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2007.09.07

チップワンストップ

2回目の投稿です。チップワンストップは7月末に下方修正を発表し、(相場が荒れているとはいえ)1か月で株価は半分になってしまいました。

 その前に、6月25日にはインプレスと業務提携し、メディア事業の連結子会社E2パブリッシングの株式の一部を売却しています。売却価格が1株1百万円。チップワンストップのメディア事業は、赤字が続いているため、価値を算定するのが難しいのですが、もし、インプレスの買い取り価格が適正だとすれば、チップワンストップは、未だ、E2パブリッシングの株式を660株保有しているため、その価値は660百万円ということになります。貸借対照表には計上されていない627百万円の含み益があるということになります。
 そして、貸借対照表の中身を見ると資産が毀損してそうなものは、ほとんどないと考えられるため、株主資本22億円をそのままプラスすると、時価総額の27億円は、解散価値まで売られていることになります。厳しいですね。
 
 さて、前投稿にも書きましたが、この企業に着目した理由から思い起こしてみます。
1)4〜5000億円の半導体電子部品・中小ロット市場が存在し、拡大中。効率が悪く、ネット向き。
2)主なネット通販業者は、チップワンストップ(年商約30億円〜前年度)だけ。
3)米国などでは、確立しているビジネスモデル。
 というところです。もし、これが、景気に敏感な業態であれば、売上低迷は業績下方トレンドへの入り口かもしれません。しかし、あまり、景気に左右されない市場(後に取り上げます)だということなので、成長鈍化はあっても、業績が大きく落ち込むリスクは低いのではないかと思います。
 もちろん、急成長企業は、販管費など費用は急拡大しますので、売上が少しでも低迷すれば、利益は急減します。しかし、利益というのは、収益から費用を差し引いた差額概念に過ぎません。利益の増減に一喜一憂するよりも、市場に受け入れられているかどうか、売上が伸びているかどうか、が、今後に向けて大切な留意点だと思います。
 さらに言えば、仮に売上が伸びていなくても、上記1)2)の条件に異変がなければ、長期的には大丈夫ではないかと思います。
 どちらかというと、
1)について、ネットが普及しても秋葉原が消滅するわけではない〜ネット飽和点に達しているのではないか。とか、
2)他業者の参入。特に、米国で成功している業者の日本上陸。とか。
 そういったことのほうが、短期業績よりも気にすべきではないかと思います。とは言っても、ニッチな市場なので、業界のことなど、私にはわかるはずもなく、結局、売上状況などで判断するしかないと、なるんですけどね。
 
 さて、事業毎に売上(カッコ内は利益)推移を、

  
-電子デバイスソリューションメディア
前上期1,444(142)40(20)127(△31)
前下期1,455(117)121(49)195(28)
今上期1,194(71)153(52)179(△12)

 
 中核の電子デバイス事業以外は、順調なようです。ソリューション事業などは、いいですね。単なるネット通販だけでは、競合が出てきたときに安値合戦となりかねないですから、豊富な製品情報を土台とした《情報が多いものが勝ち》の事業との両輪で、成長を続けて欲しいと思います。
 一方、電子デバイス事業は、成長鈍化どころか、マイナス成長ですから、問題ありです。あえて言い訳を考えれば、前第2四半期は、突出して購入単価が高い(5万円強)ので、臨時的大口注文があったみたいですし、顧客の予算上、上期は購入しにくいのかもしれない、とか、考えられないわけでもないですが、そこまで考えることもない。
 その電子デバイス事業について、期首に、会社予想の前提条件が示されていますので、それにそって、下方修正の原因を見てみます。
 
-受注会員受注件数受注単価
前上半期3,90934,724件46,333円
前下半期4,66440,706件約35,000円
期首予想-48,000件30,000円
今中間期実績5,000以上40,800件28,600円

 下方修正理由に、「各種プロモーションの効果が限定的であった」とあります。確かに、会員数総数は、やや伸び悩み気味(半年で6000名獲得予想だったところ、4800名)です。受注会員数も、もうちょっと伸びて欲しいとは思うものの、まあまあ許容範囲です。大きな問題は受注件数と単価が大きく落ちていること。「商品サービスの品揃え拡充のスピードが見込みを下回った(決算短信より)」ことにより、既存会員の購買が減ったことが大きいのではないかと推測します。それならば、挽回は可能です。長い目で影響が出るのは、会員数の伸び悩みですから。
 
