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2007.03.16

チップワンストップ

 日本の半導体、電子部品市場は5〜6兆円規模だそうですが、その大半は携帯電話や家電など大量生産もの向けです。しかし、その中で、少量生産のカスタマイズ製品や、開発途上,試作段階向けの中小ロット市場というのが、4〜5000億円規模であるそうです。もちろん、一般製品向けでも、(大量生産品の海外シフトを受けて)国内には多品種少量化の流れがきているそうです。

 けれども、この分野では、流通が未整備で、時には大手企業の担当者が秋葉原を探しまわるというようなことすらあるそうです。これこそ、ロングテール市場ですね。ここに進出したのが、チップワンストップです。
 
 

シリコンバレー滞在中にチップワンストップを創業。米国で知った電子部品のネット販売が日本でも成り立つと判断し、自分の裁量が生かせる「独立」の道を選んだ。(略)
 電子部品のネット販売は欧米では確立したビジネスモデルとして数百億円、数千億円規模の利益を上げている企業もあり、成功させる自信はありました。
 ただ当時、「楽天市場」なども日本では今ほど知られておらず、ネットで部品を売る事業の仕組みを取引先に理解してもらえなかった。
 そのころはネット通販すらなじみが薄い時期。商用のネット販売というモデルを理解してくれる取引先はありません。顧客はネットによる情報漏れを懸念し、「会員登録などはできません」といった反応が大半でした。それでも出資元企業の技術者らに出向してもらうなどノウハウを積み重ねていきました。
 あるとき大手部品メーカーに頼み込み、無料配布していたサンプル品を試しにネットで販売させてもらいました。すると一晩で百個を売り上げ、「今まで把握していなかった顧客を開拓することができそうだ」と評価されました。ネット通販の商用化が理解され始めたのはそれからです。初月の売り上げは十数万円だったのですが、翌月に六百万円、数カ月で数千万と増え、自分の目に狂いはなかったと確信できました。
 (「チップワンストップ社長高乗正行氏——米VBからヒント得る(起業上場私の転機)」2006.12.22 日経産業新聞)

 
 アメリカでは、国土が広く秋葉原のようなところがないこともあり、カタログやインターネット販売が普及しており、NewArkInOnという業者は売上が約875億円、Dig-keyは約755億円など、そこそこの市場が出来上がっています。ひきかえ、日本では、チップワンストップの年商(前年度)で、30億円強で、大きな競合も見当たりませんから、未開拓の広大な市場が広がっているというイメージです。さらに、電子部品から、プリント基板、工具ツール等々、横展開をかけており、成長余地はかなり広いと思います。
 現在の、取引部品メーカーは850社以上、取り扱い部品数は、550万品。メジャーな部品1万点ほどは翌日納品可で、次の5万点ほどでも3日以内でのお届けが可能、だそうです。
 このジャンルは、定価という概念がないそうですが、秋葉原よりは、安い、(とはいえ、廉価販売でもない)とのこと。
 
 半導体や電子部品というと、景気連動型というイメージで危惧していましたが、一般製品向けではないので、相対的に景気連動の波を受けにくいそうです。
 
 会員数の増加が、受注件数の増加、ひいては売上や利益の増加に直結しますが、06年12月末の会員数が、約34000名(全国の潜在的対象技術者が推定40万人)です。
 
 
-会員数受注件数受注単価
04年度13,82025,18568,337
05年度24,24545,33845,271
06年度34,05675,43041,121

 以上が、売上の9割(利益の7割)を占める電子デバイス事業の概要です。この通販事業だけでも、有望ではあるのですが、そこを基盤として、新たな事業を展開しています。つまり、単なる「販売業」ではなく、「総合支援サービス」を目指しています。
 具体的には、ソリューション事業やメディアコミュニケーション事業があります。
 
 ソリューション事業ですが、例えば、顧客の「アジア製品は安いので使いたいけれども、品質は大丈夫かな」というような躊躇に対して、電子部品の選定、調達化に関するコンサルや情報サービスの提供、部品データベースの年間閲覧権の販売などをしています。
 さらに、昨年2月に、ザインエレクトロニクス、日興アントファクトリー、と共同で、半導体などエレクトロニクス分野に投資対象を特化したベンチャーファンド「イノーヴァ一号投資事業有限責任組合」を設立しています。3社のほか、図研や中小企業基盤整備機構なども出資し、ファンド総額は32億円です。こちらのほうは、投資対象の選定に時間がかかっているようです。

