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2007.03.08

不動産転売屋の財務諸表

 フィンテックの玉井社長が、「不動産転売屋」について、批判していますが、「もし、私が不動産転売屋を始めたら」を遊びでイメージしてみました。

 業務内容は簡単です。土地を購入し、転売し、キャピタルゲインを得ます。つまり、土地転がしです。
 もちろん、私に、土地の目利きなどありませんから、値上がり、値下がりの可能性は、50:50です。分かりやすくするために、諸費用はゼロとします。
 銀行が、自己資本比率20%までなら融資をしてくれるものとします。初期資金は20百万円。ですから、負債が80百万円。合計100百万円で、初年度は、土地Aを50百万円で、土地Bを50百万円で購入しました。
 土地Aは値上がりし、市場価格が60百万円に、土地Bは値下がりし、40百万円になりました。値上がりした土地Aだけを転売することとし、土地Bは塩漬けです。
 
【1年目財務諸表】
現金資産 60百万円(土地Aの売却)
土地資産 50百万円(土地B=市場価格は40百万円だが、この程度なら評価減はしない)
借金 80百万円(当初)
自己資本 30百万円(転売益10百万円が加算されたため)

 さて、自己資本が30百万円になったため、自己資本比率20%限界とすると、追加融資を受けることが可能であり、借金は合計で120百万円(追加分40百万円)に増やせます。
 
【1年目財務諸表 その後】
現金資産 100百万円(追加分40百万円)
土地資産 50百万円
借金 120百万円
自己資本 30百万円

 現金100百万円で、土地C50百万円、土地D50百万円を購入します。土地Cは値上がりし、市場価格が60百万円に、土地Dは値下がりし、40百万円になりました。値上がりした土地Cだけを転売することとし、土地Dは塩漬けです。

【2年目財務諸表】
現金資産 60百万円(土地Cの売却)
土地資産 100百万円(土地B,D=それぞれ市場価格は40百万円だが、この程度なら評価減はしない)
借金 120百万円
自己資本 40百万円(転売益10百万円が加算されたため)

 またまた、自己資本が40百万円になったため、追加融資を受けることが可能であり、自己資本比率20%限界とすると、借金は合計で160百万円(追加分40百万円)に増やせます。
 
【2年目財務諸表 その後】
現金資産 100百万円
土地資産 100百万円
借金 160百万円
自己資本 40百万円

 またまた、現金100百万円で、土地E50百万円、土地F50百万円を購入します。土地Eは値上がりし、市場価格が60百万円に、土地Fは値下がりし、40百万円になりました。値上がりした土地Eだけを転売することとし、土地Fは塩漬けです。
 
【3年目財務諸表】
現金資産 60百万円(土地Eの売却)
土地資産 150百万円(土地B,D,F=それぞれ市場価格は40百万円だが、この程度なら評価減はしない。賃貸への用途変更などといって、永遠に損益に出さないことにしましょうか。)
借金 160百万円
自己資本 50百万円(転売益10百万円が加算されたため)

 またまた、自己資本が50百万円になったため、追加融資を受けることが可能です。つまり、実際には、まったく儲かっていないのに関わらず、損益計算書上は、永遠に毎年10百万円ずつの利益を上げていくことが可能なのです。実際には、塩漬け土地は増える一方であり、少しは賃貸料が入るでしょうから、毎年、増益(利益率もアップ)となっていくでしょう。私も、いっぱしの不動産流動化業者です。
 
 3年目の財務諸表を元に、適性株価を考えます。現在の時価総額を30百万円とします。何と、PERが5でPBR0.6という、バリュー投資家が飛びつきそうな、バリュー株です。実際には、そんな価値はないのですが。
 いつ、売上げるかは、企業の判断です(売らなければ損失は表面化しにくいのです)。問題資産は、いつまでも、貸借対照表に載ったままにしておけばいいのです。バリュー投資家が、たな卸資産が増えた、といって、喜んでくれます。
 
