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2007.10.26

割安成熟株と割安成長株

シーゲル博士の「株式投資の未来」では、過去50年間で運用成績がトップであった「黄金銘柄」を紹介しています。それは、フィリップ・モリス(現在の名は別)です。

 フィリップ・モリスは、
1)煙草の製造者として、常に巨額賠償金訴訟リスクがあり、投資家の人気が低い。
2)現金を生み出す力は強い。
3)低PERのため、自社株買い、高配当などで、投資家に利益をもたらしている。

 という特長があります。
 高CF低PERの《成熟株》は、確かに魅力があります。

 一方、現金需要の強い《成長株》の場合には、事情が逆になります。低PERだと資金調達が大きな希薄化となり、株主に大きな不利益をもたらします。株価が下がったために資金調達が思うようにできず、成長路線に変更を迫られるケースもあり、成長株は、多くの場合に「高PERのほうが都合が良い」と言えます。

 つまり、《割高成長株》から《割安成熟株》に少しずつ移行していく銘柄を、早くからじっくりと保有しておくことが、長期投資の1つの理想形だと思います。

 ここで、反論。《割高成長株》より《割安成長株》のほうが、安く買えるのだから、良いに決まってるでは?なるほど。しかし、私は、《割安成熟株》は好きですが、《割安成長株》はちょっと躊躇してしまうのです。
 というのは、成熟株は、業務内容も安定しており、業績もそれなりに見通しがつきやすいものです。ですから、割安成熟株には 低PERの安定感というか、魅力があります。しかし、成長株は、業績が、善くも悪くも不安定です。上にも下にも変動可能性があります。そして、PERというのは、利益が5分の1になれば5倍になり、利益が5倍になれば5分の1になるものです。《割安成長株》が、本当に割安なのか、それとも見かけだけの割安なのか、成熟株のようには自信を持てません。

 低PERには、(相場低迷などを除いて)次のケースが考えられます。
1)景気連動の不安定性あるいは業績悪化下方修正が懸念されているので人気が離散。しかし、いまのところ表面上は低PER株である。
2)実力が評価されずに、低PERに放置されている。

 多くは、1)の場合であり、形式的には「低PER株」なのですが、実際には「高PER株」なのです。
 「業績悪化懸念があり、突然に高PERになる可能性が高い低PER株」だったら「業績向上期待があり、突然に低PER株になる可能性が高い高PER株」のほうがいいです。
 「市場はわかっていない」と思っていたら、わかっていないのは自分の方だったというようなことがあります。なぜ、市場は割安に放置しているのかを、徹底的に考えるべきです。考え尽くして、調べつくして、それでも、絶対的自信があるのなら、次。

 少数ですが、2)の場合もあります。《お宝銘柄》が、ここに潜んでいます。ハウスウエディングという形態が認知される前のテイクアンドギヴ・ニーズ とか、土地転がしと思われていた不動産流動化企業など、市場そのものの評価が定まっていない場合、一般に実力が評価される前に発掘できたら、美味しいですよね。しかし、その場合、《お宝》性の判断は、定量面ではなく定性面ですね、当然。

 つまり、成長株は成熟株とは異なり、そもそも業績の安定感に乏しいのですから、不確実な数字に頼るよりも、もっと業務内容などの定性面に判断軸足をおいたほうがいいのではないでしょうか。「企業を買う」べきであって「値段を買う」べきではないと思うのです。「値段」を見るのは、最初ではなく最後でしょう。

 そう考えると、成長イメージが明確でわかりやすい株は、割高なことがほとんどです。ブランド品が高いのと似ています。
 高PER株には、たいてい、その高さを正当化するような《理由》がついています。その理由が正当なものか、夢幻かは、わかりませんが注目度は高く、吟味の視線に常に晒されています。とはいえ、ブランド品だからといって、たまに粗悪品もあります。
 一方、ノーブランド品は、安いのですが、表面はブランド品と似ていても粗悪品である可能性が高くあります。ただ、掘り出し物のお宝が混じっている可能性もあります。
 ブランド品が高いのは、「安心料」なのです。 多少、高くても、ブランド品を買った方が品質的に安心という場合も多いのです。