 メディアコミュニケーション事業は、日本最大のエレクトロニクス技術情報紙「EE times Japan」(発行数4万強)を発行したり、業界ウエブサイト「eetimes.jp」(月間ページビュー30万件)を運営しています。無料で広告収入で成り立っています。また、エンジャパンと組んで、ここで、エンジニア向け転職情報サービスもおこなっています。
 
 こうして、見ていくと、小さすぎず大きすぎないニッチ市場、手つかずの有望市場であり、チンプへの道へ、さらに横展開がうまくいけば、もしかすると(最も良いシナリオで)ゴリラ候補となりうるのではないでしょうか。一般にキャズムはシェア20%手前にあるといわれていますが、早ければ、1年か2年で到達しそうです。
 
 業績の推移(百万円)ですが、
 

-売上高経常利益
052,06188
063,349325
07予定4,021403

 07年度の業績予想については、前提条件等も説明資料に載っていて、判断がしやすいです。期末会員数、期末受注件数が、前年度末50%弱アップ、受注単価が30000円、という前提です。
 50%アップのことですが、一般論として普及の拡大というのは、S字カーブを描くもので、10%台後半から急上昇し始めることが多いので、過大とは思いません。これまでは、口コミによる普及がメインだったのが、ダイジェスト版カタログ(紙)でプロモーションをかけていくということ。
 受注単価が下がり続けているのは、前期は大口注文の影響で単価が上がってしまっていたこと、製品数拡大によるもの、のようで、そんなものか。
 ソリューション事業やメディアコミュニケーション事業も、悪くなるイメージが浮かびません。
 懸念点としては、販管費が30%アップ増える予定であること(人員増も多い)。こういう事業は、原価や販管費割合が減っていくことが魅力なのですが、その期待は、もっと先ということでしょうか。
 今期会社予想は、会員数の伸びに左右されるので、結果として違うかもしれませんが、やや保守的のような印象があります。が、ビジネスモデル的に、固まりつつあるので、一時的に業績が低迷しても、買い場と考えられるのではないでしょうか。
 有利子負債なし。時価総額は、約65億円。
 
 私は、最近、インターネットのB to B、B to Cは、やっぱり、有望ではないか、と思い直しています。一人勝ちが起こりやすく、ゴリラ候補を探すフィールドとして。つまり、大多数は、負け組になるということです。
 
 もし、僅か、一握りの勝ち組になれたとしたら。
 
 例えば、ですが、私は、ドラッグストアで普通に買えるサプリを並べているだけのウエブ通販屋には、全く興味がありません。サプリで大切なのは、品質が信頼できる製造元、だったら、通常は、定期購入には大手の直販を使いますよね。私も、コエンザイムQ10なら、「日清ファルマ」で、買います。品揃えが豊富でも、怪しげなメーカーを含めてでは、かえって選択に不便なだけ。健康食品はロングテール市場ではないのです。そう考えると、ネットにベストマッチな事業って、それほど、多いわけでもありません。
 チップワンストップの良い点は、(他のウエブ通販と比べて)顧客の切実なニーズが背景にあることです。最大の心配事は、ライバルの出現の可能性ですが、早く突っ走ってもらいましょう。
 

 Q.ライバル会社はありますか?
 ネット上での電子部品の情報・調達では日本に敵無しです。ただし欧米の会社の上陸は脅威です。例えれば、イトーヨーカドーがまだ3店舗の状態の所に、巨大なウォルマートが上陸するぐらいパワーがあります。しかし日本の商習慣に馴染むかどうか、私は自信を持って迎え撃ちます。(トーマツTechnology Fast500 CEOの横顔 受賞企業インタビュー/2006.5.31

