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2007.09.13

イー・ギャランティ

イー・ギャランティは、「売掛債権等のリスク流動化」をビジネスモデルとする日本唯一の上場企業です。ややこしいですが「売掛債権等の流動化」ではありません。

 貸借対照表上の売掛債権の効率性向上やリスク低減を考える顧客企業は、「証券化」という方法があります。しかし、手間やコストもかかるのであり、資金回収の早期化などまでは要らない、リスク低減だけ、 という という顧客であれば、 「保証」だけがあればいい 選択肢も考えられます。リスクの引受手としても、「証券化」であれば、元本分の資金が必要ですが、リスク部分だけであれば、少額ですみます。「株」と「先物」の違いみたいですね。
 その保証を流動化させることで、更に市場を広げようとするのがイー・ギャランティです。顧客開拓のために、売掛(買掛)債権流動化の代表企業であるフィデックとも提携しています。


 私は 、(親会社の意向に左右されるリスクがありますので)子会社に投資するのは好きでありません。 ここは、伊藤忠商事が40%ほどの株を持ち、その「金融・不動産・保険・物流カンパニー」部門に属する子会社です。しかし、この企業はなかなか興味深いなと。


 さて、イー・ギャランティの業務は、《顧客が取引先等に対して持つ債権の未回収リスクに保証をおこなう》というものです。保証料を受け取り、もし、債権未回収が現実のものになったときに、代位弁済をおこないます。
 よくある、信用保証協会や銀行などの保証は、顧客の借り入れ等に対して、保証をおこないます。保証対象は顧客のバランスシートの《負債》です。ですから、顧客の財務体質等に対して審査をおこなうことになります。しかし、イー・ギャランティの場合には、 主に、保証対象は顧客のバランスシートの《資産》です。審査は、顧客の取引先の信用リスクに対してとなります。「審査の難易度」がかなり異なるようで、ここが参入障壁となっています。ちなみに、そういった債権の保証は、「保険業法」の対象にも「債権管理回収業に関する特別措置法」にも該当せず、いわゆる業法上の規制対象ではないので、そういう面での参入障壁はありません。

 新市場創出企業ではありますが、競合としては、ファクタリング会社の保証ファクタリングや損害保険会社の取引信用保険など。

 で、イー・ギャランティが、自らリスクをとって保証をおこなうかというと、そうではありません。全て、損害保険会社、リース会社、ファクタリング会社等の金融機関に対して、再保証委託をしているのです。それを持って、「流動化」と呼んでいるのですね。

 当社は単なるリスク引受けのアレンジャーとしてではなく、価格面、リスク面を含めた需給バランスの調整しにくいマーケットで、保証委託者と保証受託者のマッチングを適切にバランスよく行うことができるマーケットメイカーであることを目指しています。(決算短信「経営方針」)

 つまり、保証をする側と、される側の、間に入るビジネスというわけですが、昨年度実績で、イー・ギャランティの売上高(受け取った保証料)は約14億円。一方、再保証のために支払った保証料は6億円。諸手数料を差し引いても、間に入ったことによる売上総利益は、50%を超えています。えーっ、と思いました。なぜ、再保証委託を受けて、中抜きをされてしまった金融機関等は、直接に保証をしないのでしょうか。

 そういった債権(売掛債権、手形債権、請負債権、等々)の場合、取引先企業の財務体質等の倒産リスクに加えて、回収順位などの条件、契約内容が様々であるために、未回収リスクの審査が、かなり難しいようです。加えて、小口の寄せ集めであることが多いですから。そういった複雑なリスクを、1か月に数万社に及ぶ審査を積み重ねて、事業開始以来7年間に培ってきたデータベースによる統計的裏付け(ここが強み)で整理して、わかりやすい形でリスク情報を加工し、再委託先の金融機関が引き受けやすい形のリスク商品としてポートフォリオ組成をおこないます。
 
 生命保険や傷害保険で考えてもわかることですが、《保証》というのは、仕組み上、受けるほうが有利になっています。顧客は、統計的には「損」であることはわかっていても、万が一のリスクを考えて、保証料を払わざるを得ないと考えるのです。ですから、基本的に、《保証》は、儲かるのだと思います。ただ、それは平均して分散した場合であって、万が一の代位弁済のことを考えると、一定の規模は必要です。しかし、イー・ギャランティの場合には、再委託して自らのリスクをゼロにするという技を使っています。それを可能にしたのは、一定の規模の「資産」に代わる、一定の規模の「統計データ」なのだと思います。