 不動産流動化銘柄を、定量分析だけで投資すると、えらい勘違いに遭いかねません、という事例です。実際には、ここまで酷い企業は存在しないと思いますが、業界に詳しい玉井社長が「不動産の転売屋」と呼んでいるところを見ると、不動産流動化企業といっても、ピンからキリまでなのだろうと思います。

 私のリサ・パートナーズのファイルには、以前に、不動産系の雑誌から切り抜いた「R-プロジェクト(Motoazabu,Kawagoe)」「博多酒肴小路」などの記事が綴ってありますが、バリューアップ能力を持ち上げられている記事を読み返して、「転売屋」でないことを確認し、安心(笑)を得ています。アイディーユーも同様ですね。。
 一方、売買事例は記事になるのに、バリューアップ事例が、ほとんど紹介されることのない企業もあります。
 
 「私が不動産転売屋を始めたら」の例は、拙稿「フージャースコーポレーション」で取り上げたcpainvestorさんの解説を不動産流動化向けにアレンジしてみました。


 
□ 過去のバリュー投資至上主義批判シリーズ □

 銘柄をみる流れ
 売切り型ビジネス、累積型ビジネス
 バリュー投資至上主義を批判する
 低PER相場に慣れっこに

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コメント

はじめまして。いつも勉強させていただいていおります。有り難うございます。

さて、今回の記事ですが、大変参考になりました。

不動産転売屋といわれた社長は、実際、こう書かれています。
「一時期の日本では、何でもかんでも買えば儲かるというのが不動産のイメージだったらしい。しかし、けっしてそんなことはない。不動産にも「ババ」はある。下手な商売をすれば、手元にいっぱいババを抱え込んで、身動きがとれなくなってしまう場合も多い。
ところが、不動産取引はトランプ遊びと違う。どんなババでも、じっと持ち続けていればいつかは「エース」にバケてくれる。買いに失敗したと思ったら「塩漬け」にしてしまえばいい。じっと我慢していれば、いつかは必ず価値を持つ。
そこが、不動産のおもしろさなのである。」

こうした感覚やバリューアップ力などは、定量分析では計れないということでしょうね。

http://www.kajima.co.jp/news/digest/jul_2006/tokushu/toku02.htm

 moguraさん、こんにちわ。
 上記のは、たまたま事例にしやすかっただけで、実際には、不動産流動化企業の真の業績は、堅調が続くんじゃないかな、と思っています。一方、株価は、期待先行は無理で、業績後追いパターンになるんじゃないかな、と思っています。
 ただ、
 『買いに失敗したと思ったら「塩漬け」にしてしまえばいい。じっと我慢していれば、』
 というのは、株主にとってはやりきれないと思います。単に、市場が上向くのを待っているだけなら、一般の土地保有者と同じではありませんか。製造業なら、景気後退期も、新製品開発など、次の飛躍に向けて手を打っているはずです。

ご返事有り難うございます。
土地のサイクルは7年周期だそうですが、地価上昇を当てにした塩漬けだけなら、やりきれないですね。

この場合の塩漬けは、市場が上向くまでそうするという意味ではないように解釈しています(具体的にどうかといわれると、わかりません。すみません)。

また、景気後退期についての対応ですが、社長はマーケットの下落局面への対応を以下のように語っています。
「SOHOオフィス等についても、すでに他社に先行して投資物件のなかで活用しています(中略)コンテンツやオペレーションは、現在の投資戦略のためというよりは、不動産マーケットのサイクルが進展し、後半のステージに入った時、さらにはバブルが弾けてマーケットが下落局面に入った時の強力な切り札になると思って先行投資しています。これらのステージが到来した際に、マーケットで発生する需給のミスマッチングを、こういったタイプの物件やオペレーションで解決していくのです。」

株価は期待先行でなくていいです。去年の下落で懲りました。高くなり過ぎず底堅いほうが、急落時に買い増しが出来ていいです(笑)。

moguraさん、こんにちわ。
上昇時にも、下落時にも、それなりに儲けるテクがあるということですね。市況は緩やかな上昇ぐらいが、いいのかもしれませんね。

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