 
 長期前提で、購入対象としたいと思います。ただ、今は資金難なので、買い時を見極めて打診買い。成長を確かめながら、気長に追加投入していくつもりです。

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コメント

おおお(笑
私の監視先を分析して頂いて大変参考になります。

ネット関連のB to B やB to Cがチンプ企業として良いのではないか・・というのは私も同感です。楽天やヤフーなどの総合サイトより、各専門店のNo1サイトが勝ち組になるような気がしてます。

業界全体として大きく伸びるわけでない。元々存在する不動産が、証券化される過程である・・という
仮説の流動化業界に考えが似てますが、

元々、問屋を通してたのを廃止し、WEBにするだけなので
電子デバイス業界が今後大きくなるというより、スキームが
変化する過程でNo1サイトだけ大きく伸ばせるのでは・・と
思います。

そんなわけで、
MPTやチップワン、アトムリビンテック、ソネットM3
などのB to Bや 
マガシーク、ケンコーコム、ジョルダンあたりのB to C に目をつけました。非上場ではネットでの雑誌販売ポータルをやってる富士山マガジンなんてのも面白そうです。

さて、チップワンですが、IRフェアで社員と話したところ
競合については他は非上場であり、脅威に感じてないとのこと
ちゃんと調べる必要ありそうですが、シェアは既に50%ぐらいとってるとか言ってました。

競合については、私のほうで少し調べましたが
たしかに、このリンクみると他社はHPが閉鎖してるとこも
多く、チップワンに集約されつつあるのかなあと。

http://www.semiconresearch.co.jp/jpnmain/net/asp/demo/ectable.htm

最近の市場暴落により、余裕がないので
新しい先は発掘はしてますが、資金なく買えないのは私も同じです。。(笑

 らうさん、こんにちわ。
B to B、B to C、は、
【会員数拡大×取扱製品拡大×販売の深化】で見たときに、チップワンストップは、それぞれ期待ができると考えています。
「販売の深化」とは、「物の販売」から「情報の販売」や「ノウハウの販売」などへの広がりというイメージです。
 らうさん銘柄は、チンプ、ゴリラ、あるいは元気なモンキーの赤ちゃん宝庫なので、とても重宝しています(よろしく)。特に、マガシークとライスステージ。

半導体は、景気のサイクルが短いようですので、小生は敬遠しておりますが、ご指摘のとおりに影響を受けないビジネスモデルなのかもしれないと、感じました。

方向性が違いますが、手広く事業をやっていてリスクをヘッジしながら、もうしばらく景気の恩恵を受ける可能性のあるところとして、8137サンワテクノスあたりは、株価としては、ほぼ現在妥当な株価水準と見ております。

小生の見直しテーマの一つのロボットを若干扱っている会社なのですが、企業の景気と無関係に安定成長するようであれば、面白いのですが、そんなに甘くないだろうなと思いつつ、打診買いするとしても、PBR1倍近辺までもう少し株価が下がらないか、期待していたりしております。

チップワンストップのようなオンリーワン的な要素はおそらくほとんど関係ないかもしれませんが、一応同じ卸売りの中で専門商社的に分類されることになるのでしょうか。

私はコンペチ企業におりますがチップワンストップさん評判悪いですね。在庫ないとか色々聞きます。この業界は外資が強いのです。

英国のR社日本法人は1999年のビジネス開始以後日本の商慣習に対応しており数多くの大手電機メーカーと調達連携されています。売り上げもチップワン社以上あります。また米国のD社においては近年本格的に日本市場に入り込み今一番勢いがあるのではないでしょうか。こちらは日本の商慣習に対応しているとはいい難いですが実験・試作・MROで小額買う程度なのであまり気にしないUserが多いのでしょう。(金額が張る場合は口座のある商社経由で購入)いずれこの業界(B2B電子・電気部品通販)の日本市場は既に外資系勢力が強く彼らは今後更に商品・サービス拡充していくと聞きます。残念乍チップワン社のサービス内容や現在のUser評判からすると彼らに到底太刀打ちできないでしょう。既に確立した業界になりつつあります。オムロン24やエリスネットなどもありますが目立たないですし、ミスミさんは機構・メカ系通販なので少し毛色は違いますね。

チップワンの採用受けようと思うんですが面接とかどこがつぼっぽいですか?

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