 また、顧客は、保証料を支払うことを必ずしも「損」と考えているとは限りません。というのは、

 経営が苦しいから当社のサービスを利用したいというものよりも、新しい事業を展開したいという営業の拡大を意図したものがほとんどです。当社の保証サービスの1つとして、お客さまに債権=売掛が発生した時点で、保証料が発生するというサービスがあります。売らなければ保証料は1円もかからないので、事業を拡大するステージでポジティブに使っていただけるのです。(ダイヤモンドビジョナリー07年10月号)

 つまり、イー・ギャランティのサービスがあってこそ新事業に乗り出せるような場合に、固定費ではなく変動経費の一部なので、WIN-WINな関係となるのですね。さらに、その顧客の新事業の売上が伸びれば、イー・ギャランティの売上も自動的に伸びます。

 実績を見てみます。保証残高の推移ですが。

 平成16年3月 230億円
 平成17年3月 343億円
 平成18年3月 431億円
 平成19年3月 617億円

 2、3年後には、1000億円〜1500億円、10年以内に10倍以上を目指しているとのこと(TOPインタビューより)。
 これに保証率を掛けたものが売上(保証料)というわけですね。性質上、契約更新が多いでしょうから、典型的な《累積型》です。提携先の千葉銀行のホームページを見ていると、具体的な料率が書いてありました。
 
 毎月の売上実績により課金する方式
  包括保証型が、0.6〜1.8%
 取引有無にかかわらず設定限度額に課金する方式
  包括保証型が、1.5%
  個別保証型が、3.5%程度

 全体としては、平成18年度の売上高が、14億円ですから、年間保証残高が(平均して)520億円として、保証料率は2.7%ぐらいとなります。平成17年度を見ると、売上高が、10億円ですから、平均380億円として、やはり2.7%ぐらいとなります。と、
 再委託については、原価率から50%弱を掛けて、保証料率は1.3%ぐらい。参考までと、対象は違うのですが、東京都信用保証協会の一般的な保証率も、1.35%でした。保証率は顧客毎に交渉するようですが、景気が良くなってくると、当然に下がります。が、一方で顧客の取引額が増えて保証総額が増えるので、どちらがどうか、というわけですね。

 顧客開拓については、伊藤忠グループの他、地方銀行1県1行提携戦略により地銀からの紹介という形が主だそうです。前年度末に18行、今第1四半期末に22行、都道府県の数から考えて倍加は可能なので、売上も単純に比例して増やすことは可能です。また、1つの地銀内でも、「評判がいいから、もっと紹介案件を増やそう」なんてことにも、あるでしょうから、それだけでもしばらくは大丈夫。

 もっと、長い目では、決算説明資料から、「売上債権保証事業の市場潜在性」によると、保証(保険)引受残高(カッコ内は売掛債権に対する保証付保率(%))を比較して、
 
 日本   1兆3000億円(0.6%)
 フランス 11兆1300億円(12.0%)
 ドイツ  13兆8330億円(22.0%)

 なぜ、アメリカやイギリスが出てこないのかな、とは思いますが、 両国と比べると、日本はまだまだ。日本の 1兆3000億円の中でのシェアもあるでしょうし、 市場拡大及び成長余地は十分にあるのかな、と思います。
 思うに、日本では、長らく、卸業者とか商社とかが、中抜きの代りに零細小売業者の信用リスクをとっていたのでしょうね。流通の変化により、仮に、産地ダイレクトなど生産地消費地の直接取引が増えていけば、ニーズも増えていくでしょう。

 また、以上は主に、(事業規模の9割を占める)事業会社向けサービスの説明でしたが、(事業規模は1割ぐらいですが)金融機関向けサービスというのもあります。 
 eGuaranteeという企業名(最初の「e」)は、ネット企業みたいで馴染まないな、とホームページを見てみたら、元々、この企業は、「電子商取引における決済サービスにおいてファクタリング会社が保有する金融債権の保証を目的として設立」したそうです。今は、地銀提携の仕事が中心ですが、企業が考えている成長イメージとしては「マーケットメイカーであることを目指しています」と述べていることからも「金融機関向け」中心のような気がします。