 まとめます。
 《成長株投資》は、 株価の割高割安よりも、成長の道筋、成長余地の規模などの見極めのほうが、ずっと大切。成長し続ける限り、どんな株も真の割安になるのです(とはいえ、買いのタイミングは考えないと)。
 《割安株投資》は、割安判断の前提である収益の安定性、事業の成熟性の判断が大切。成長を急げば、それに伴い費用も発生するが、収益が思いどおりにならなかった場合に費用だけ増加し利益が急減することが多い。割安株投資の場合には、急成長よりも、むしろ成長の伸びがゆっくりと緩やかな方が良い。

 ということで、《割安成長株》というのは、一見、両者の良いところを採用した投資法に見えますが、実際には、二兎を追って何たら、両者の求める確実性を犠牲にした不安定な妥協の投資法に思えます。もちろん、値上がり余地が高い《お宝銘柄》が、極めて少数、ここに潜んでいることも事実です。ただ、それは、割安指標と成長指標でスクリーニングして、「検索、クリック、はい、発見しました」なんて安直なものではないです。普通は、成長株は、費用先行なので、割高指標になりがちなもの。そこを、新規市場誕生の芽の観察などで見いだすものなのだろうと思います。

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コメント

高PER高成長株が期待を裏切った時の恐怖は貴殿がこのブログで取り上げて下方修正を出した多くの銘柄の株価推移を見ればよくわかります。

 過去にも何度か、内容が、《図星》であるときに限って、こういうコメントがされるのです。飛んで火にいるではありませんが、一応、コメントに返答しておきますと、
 「いつ、割高株になるかわからない割安成長株は、割安さが不安定だ」と書いているのであって「割高株は良い」と書いてあるわけでは、全くありません。成長株は投資根拠をどこにおくかということを書いています。本稿の主旨を理解してからコメントしてください。
 それはそうと、

 読者さん、私の意見の大半は、失敗経験(継続中もあり)から生まれてきたものですから、別に過去の失敗を指摘されようとも、「それが、どうしたん?」です。また、反論も、それが将来への糧となるなら大歓迎です。意見が異なろうとも、正反対であろうとも、私のために、その意見を吸収していきたいです。

 ただ、あなたの最近の数度のコメントは、単なる嫌がらせであって、そこから私が得られるものは何もないです。私にとって、益のないコメントは、削除してもかまわないのですが、あえて、晒しておくことにしました。あなたのコメントは、あなた自身を「ネチケットの守れない奴」と惨めに晒しているのですよ。

 ここは、ただの素人個人投資家のブログですよ。「公共の場」ではありません。「私の家」の中で、私的に勉強会を開いているようなものです。他人の家を訪問するときには、最低限のネチケットを守れない人間の言うことなど、誰が相手にします?

 「ブログのクレーマー対策は無視すること」は、常識です。なぜ、そうしないのか、よく考えてみてください。

 あなたの投資経験から私が学べることはあるはずです。同様に、私の投資経験から、あなたの学べるものは必ずあるはずです。少しでも学べることがないのか、それを探るほうが互いに益がありませんか。もし、ないと考えるのなら、 私のような素人個人投資家と、一緒に学んで向上したいと考えておられるのでないなら、このブログにこられても、しょうがないですよね。まだ、続けますか?

 あなたが、上記のコメントをつけたことから判断すると、あなたは「割安成長株」投資に意義を見いだしているのではありませんか。だとしたら、本稿に直接に反論する形で、コメントを書かれたほうが、互いに益がありませんか。「割安成長株」擁護コメントを、是非、お待ちしています。私は、議論に勝つ負けるなんて、どちらでもよいのです。自分の資産が殖えるためなら、議論に負けて、投資法を身につけたいです。

 

 最近、職場の友人関係もあり、ミクシィに少し入り込んでいるんですが、
 気がついたら、ミクシィが上場来高値を更新中ですね。《割高期待先行株》との先入観を捨ててちゃんと調べてみるひつようがありそうです。

ミクシイですが、今のままだとニフティの二の舞になりそうですが、やり方によってはまだまだ化けそうですね。
ただ現在の株価は将来の収益をかなり織り込んでると思います。
同じSNSのフェイスブックが1兆5000億の値がつきましたが、アクティブユーザー数で比較するとミクシイの株価は2300億程度それに今のフェイスブックの勢いと比べるとミクシイは見劣りしてしまう所があると思います。

