
18.12期=80.0% x 0.37回= ROA29.6%
19.12期=83.1% x 0.46回= ROA38.2%

【インベストメントバンキング事業】
18.12期=78.5% x 0.81回= ROA63.6%
19.12期=56.3% x 0.86回= ROA48.4%


 さて、リサの総資産額は連結で1,190億円、個別で1,074億円。純利益が連結で66億円、個別で60億円。大きな違いはないし、まあいいか、と、以上は連結での数字でしたが、おや、っと思ったのが、連結でリサは大きな利益率を出しているのに、456百万円の「少数株主損失」が出ているのです。【20.6.26文末に追加補足】
 
 主因は、連結対象の投資先。
 一番、赤字が大きいのはプリンシパル事業ですが、旅館など事業投資先が連結される前から、この傾向です。
 ファンドにおいても、【非連結】のソロス氏とのグローブ・ファンド(リサの持分は330億円でIRRはレバレッジ後で20%超ですから、結構な収益です)を除いて、運用ではあまり収益が出ていないみたいです。全体のファンドの配当は、説明資料では、6,978百万円とありますしかし、これは収支ベースです。損益ベースで計算するのは、公表資料だけでは無理なのでやめました。それ以外は、フィー収入が稼いでいます。
 
 企業は、「人材」と「人材以外の財産」を組みあわせて収益の最大化を図ります。強いていえば、プリンシパル事業は、どちらかというと後者に比重が、インベストメントバンキング事業は前者に比重が、ファンド事業とはその中間でしょうか。
 人材が主な業務は、総資産回転率なんて関係ないんでないの、と思われるかもしれませんが、人材も貸借対照表に載っています〜現金という形で(給料日のために現金を用意する必要がありますよね)。回転が速すぎて在庫にならないだけのことです。回転が遅いもの、例えば、退職給付引当金や賞与引当金などは貸借対照表に載っていますよね。
 「人材」主体の企業も「人材以外の財産」主体の企業も、財務分析という客観的な数字の世界で、同列に比較できるんです。では「人材」主体の事業の利回りが高い意味は?

 しかし、プリンシパル事業とファンド事業、差があります。不動産投資については、ファンドが突出しているということはないと思いますので、それ以外の部分というと、不動産以外のファンドは利益が出ていないとして、今のところ債権投資とフィー収入の差でしょうか。
 ファンドのフィービジネスは基本的に儲かる仕事なんだろうと思います。
 
 これだけを見ると、プリンシパル事業なんかやめて、ファンド事業に注力したら、と思うかもしれませんが、ファンド事業には難点があります。
 ファンドは、他の出資者は有限責任、リサは無限責任です。財務レバレッジを大きく掛けて、うまくいけば全出資者に恩恵があります。しかし、貸し倒れが相次ぎ、債務超過に陥れば、リサだけが追加負担を強いられるのです。ですから、レバレッジを掛けても比較的安心な不動産を別にして、債券や株式運用ファンドでは、(一人損になるので)なかなかレバレッジを掛けられないのです(実際、リサ・ソリューションファンドは借り入れゼロです)。
 つまり、ROAで見ると見劣りするプリンシパル事業ですが、そこに第3項の財務レバレッジを掛けると、そうでもなくなってきます。
 となると、レバレッジをとるか、フィーをとるか、ということですが、私なら、失敗しても貰えるフィーのほうがいいです。そうそう、事業の安定性を見るためには、成功報酬の比率とか、公表して欲しいですね(アセットは、成功報酬比率が高すぎて、業績の変動が激しかったんでしたね)。
 
 調達側の状況と運用側の状況、状況により様々ですので、どちらが良いというのではなく、色んな手段を持って使い分けするのが良いということですね。
 
 じゃあ、今や花形の、ファンド事業をさらっと見てみます。
 
 まず、最初は、ご存知ジョージ・ソロスとの共同投資(リサ分は約20%)であるグローブ・インターナショナル・パートナーズ。残高の推移です。
 
17.12  94,096(百万円)
18.12 115.458
19.12 167.222

 順調です。資金調達面での問題がないだけに、不動産市況悪化は渡りに船です。
 
 次に、地銀系の再生ファンドは、
 提携金融機関は、今期の、20.2.15の香川、20.3.31の岐阜、20.6.10の三島信用金庫を入れて70。再生ファンド数は19。
 
 そして、18.9.29に設立したリサ・ソリューションファンド(RSF)です。これは、ファンド規模が218.5億円(うちリサは62.5億円)で、国内年金基金等から出資を集め、株式、貸付債権を投資対象としています。子ファンドとして、九州コーポレート・ソリューション・ファンド(30億円)を持っています。すでに組成完了。次に2号ファンドの立ち上げを図っているとのことです。

 最後にリサの主な投資先(株式)を見てみます。ファンド全体ではなく、リサの保有分ベースです。
 
 長崎銀行 40億円(普通株)
 ダイレックス 17.6億円(RSF 優先株)
 國場組 5.4億円(地域ファンド)
 HIヒロセ 4.2億円(RSF 優先株)
 武蔵野興業4.0億円
 コービック 3.5億円
 マルヤ 3.4億円(RSF 普通株)
 旅籠屋 1.3億円
 
 金額がわからないのが
 アルピコグループ ファンド全体で最大で25億円
   (たぶん普通株)

 
 ずいぶん増えました。
 現在、利益貢献していませんが、このあたりが将来の収益の主力となりそうです。

 最後にインベストバンキング事業ですが、
 これは、前掲のROAで一目瞭然。
 
 まとめると、
 不動産市況の不安はあるものの、その場合はホールドで、損切りとかはしないみたいです。つまり今期業績への懸念はあるものの、中長期的には問題ないと思います。
 今期は、ホテルJALシティ那覇とか長崎銀行とかが加わったために、かなりROAは落ちると思います。しかし、長期視野では必要な投資でしょう。
 一方、ファンドの拡大は著しいですし、こちらが、今後を大きく左右します。特に不動産以外の事業再生系。ただ、地方金融機関との関係から、えり好みできるというリサの置かれた状況を考えると、スタートラインから、相対的にかなり有利であることは明らかだと考えます。
 インベストバンキング事業は、これからの成長ドライバーになってほしいですね。

【20.6.26追加補足】
 ファンド連結企業の場合、多額の少数株主利益が出ていることが多いです。アセット・マネジャーズの20.2決算の場合、当期純利益55億円を上回る少数株主利益57億円。
 ですから、原因が、外部取引であろうが内部取引であろうが、少数株主損失が出ていることはよくありません。フィーだけもらっておきながら成績があがっていないことをあらわしています。通常は、外部との取引が活発で、少数株主利益が、らくらくと少数株主損失を上回っているのが正常な姿です。
 なお、内部取引による少数株主損失は、不動産取引であろうが委託契約であろうが、ごく日常的にあることです。連結決算にとっては、とりたてて、どうというほどのこともない雑収入でしょう。


   □ これまでの投稿 □

1回目 2006.10.13
2回目 2007.2.16

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