 

 金融機関のお客様には、当社の保証サービスをご活用頂くことにより、決算書等の財務情報の入手が困難で、審査・分析ができないリスクを引受けることが可能となります。(ホームページからの説明)

 金融事業に伴って生じる多種多様なリスク、これこそ、イー・ギャランティの本領発揮というか、「リスク流動化」の代表的なものだと思います。イー・ギャランティの統計データベースって、それほど優れものなのでしょうか?帝国データバンクは、イー・ギャランティの大株主であり(9%ほど)、ここのデータもフルに活用しているとは思いますが、その程度のことは、金融機関も当然にしているはず。なにしろ、銀行は信用リスク審査のプロなのですから。なのでしょうか。それとも、見方を代えて、地銀は、自らの審査業務の一部をアウトソーシングしてしまった、と考えることも。
 ともかく、これはまた商品化し、各種金融機関に、保証を再委託します。

 債権の「オプション売り」みたいな感じかなと思いますが、そういう意味で類似しているともいえる「クレジットデフォルトスワップ」の市場潜在性について 決算説明資料から、国内市場の参考データを。

2004年12月  5兆49000億円
2005年6月  9兆6014億円
2005年12月  11兆9438億円
2006年6月  17兆4948億円

 市場の伸びとしてはすごいなと思いますが、デリバディブ市場は主に大企業の信用リスクを扱うものであり、一方、イー・ギャランティのサービスのほうは、(リスク判定が難しい)中小企業向けに強みがあり、市場の重複具合が微妙な感じです。しかし、中小企業向けのほうが市場の拡大余地が大きいような気もします。

 財務的には、 有利子負債はなく、財務は堅いです。業績の推移(百万円)は、以下のとおり。投資CFは、定期預金みたいなものが主なので、営業CFは、FCFに近いと考えてください。


-売上高経常利益営業CF
17年3月期68157△51
18年3月期1,041143476
19年3月期1,421196431
20年3月期予想2,040300-

 経常利益に比して、営業CFが、やたらと多い。そう、特長としては、1年間の保証料を、前受金として受け取り(貸借対照表へ)、毎月、その月の分を損益計算書の売上に移していくことです。だったら、前受金が増えていくことが確認できたら安心ということになります。と思って、第1四半期を、前年度末と比べてみましたが、やや減少でした。年度末に前受金入金が多かったみたいで、前受金推移にもばらつきがあるようです。ちょっと予想方法を考えてみます。ただ、会社側は、細かい数字を知っているので、会社発表の業績予想には、わりと信頼感があるのではないでしょうか。

 以上、まとめると、ビジネスモデル的には、

長所としては
1)売り込みかた次第では、市場規模は相当に広がる。
2)今のところ、《保証》業界に、似た商品はあるとはいえ、単純な売掛債権だけではなく、ややこしい債権に対応できるという強みがあり、その分野では成長市場のオンリーワン企業である。
3)メガバンク等の参入のリスクについては、今のところ地銀の顧客を主対象にしているので棲み分けるのではないかと思われる。提携地銀を増やせば、売上高は自動的に増えそう。
4)実績がそのまま、商売の強みである審査情報データベース(そんなに差別化できるものなのだろうかと半信半疑だが、それにより再委託先を説得して販売につなげているのは事実)の蓄積となり、先行者メリットがある。
5)累積型ビジネス(拙稿「売切り型ビジネス、累積型ビジネス」参照)であり、売上高減少というリスクは低い。(経費増による利益減リスクは当然にあるが)
6)伊藤忠商事のほか、帝国データバンク、NTTデータ、損害保険ジャパンなど、が大株主であり、親のスネをかじれる。例えば、伊藤忠は保険関係の子会社を持っているが、イー・ギャランティは再保証先探しなどで協力関係にある。フィンテックのように、関連子会社を整備し立ち上げるために苦労する手間が要らない。