 一晩経って、読者さんに対するコメントが、きつすぎたことを反省しています。私の未熟さを晒すために、そのまま残しておきますが。
 お互い、切磋琢磨の議論をしましょう。

 RMさん、こんにちわ。
 私も、かつての90年代中旬のニフティの勢いを知っていますが、たしか、ニフティは、設備面、技術的に限界点に達したのですね。

 ミクシィに関しては、気になるものの、今のところ、確固たる意見はないです。

>やり方によっては<

 これが、全てのように思います。

 しかし、ネット株の勢いはすごいですね。9月末安値から、
 ファンコミュ 約3倍
 ドワンゴ 2.8倍
 ミクシィ 2.0倍
 

PERやPBR、そういった指標では痛い目にあいましたから、身を持って体験済みです。
代表的な指標は多くの人がチェックしてるのですから、そういった指標を頼りに投資をしても勝てるはずがないのです、普通に考えればそうなります。
どちらかと言うと余計な銘柄をはじく為に使う事の方が多いです。
ミクシィでもニフティでもありませんが朝日ネットは買っています。蚊帳の外ですが気長に持ちます。

お疲れ様でございます。先日ご紹介させていただきましたフジタが急騰しているようでございます。

フジタと同様にこちらも業績が良くなっているのに今のところフジタと違って反応が悪いJIECでございますが、注目の時が来るのを待っている状況でございます。

情報企画の方は二度目の増配を行い、まあ業績は順調なんじゃないかと思いつつやはりこちらも保有継続中でございます。

なかなか新しい銘柄の勉強をする時間が避けない状況になっているため、ご関心のあられるものとして挙げていらっしゃる銘柄へのコメントができず、代わりに持ち株中心の銘柄のお話ばかりとなってしまっている点大変失礼いたします。

フジタなんかは、業績回復型の割安の理由が存在する株であり、さしずめ割安不人気株であり、業績が回復すれば割安という分類になるのでしょうね。

小生は、成長や業績回復の傾向があるにもかかわらず、何らかの理由で未だ割安に放置されているような銘柄のうち、その理由のリスクを甘受できる銘柄を探していきたいと思っております。非常に少ないとは思いますが、これまでに例示といたしまして挙げさせていただいております情報企画、JIEC、フジタ、サンウッド、武富士なんかは、モンキーなのかもしれませんが、それぞれその要素を現在有している状態なのではないかと思ってみたりもいたしております。

念の為でございますが、買いあおりたいという趣旨で保有中の銘柄の個別銘柄の名前を書いているつもりはございません、その中に何かご関心を惹く銘柄があれば分析結果をお伺いしてみたいという気持ちはございますが。

その点ご理解いただけましたら幸いでございます。

ですので、もしご迷惑であれば、今後一切二度と個別銘柄の名前は書きませんので、ご指摘いただけましたら、幸いでございます。

一般読者ですけど、上のゆきをんさんのコメント読んで普通に引きました・・・

何度か暗にフージャーズらしき株を攻撃されてましたし、恨みを買う事もありますよ。

最近でもフィンテックやチップワンは酷かったですし、フージャーズの株主にしてみれば自分達だけ不当に非難されているように気持ちになった方もいたと思いますよ。

逆にタビオの分析とイーギャランティーのタイミングは素晴らしかったですね。

>ここは、ただの素人個人投資家のブログですよ。「公共の場」ではありません。「私の家」の中で、私的に勉強会を開いているようなものです。
会員制SNSでもなく、普通に検索経由で辿れる範囲にあるのにこういう言い方はズルイと思います。

