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2007.10.15

アイディーユー

4回めの投稿です。前回投稿のコメント欄での、不動産オークションという市場が「成功する」か「失敗する」かという話題はブログのネタとしては、大変面白いです。ただ、投資は、そのような予測に基づいておこなわれるものではありません。

 成功するか失敗するかなんて、誰にもわからないのです。アイディーユーの経営者や従業員は不動産のプロです。1600を超す加盟店も、それなりの算段があることでしょう。彼ら以上のことを一投資家が、予測しようがありません。また、その必要もありません。

 投資家として必要なのは、もし、仮にですよ、不動産オークション市場が成功したときに、どの段階で、成功すると見極めて確信し、資金投入(株購入)するかというタイミングのはかりかた《確信ポイント》の判断です。
 もし、不動産オークションが失敗するのなら《確信ポイント》は、永久に訪れないのですから、資金投入もなされることはなく、損失もありません。予測に基づいて投資するのではなく、現実に基づいて確信し投資するのです。

 では、《確信ポイント》は、どの段階なのか?キャズム理論では、次のようになります。拙稿「ゴリラ企業の破壊力」から抜粋になりますが、新しい製品やシステムが市場に受け入れられるとき、次のような過程を辿ります。

(1)マニア(新しい物好き)

(2)進歩派(他者を出し抜きたい)
 ------ キャズム ------

(3)実利主義者(群れから離れるな)

(4)保守派

(5)懐疑派

 有名な理論なので、詳細は省略しますが、「成功する」「失敗する」の議論があったとき、「マニア」や「 進歩派」は、「成功するに違いない」と主張し、「保守派」や「懐疑派」は「失敗するに違いない」と主張するでしょう。ですから、こうした予測議論は、面白いだけで、あまり役に立たないのです。
 というのは、鍵を握るのは「実利主義者」だからです。実利主義者に意見などありません。実利主義者は、けっして、新しいとか便利そうとか、それだけの理由では、新製品や新システムを、決して受け入れようとしません。同業他者が、どうするか、じっと見守っているのです。成功事例が次々と出てこない限り、冒険しようとはしません。しかし、成功事例が次々と出てくると、今度は、自分だけが乗り遅れるわけにはいかないと、堰を切ったように参加し始めます。自分の意見など持たず、多勢につくのです。この実利主義者の集団が、動き出すかどうかで、決まるのです。

 投資家にとって《確信ポイント》とは、実利主義者が動き出したことを確認した時期です。こうした、社会に変化を与えるようなシステムは、一発屋商品と違って、息が長いですから、それを確認してから投資を始めても十分なのです。任天堂にしてもアップルにしても、勝ち組であることが誰の目にも明らかになってからもなお、株価は強いのです(拙稿「任天堂」参照)。
 もちろん、少量の打診買いなら、それ以前でもいいでしょうけど(私は打診買いだらけですが)。

 私は、個人的には、不動産オークションは成功する可能性があると思っています。しかし、予測と投資行動は別です。
 
 では、実利主義者が動き出したことをどうやって確認するのでしょうか。群れをなして動き出すのがサインですから、数字で確認するのが一番でしょう。どんなシステムも社会で受け入れられるときに、S字カーブ、つまり、急に普及が早まるポイントがあります。それまで冷ややかな態度を取っていた実利主義者が、突然に態度を変えて殺到し始める時期です。それを待つことです。それが永久にこないのなら、それだけのことです。

 というのが、ゴリラゲームの基本的な考えかたですね。

 ただ、こうした「待つだけ」状態は退屈なので、「成功する」「失敗する」論議を通して、自分のモチベーションを上げていくわけですけど。

  □ これまでの投稿 □

1回目 2006.09.09
2回目 2007.01.14
3回目 2007.10.13

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コメント

大変お世話になっております。

新興は、久しぶりにヤフーやミクシイなど有名どころも含めて元気で、このまま業績相場になって、爆発してくれるといいなあ、と思いつつ。

ご指摘の、予想だけに頼りすぎるのではなく、変化の兆しをきちんと確認する、そして、その変化の方向性と比較して、現在の株価が割安であると判断できるならば、買っておけば、市場全体に業績相場が訪れれば報われるはず、なるほどと思いました。

将来の成長に期待する収益バリュー投資では、変化の兆しを確認しておかないと、予想だけで勝負することになってしまう点、投資方針の根幹として自分のルールとして、勉強させていただきたいと存じます。

その関係では、本日、小生の主力の一つのJIECが上方修正してくれました。同じく主力の情報企画と同様に全体の流れで連れ安したまま低迷していましたが、変化の兆しに対する認識に間違いがなかったということで、安心しました。