 と、考えていたら、中間期決算資料で、興味深いデータが出てきました。電子デバイス事業のニーズ別受注高(カッコ内粗利益)推移です。
 

 
-設計試作ニーズ量産ニーズ緊急調達ニーズ
05668(227)604(99)686(187)
061,244(435)691(112)1,023(317)
07上624(237)181(36)323(109)

 電子デバイス事業は、主に設計資産ニーズに対応する事業であり、景気への感応度が低いはずでしたが、実際には、量産ニーズやら緊急調達ニーズやらの理由で注文をする会員も多く、この中間期には、半導体市況が低迷し、そういった注文が少なかった。本来の設計試作ニーズ自体は、特に低迷しているわけではない、ということを示しているようです。
 景気連動部分もけっこうあるのか、と(話が違うと)思いますが、景気に左右されない基礎部分が右肩上がりなので、まあ良しとします(都合良くデータを出してくるものだと思いますが)。
 もっとも、受注粗利益のうち、「設計試作ニーズ」の占めるシェアは、
 
 05  44.2%
 06  50.4%
 07上 62.1%
 
 ということで、この拡大傾向が続けば、本来、考えていた「景気非連動」銘柄になるやもしれません。
 
 もう1つ、この中間期資料によると、米国における半導体電子部品・中小ロット市場のカタログ・インターネット業者のうち上位四社の売上高が、05年の合計1,834億円から06年の2,135億円と成長中。日本の市場規模は十分に小さく、成長余地が大きいと訴えています。
 新市場のオンリーワン企業というのは、ほんとうに、その市場が思惑どおりに成長するのかな、という不安がつきまとうものですが、米国で成功しているビジネスモデルの輸入版であれば、その不安も和らぎます(日本と米国とは違いはありますが)。
 
 さらに、8月22日には、富士通グループのイントラネットと接続すると発表。

 今回のサービスを利用する技術者は専用サイト上で必要な部品を検索し、注文依頼を購買担当者に送信。担当者が承認するとチップワンに注文が届く。チップワンの保有する約十万点の電子部品は、早ければ翌日、遅くとも一週間以内に納品される。電子部品を小口で調達する場合、通常は二週間から一カ月ほどかかるという。
 まずは約二千人の開発技術者のいる富士通の川崎工場で採用。これまでチップワンは自社サイトに会員登録した技術者や購買担当者個人との取引が主だったが、今後は他の電機、家電メーカーとの契約を図り、数千万円規模の安定した収入源を確保したいとしている。(2007.8.21日経産業新聞)

 こういう提携が他企業とも続けば、いいのですが。
 
 ということで、下方修正について、内容的にも、がっかりはあります。成長スピードの伸びの鈍化が、一時的なものなのかどうか、本決算まで見てみたほうがよいと思います。しかし、上記着目理由の1)2)に変化がないのなら、成長シナリオが崩れたわけではないと思います。
 
  □ これまでの投稿 □

1回目  2007.3.16

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コメント

チップワンストップの社長様による対談模様を発見いたしました、比較的新しいものだったので、既にお読みになられていらっしゃるかもしれませんが、ご参考までに。
小生自身はわかりにくかったビジネスモデルの部分がよくわかるようになりました。やはり社長の方が直接お話になられると、その事業を理解しやすいな、と感じました。
http://www.shachotalk.jp/talk/20070316/index.html

余談ですが、小生自身は情報企画の対談を読みました。いろいろ株主を優遇しはじめてくれており、配当利回りもよくなり、なんか東証2部に昇格する可能性がありそうです。
http://www.shachotalk.jp/talk/20070904/index.html

なお、ご存知かもしれませんが、この藤沢久美の社長Talkには、フィンテックも以前出ており、今でも読むことができます。他にもたくさんの企業の話を聞くことができます。
このブログと同じく、小生には非常に勉強になります。

ごめんなさい、今試してみたところ、フィンテックは古くてもう読めないようです。1年ぐらい前のものぐらいまでは、読めるようです。

 ありがとうございました。始めて読みました。「情報企画」も、PER水準とか、いわゆる下請け受託系のソフト会社と同じような扱いとなっていますが、世間の認知度の向上が必要ですね。

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

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