なんというのか、あなたほど優秀な方が上のようなコメントされた事に落胆しました。

私が普段コメントしない一読者である事は書き込みのIDを確認していただければわかると思います。

ゆっくり休息されて気持ちに余裕のある時だけ投稿した方が長い目でみればいい結果になると思います。

通りすがりさん、こんにちわ。
私も上述のとおり、次の日には反省しているので、大目に見てやってください。

ブログが、どの程度まで私的空間か公的領域かのテーマは、別の機会として、


>>ゆっくり休息されて気持ちに余裕のある時だけ投稿した方が長い目でみればいい結果になると思います。<<

 「いい結果」とは何のことかな、と思いましたが、私には、アクセス数を増やしたいとか、そんな希望は全くなく、(個人ブログに一般的な)相互リンクすら、おこなっていません。
 仕事もそれなりに忙しく、ブログを読んだり書いたりすることが、気分転換の1つですので、「ブログのために気持を落ち着かせて」なんて、ブログ運営者は、そこまでしなくちゃいけないのかな、と思います。私にとっての「いい結果」とは、訪れてくださった人とのコミュニケーションは楽しみながら、株や社会についての知識やスキルを向上させていくこと、実生活に跳ね返っていくことでしょうか。そのためには、せっかく訪れてくださった多くの人からひんしゅくを買うような物言いは気をつけようと思います。
 フージャース投稿は、配慮が足りなかったかなと反省しています。 それ以降、反発を受けた反省も踏まえて、本音では具体的な銘柄を入れて説明したいと思いながら、否定的なことを書くときには(できるだけ)一般論にしています。バランスが難しいです。
 ありがとうございました。

《いつも拝見させていただいております》さん、こんにちわ。
>>その中に何かご関心を惹く銘柄があれば分析結果をお伺いしてみたいという気持ちはございますが。<<
 では、お言葉に甘えて、下記に投稿欄を作りますので、そちらのほうに分析結果のコメントをお願いしていいでしょうか。

http://yuki.cocolog-nifty.com/mokuji/2007/10/post_b60f.html

銘柄は、お任せします(とりあえず1つ)。

のぼりんさん、こんにちわ。

>>代表的な指標は多くの人がチェックしてるのですから、そういった指標を頼りに投資をしても勝てるはずがないのです、普通に考えればそうなります。<<

 まったく同感です。
 例外はあるものの、ファンダメンタルに、需給とか、流動換金性とか、不透明性とか、全てを全知全能の神のように織り込んだ場合に、世の中の銘柄は、割安も割高もなく、全て適性な理論株価なのではないかな、と思うときがあります。まあ、短期的な歪みはあるにしても、移動平均線が理論株価かなと。
 ただ、成長株の場合は、「理論株価」が年月とともに上昇していくので、そこに株式投資の源泉があるのではないかと。

ゆきをんさん横レス失礼します。

>通りすがり

なにかあなたダメな感じがぷんぷんしますね。
投資の世界では損させられても選択した自分のせいって言うのが常識でしょ?
disっといて反論が来たら引きました?
すばらしい頭脳をお持ちですね(笑)
用はフージャースで損したから逆恨みしてんでしょ

通りすがりサン
だったら、アンタが読者サンの相手をしたらどないや

大変お世話になっております。小生なんかが分析書いてしまってもよろしいものなのか、レベルの違いから大変恐縮してしまっております。

財務諸表の数字には必ずしも表れにくいかもしれないと感じているビジネスモデルや経営者や知的財産の価値について上手にご説明できればいいのですが、いずれにいたしましても、小生のレベルでも恥ずかしくないものが書けるかどうかわかりませんが、後日決断して書けそうでしたら有難く勉強させていただきたいと存じます、レベルが違う点理解しておりますので、あまり期待なされないでいただけましたら、幸いでございます。

通りすがりさん
普通、最初のコメントで、一般読者と前置きするか
墓穴やで

ライフステージやチップワンを注目してます!いう
話しをした後、あの結果なので、若干恐縮だったのですが。。

イーギャランティについてはほんの少しお役に立てたかもしれ
ないと思うと、少しほっとしてます(注目銘柄が最近結構ハズレまくってるので・・笑)

私はサブプライムショックの追証換金売りが精一杯で
VCが売り切った~ってニュースが出た後も、良さそうだよな
~と思いつつも全然買えませんでしたが。。。

ファンドアレンジでは、グラウンド社とフィンテックが苦戦
してますが、グラウンド社やフィンテックの会社説明会で
聞いたときに、アレンジだけじゃなくこゆことやってくれないかなあ~と思ってたのがイーギャランティなので

そゆ意味では、イーギャランティにはとても期待してます。

らうさん、こんにちわ。
ライフステージやチップワンは、まだまだ期待しています。
というか、ライフステージは、そもそも、下方リスクは誰にもわかっているような感じでしたし。
フィンテックは《売切り型》、
イーギャランティは《累積型》、わかっていたんですけどね。フィンテック、決算リスク、持ち越しちゃいました。

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