この調子で、情報企画も、同様に、変化の兆しを着実かつ無難に来期も増収増益、増配を続けて昇格条件満たしてくれれば、と思いつつ。

 新興市場も、やっとですね。

四季報の速報で以下の記事が出ていました。
相変わらず経営陣は強気の計画ですが、ゆきおさん的には以下の記事についていかがですか?
最近の不動産市況、マザーズオークションの状況を鑑みると、会社の計画達成はちょっと厳しいかなと思うのですが。。。
もちろん、3~5年先を見据えれば違った見方になるのかもですね。


アイディーユー 今期は売上高倍増、最高益更新予想だが、売り上げの9割は不動産売却に依存

 アイディーユーが先日発表した今2008年8月期の業績予想は、売上高が前期比87%増の1000億円、営業利益が同37%増の75億円、経常利益が同20%増の50億円、純利益が同30%増の30億円を見込んでいる。
 売り上げ拡大の根拠は、不動産売却を前期の464億円から900億円へ急増させるため。不動産売却は売り上げの9割を占め、依然大宗を占める。うち自社が運営するネットオークション(「マザーズオークション」)を通じた売却で800億円を計画している。大阪をはじめとする三大都市圏の中堅商業ビルが中心だが、高値警戒感や品不足感の台頭から九州や仙台など地方都市へ対象エリアを広げている。ただ、粗利率は前期の15%台から10%へ低下を見込む。
 オークション運営事業についても、加盟金とシステム利用料が前期の15億円から45億円へ増えるとみている。加盟店数は前期末の1627店から今期末3000店を計画。出展総額は前期の1681億円から5000億円へ、落札総額は前期の537億円から1500億円への拡大を前提としている。非常に高い目標だが、今年6月に全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)がマザーズオークションを公認したことや、出展物件の情報拡充などサイトの使い勝手向上などを通じてオークションへの参加・利用を増やす目論みだ。その効果が徐々に出るため、収益はやや下期に偏重する。
 一方、従業員を25名増員するため人件費が増大、広告宣伝費の増加を見込むうえ、営業外収支は有利子負債の増加と金利上昇により悪化する見通しだが、純利益は過去最高を更新するという計画だ。配当は記念配500円を落とすが、普通配当を増配し、2000円を維持する。
 全般に強気の計画であり、不動産売却益への依存度も高いため、実現性についてはやや不透明感の強い数字ともいえる。ただ、前期も不動産売却が順調だったため売り上げ倍増を達成しており、「四季報速報」予想としては現時点では、会社側の今期予想通りとする。
 当社では、長期的には不動産売却依存体質からの脱却を謳うが、オークション運営事業の収益拡大には時間を要するため、将来的な収益計画を示し切れていない状況だ。不動産市況の動向いかんでは、目先の収益計画が大きく狂うおそれもある。

 貯金魚さん、こんにちわ。
 マザオクに関しては、盛り上がっているとは言いがたいため、強気の予想を出すのはどうかなあと思いますね。どちらかというと、保守的な予想を出しておいて、うまくいった場合に、修正して欲しいです。
 本稿で書いたとおり、(既に少し持っているけど)、《予想》するつもりも、《予想》で買い増すつもりはないので、じっくり拝見してみます。

ゆきおさん、こんばんは。

返信ありがとうございました。

>加盟店数は前期末の1627店から今期末3000店を計画。出展総額は前期の1681億円から5000億円へ、落札総額は前期の537億円から1500億円への拡大を前提としている。

今期、これが本当に達成できるなら、ゆきおさんのおっしゃるキャズムをわたって実利主義者が動き始めるってな感じでしょうかね。

マザオクが成功すると確信できれば、10万円で買おうとと20万円で買おうと、そんなの関係ねぇ♪って感じですね。

 貯金魚さん、同感です。
 私だって、割安で買いたいに決まっています。しかし、株価で判断するのではなく、マザオクが走り出したかどうかで、買い増しを決めます。どんな株でも、成長し続ければ、必ず割安になります。成長し続ける可能性の方が、今、割安かどうかより、ずっと大切だと思います。今、割安かどうかなんて、全て予想に基づくもので、本当のところは、なかなかわからないですし。

勉強してみました。

保有なされていらっしゃると思いますので、小生より断然お詳しいと存じます。

1点だけですが、この会社の成否は、国土交通省の政策の行方によっているのかなという印象でした。

今は仲介で稼いでいると理解いたしておりますが、オークションが発展するためには、どうしてもオープンな価格という風土が不動産業界で定着しないと難しいのかなという印象でございます。

税金対策もあるのかもしれませんが、不動産の業界はまだまだ価格をオープンにすることに抵抗がある世界のような気がいたしております。

国土交通省が今それを改革しようとしているように伺われますが、そこが定着すれば、この会社は化けるような気がいたしました。

すいません、既によくご存知の範囲かと存じます。

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