 ビジネスモデルの短所というかリスクとして、確かに、新市場創出企業かもしれませんが、「保証」というジャンルで見れば、市場は広大で、競合は多数です。その中で、この程度の企業規模では、シェアが小さ過ぎるため、外的環境で業績が変動するリスクは、たいしたことではないのではないかと思います。どちらかというと、心配事は、内的なもの。

1)急成長に伴うひずみ(経費増加など)
2)ビジネスモデルの広がりによる資金調達。
 不安材料が、決算短信の「会社の対処すべき課題」に書かれていました。

 顧客企業が保証を希望するリスクと再保証委託先が引受けを希望するリスクのギャップを埋めるべく、 「条件差」の部分(保証サービス契約に対して再保証委託先が保証を引き受けることができない部分)について、自社の財務基盤拡充にあわせて徐々に自社でリスクを引受けることにより、再保証委託先にとって魅力的な投資機会を提供するとともに、海外金融機関も含めてリスク移転先を拡大しリスク引受能力の向上に取り組んでまいります。
 

 どこかで感じた不安が。そう、フィンテックについて、本来、証券組成(アレンジメント)には自己資金が要らないビジネスモデルにもかかわらず、儲け話が目の前に転がっているからと、プリンシパル業務のために増資をしたのと同じ匂いがしてきました。しかし、証券化の場合には、証券購入資金が、最初に要りますが、保証の場合には、最初は、保証料を受け取るだけ、あわよくば、そのまま、丸儲け。その受取保証料の中で、準備金を積立てるなりすればいいだけのことかもしれません。しかし、このことは注意。

 以上、総合的に考えて、自分でずっこけなければ、 急成長している、オンリーワン型の累積型ビジネスであることを考え、 当分は成長は堅いのではないでしょうか。
 時価総額は、30億円を挟んで、激しく上下していますが、相場に活気が戻ってくれば、大きく跳ねそうです。

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コメント

こんばんは!
9/26 終値でPER24倍。
オンリーワン型のビジネスゆえ比較対象となる企業がなく
今の株価が割安なのか判断がしづらいとこです。
米国のサブプライムローン問題に関連して信用リスクを保証することに警戒されているとも思いますが・・・!
でも大きく化けそうでおもしろそうですね!

 8月の底値からは、2倍になりましたね。私は打診買いはしただけで、買い増しのチャンスは貰えませんでした。また、下がらないかな、と思っています。

以下の記事は情報企画のヤフー掲示板から拾って参りましたが、偶然、その中にイー・ギャランティーの名前がございました。一瞬、んっ同業他社?、と思いました。ご指摘の通り面白そうな企業でございますね。時間ができたら分析してみたいと感じました。

10/24 13:13 先読み作戦指令室=情報企画 [ 株式新聞速報ニュース/KABDAS-EXPRESS ]

長い下落相場も終わり、新興市場は復興相場に突入している。 エイチアイなど、好業績で、独自の強み、技術を擁し、なおかつ、大きく下げた銘柄、もしくは長い無相場と需給が良好な銘柄の強さが目立つ。
 この流れから信用リスク管理など金融機関向けソフトで展開している情報企画に注目したい。
 03年5月に公開価格28万円で上場、同6月に118万円上場来高値を付けた。同年9月に1対2の株式分割、07年9月に1対2の株式分割を実施したが、株式分割を考慮した株価推移を見ると、上場来高値示現後は10万~20万円のボックス、無相場と需給は良好。ここに来て、日足は上放れの格好となり、ボックス上限の20万円挑戦、20万円のフシを抜くと、いよいよボックス上放れ相場に突入する。
 信用リスク関連のイー・ギャランティが上値追い態勢に入って来たことも刺激材料となろう。
 前07年9月期は新自己資本比率規制対応ソフト、新会社法対応ソフトなどの好調からピーク経常利益更新、増配の計画。今期は地方銀行など顧客層の拡大、担保不動産評価ソフトなど新分野の寄与から増益が続こう。

この記事から5年越し

東証一部上場、保証残高も1500億円を越す勢いですね
このペースですと5000億もあと7,8年かかりそうですね

これからもこの銘柄を見守り続けます

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2回めの投稿です。今週は、イー・ギャランティの大口再委託先であるAIGの破綻騒動があって、思ってもいないリスクを意識させられました。こういうことは、滅多に起こら [続きを読む]

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