« 情報企画 | トップページ | 情報企画 »

2007.02.03

フィンテック グローバル

 2回目の投稿です。昨年の信託法改正により「信託宣言(自分に信託すること)」が、今秋より可能となりました。それに先立つ信託業法改正と合わせて、この制度は、かなり便利になったと言われています(一方で、悪用の可能性も指摘されていますが)。

 で、注目していたのは、
 今時珍しくもないですが、私の職場でも、信託を活用した証券化案件があります。毎年のように、年月日や金額などの数字が違うだけで、それ以外は全く同じ案件を、その度に某信託銀行に組成してもらっています。
 事務の流れだけをみていると、今や、わざわざ高い手数料を払って、銀行に頼まずとも、自分でもできるのではないかと思えます。昨年の案件の契約書等を持ち出してきて、数字さえ書き換えれば、それで完成するように思われます。相手方も固定化してきていますし、あとは、入出金の手順とか、そういう事務連絡のたぐいです。が、それも、こちらとしては早く数字を押さえておきたかったりするので、直接に相手方と調整しています。これなら、自分たちでできる?
 
 しかし、実際にはできないのです(できたとしても、総合的に考えるとしないでしょう)。おそらく、昨年の案件の書類を、数字だけ書き換えただけで、99%以上の確率で今年も使えるのでしょう。しかし、絶対ではありません。税制はもちろんのこと、制度は随時変わりますし、判例が出たために、これまで可能だったスキームが利用不可になることもあります。
 表に出てくる契約書等の後ろには、それが制度的に可能であるという分厚い根拠があります。それを持たずして、表面の書類だけを借用することなど、怖くてできるはずがありません。
 それと、こうした証券化スキームは、資金調達のために実行されるのですが、仕組み上、一時的な「つなぎ資金」が必要なことが多いのではないかと思います。スキームは作れても、つなぎ資金のめどが立たなければ、実行できません。そういう意味で、プリンシパル業務の体制が整ったことは、非常に大きいと考えています。
 
 また、同業者が、他社のスキームを模写したとしても、やはり、その制度の裏付けを一つ一つ押さえていかなければなりませんから、結局は、それなりに手間がかかるのです。また、後述の例で書きますが、こちらで使えるスキームが、他社で使えるとは限りません(制度だけを組み合わせているのではないのです)。ただ、一度、スキームを作ってしまうと、あとは、少し改変するだけで、別のスキームを作ることは、ゼロから作り上げることに比べれば、手間がかかることではないと思います。
 詳細を書くわけにはいかないのですが、私の職場の案件など、単純なスキームにすぎません。それでも、オーダーメイドですし、ゼロから作りあげるとしたら時間がかかるとは思います。
 
 以下は、他の多くの顧客も同様ではないか、という単なる類推によるものですので、そのつもりで。
 
 一度、使ったスキームがうまくいったなら、その事業が続く限り、同じスキームを使いたくなります。そうすると、二回目、三回目と、ほとんど同じ仕事が舞い込むことになります。しかし、最初の手間と、二回目以降の手間では、ずいぶんと違うはずです。少なくとも、ゼロからスキームを作る作業は要りません。わざわざ会合を開いていたのが、電話連絡になったり、また、最初はレベルの高い担当者だったのが、二回目からは下っ端が出てきたりして、下手すると、「毎年、こういう手順で調整しているんですよ」と、こちら(客)が、教えてあげることになりかねません(現場では、業務がうまく遂行されればそれでいいので、実際には共同作業という感覚ではないでしょうか)。
 
 知的サービス業の値段は、需給に影響されます。供給側より、むしろ需要側です(職員数が倍増したから、売上も倍増、というものでもありません)。引き合いが強ければ、強気の値段設定も可能です。「忙しいけど、はっきりと断れば角が立つから」と、向こうから断ってくるように仕向けて、高い見積もりを出したのに、「それでも」と契約が成立しちゃうこともあります。
 
 前回の投稿で、フィンテックの業務を料理のレシピに例えました。同じように、続けてみます。
 
 メガバンクが販売しているのは「定番レシピ」です。それでは満足できない客が、フィンテックにレシピの作成を依頼します。
 「全ての野菜は有機で、四川料理のフルコースを。人参とピーマンは使わないでね。それと、これこれのアレルギーに気をつけて」
 すると、フィンテックは、有機野菜の生産者と値段の一つ一つを交渉、調整したり、豆板醤や調味料にアレルギー物質が使われていないか、一つ一つ確認したり、予算範囲で最高の料理レシピを作っていきます。この、確認作業が、相当の手間だと思います。しかし、いったん、レシピを作ってしまうと、その分、ルートとノウハウが蓄積されていきます。
 「前のが好評だったから、同じものを。ただし、品数を増やして」
 「今度のレシピは、広東料理で。あとは、前回と同じ」
 と、新しい依頼を受けたときには、前回よりも大幅に作業量が削減できます。別の依頼主からの注文に対して、以前のレシピがほとんどそのまま使えるかもしれません。
 究極には、客の要望ヒアリングを聞きながら、その場で、頭の中でレシピを完成していくことになります。
 以前使っていた有機農家が不作で使えない、とか、情勢は変わっていきますので、ルートを沢山持っていたりすることも大切です。レシピを作る個人的能力があれば、同じことができるというわけではありません。調達できない素材を、レシピに使うわけにはいきません。
 
 さらに、フィンテックが作るレシピには、秘伝の調味料《信用補完》が使われています。この調味料が使われていることで、高い値段設定が可能、料理の売れ行きが全く違うのです。
 
 さらに、料理人に対して材料購入資金を提供(プリンシパル業務)したり、完成した料理を大手にだけではなく、中小にも販売(FGS業務)したり、至れり尽くせりです。
 
 しかし、この体制は、やっと整ってきたばかりなのです。これまでは、レシピの相談を受けながら「証券化前の、つなぎ資金はどうしましょうかね」と客と一緒に悩んでいたのが、レシピと資金提供の相談を同時にこなすことができるようになりました。
 これまでの、(レシピ作成だけ)業務と比べると、もっと効率的に《儲かる体制になった》のです。
 
 もっとも効率的な規模がどのぐらいかは、わかりませんが、これまでは、小さすぎて、効率が悪かったことは確かだと思います。一方、メガバンクは、大きすぎて効率が悪いですよね。フィンテックは、これからが、もっとも投資妙味がある水準に近づくと思っています。
 
 私は、別の投稿で、時価総額が数十億円ぐらいが、投資妙味があると書いてきました。しかし、それは、一般論です。フィンテックの時価総額が1000億円を超えてきたといっても、成長速度と結びつけることはどうかなと思います。
 以下は、ユニクロのファーストリテイリングの経常利益と、経常利益率の推移です。経常利益が、100億円を超えてきてから成長が加速しているのがわかると思います(ちなみに株価上昇が激しいのは、H10年秋からH11年秋までです。)。業種が違いますから、事例としては今ひとつかもしれませんが、ファーストリテイリングと同様に、フィンテックは広大な市場で勝負しています。
 
 

H8.845億円7.6%
H9.855億円7.3%
H10.863億円7.6%
H11.8141億円12.8%
H12.8604億円26.4%
H13.81,032億円24.7%

 
 また、前回の投稿で、金融基幹向けシステムの情報企画を取り上げたときに、少し書きましたが、新BIS規制が地銀、信金信組を襲うのは、この4月からです。過去に、1998年の銀行貸し渋り、2002年の大手銀行のBIS対策(自己資本比率対策)がきっかけとなって、その度に、証券化商品は、普及が広がっています。フィンテックの商品の売上は、地銀向けが、見劣りがします。決算説明資料では「FGS等の債権販売体制整備が遅れているために、地方銀行の伸びが予想より低くなっております」と、言い訳されています。FGSも、本格的に動き出したようですし、そこも期待したいですね。
 
 ところで、「チャンスの哲学」読みました。フィンテックの職員の人間模様といった内容で、業務そのものではないですが、社風とかを知る上で、非常に面白いものでした。
 
   □ これまでの投稿 □

1回目 2006.11.26

« 情報企画 | トップページ | 情報企画 »

コメント

こんにちは!フィンテックの記事とってもわかりやすい説明で楽しく読ませていただきました。ユキオさんのおっしゃるとおりフィンは時価総額が大きいところで、ここからの投資妙味に欠けるが如くの話を良く耳にしますが、僕もフィンはまだ本格的に稼動すべく体制準備が整ったところと見ていまして、ここからがフィンテックのグループ力を生かした本格成長時期に入るんじゃないかと思っています。信用補完・再保険といった秘伝の調味料が最高の料理を生み出し、FGS・FXOで沢山の顧客に振舞われ喜ばれる・・楽しみですね!!

 davinciexpressさん、こんにちわ。
 低金利だと、どうしても、手数料が相対的に高く見えるので、低金利脱出後が、フィンテックの本当の舞台になると思います。まだまだ、これからです。

すみません、フィンテックは時価総額も高いし、PERも高いし、期変りによるPER低下も9月末までなくて未ださき・・だし・・などと・・daviexさんにケチをつけたのは多分私です(笑

ただ、ユニクロの例は知りませんでした。経常100億超えても急激に伸びるとこもあるのですね。ちなみに、アパレルの市場がいくらだったか、検索したらでてきましたが、

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/010608_01.html

>カジュアルは非常にニッチな市場と思われていましたが、実は6兆円規模の市場です

とのことです。

不動産ファンド業界は、パシの高塚社長説が最も現実的ですが、10年後で(私募+公募)ファンドで50兆円までいくとのことです。金子社長は5年、60兆ともっと強気です。

ただ、フィンテックの場合は、ファンドのアレンジャーとプリンシパル投資になるので、50兆の市場をそのまま当てはめるわけにいかず、アレンジャーの市場+プリンシパル投資(開発メザニン+運用メザニン?)の市場を計算し、そのうち、当社が強みがあるので、XXぐらいのシェアを取れそうだって感じのがわかるといいですねえ。

いくつかの説明会とか聞いたりしてわかってきたのですが、アレンジャー自体は専門会社の物ともいいきれなく、多くのファンドがファンド運用だけでなく、アレンジャーもやるようなので、これだけだと、拡大余地は低のかもしれません。

あと、恐らく不動産以外へ積極拡大するのと思いますが
不動産以外のストラクチャードファイナンス市場が、いくらまであるのかは調べきれてません。日本ではストラクチャード=不動産が主になってるようにみえますが、その他にも結構いろいろと当てはめることができるようで、これら市場を全部足すと、もしかしたらすごく大きいのかもしれません。

アメリカの例とか調べればでてきそうですが、玉井社長自身としてはどのぐらいの市場と読んでるのかも、個人的に聞いてみたいとこです。

やっとアプリックスの下方修正が出ましたね。
https://www.release.tdnet.info/inbs/32092070_20070209.pdf

ゆきをんさんの指摘の通り
費用の前倒しのようですね。


はやくアプゴリラが見たいです。

 らうさん、こんにちわ。フィンテックが今後、いくら順調に成長していくとしても、5年も10年も、今のような高成長率が可能なはずがありません(2倍化を10年続ければ、100兆円企業になります)。あと、2、3年のことを考えたら、外部要因よりも、フィンテック自体の要因のほうが重要かなと思います。とりあえず、玉井社長の出身母体のオリックスの時価総額3億円が目標で、市場規模は、「大きい」程度でいいのかな、と思っています。

 イザリオコゼさん、こんにちわ。アプリックスのIRは、会計上だけの理由であることが、しつこく強調されていておもしろいですね。
 ただ、私は、アプリックスは、ほとんど放置状態です。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3873/13768472

この記事へのトラックバック一覧です: フィンテック グローバル:

« 情報企画 | トップページ | 情報企画 »