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2007.01.20

銘柄をみる流れ

 不人気シリーズ弟4弾です。「定量分析」と「定性分析」の関係を文章にしておこうかな、と思いました。

 「定量分析」とは、財務諸表など、数値化された材料による分析。「定性分析」とは、事業環境やビジネスモデルなど、数値化されにくい、主観性のある材料による分析。と、しておきます。
 
 この2つについて、例えば「定量分析の結果はXX、定性分析の結果はXX、総合してXX」というように、それぞれ独立して分析できるものでしょうか。私は、違和感があります。
 
 それについては、「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本(山口 揚平著)」の中で、「因果のマトリクス」として、分析の流れを示していますが、なるほどと思い、「私なりの言葉」で修正追加も加えて、書いてみます。
 
 銘柄分析の手順は、次のとおり。
 
(a)この銘柄は、素晴らしい業績をあげている
  (過去の定量分析)。
     ↓
(b)その業績をもたらしたのは、どのような事業環境、ビジネスモデルなんだろう。
  (過去の定性分析)
       ↓
(c)その事業環境、ビジネスモデルは、将来も持続、成長するか。
  (将来の定性予想)
       ↓
(d)だったら、将来の業績も、素晴らしいだろう。
  (将来の定量予想)
       ↓
(e)その将来の企業価値を現在割引して、今の株価は割安だろうか。
  (割安度分析)

  
 このような、【a→b→c→d→e】の流れが、基本だと思います。
 (実際には、bからaに戻ったり、何度も行ったり来たり。)
 
 では、他に、どのような流れが考えられるでしょうか。
 まず、「夢見る投資家タイプ【c→d→e】」です。
 突然に、将来の定性予想から始まります。私はこれを完全否定しません。例えば、T製薬研究企業の開発中の新薬が、すごいという噂があります。真偽は知りませんが、もし、本当に、その噂が完全に事実となり、その薬の実効性が認められ、出荷開始されたなら、突然に【c→】から始まってもよいと思います。
 そこまでいかなくても、将来の市場拡大が、ほぼ確実な業界のトップ企業などは、不安もあれ、これに近いと思います。しかし、よっぽど自信がある場合です。稀です。
 
 次に、「科学的バリュー主義タイプ【a→d→e】」です。「主観が客観的事実を歪めるので、定性調査をすべきではない」とまで言い切ります。しかし、
 
(a)この銘柄は、素晴らしい業績をあげている
  (過去の定量分析)。
     ↓
(d)だったら、将来の業績も、素晴らしいだろう。
  (将来の定量予想)

 
 定性分析なしに、定量だけで、ここまで言い切れるものでしょうか。私は、全く賛同できません。かなり、不安です。
 
 しかし、これも例外があります。花王(拙稿参照)のように、(途切れたとはいえ)20年以上も、利益増を続けてきたような企業の場合であり、そのレベルに達すれば、これまで、日本経済どん底にも関係なく利益増を達成してきた企業体質なのだから、これから、事業環境が悪化しても、それ相応の結果は出すだろう、と推定できます。しかし、こういうのは、事業環境どん底を何度もくぐり抜けてきた企業にのみ、適用できる例外だと思います。
 
 よく、割安株投資に、バフェットが例に出されますが、バフェットは、「《良い株》を安く買え」と言っているのであり、「《安い株》を買え」といっているのではありません。そもそも、割安株(資産株除く)も、下方修正一つで、割高株になるのであり、割安株と言い切れるためにはそういう「期待はずれ」確率が低い《良い株》であることが条件なのです。
 ですから【c→】の部分は、私には、絶対不可欠です。
 
 また、実際に株を買うためには、事業が動き出していないと不安であり、【b→】も、大切でしょう。
 【a】は【b】を、裏付ける根拠として、重要なのです。また、【d】を、より具体的な数値にするためにも。ですから、【a】の位置づけとして、【a→b→c】が正しく、【a→d】は、乱暴すぎる、と私は考えます。
 
 「夢見る投資家タイプ【c→d→e】」が危険なのは、【c→】分析が、過大期待、夢先行、であることが多いからです。よく、PER100を超えるような株が、割高株として批判されます。しかし、その株の業績が、数年後に何十倍にもなると考えている人からすれば、それは、割安株なのです。それが間違っていたとしたなら、【→e】の部分ではなく【c→】分析が過剰期待過ぎるということのほうでしょう。
 もし、他の銘柄でも、【c→】分析が確かなものであり、絶対的自信があれば、割高株でも、かまわないと思います。もっとも、人間のする分析に「絶対」はありませんし、すでに割高な場合には、【d→e】の部分で魅力が下がりますので、実際には、手を出しにくいのです。しかし、【c→】が大きく膨らめば、【d→】も膨らみますので、【d→e】に魅力が出てくる局面は出てきます。

 
 最も危険なのは、「科学的バリュー主義タイプ【a→d→e】」です。急成長株が突然に、業績悪化発表をして、個人投資家が慌てふためいたりするのは、【b→c→】分析が、甘すぎたことが、大半だと思います。
 株価は、(資産価値を除けば)将来業績予想を元に決まります。株式投資にとって一番怖いのは、「期待はずれ」が起こることです。ですから、投資にあたっては「期待はずれ」が起きない確実性を最優先すべきです。
 
 もちろん、「科学的バリュー主義タイプ【a→d→e】」を完全否定しているわけではありません。インデックス投資では物足りないが、定性分析までは余裕がない、といった人にとっては次善の投資方法ではないでしょうか。その場合には、定性状況がばらつくほどの「多数分散投資」が不可欠と思います。ただ、このブログを読むような人は、そんな「余裕がない」人ではないと思いますので、次に進みます。
 
 さて、【b→c→】つまり、定性分析について、私のポイントとしては、「強いビジネスモデル」というミクロの面が、第一です。しかし、その背景となる「所属する市場」というマクロな面は、最初のフィルターとして無視できません。それを説明するために、市場を分類します。
(1)成長途上の市場、あるいは製品。
(2)成熟市場で、ライバル他社は不調。自社だけが好調。
(3)成熟市場だが、ライバル他社含め業界全体が好調。
(4)それ以外。
 
 そのなかで、(1)は、対象市場として有望です。ゴリラの生息地であり、イキのいいチンプやモンキーも棲んでいます。(2)も、ビジネスモデルの確かさを証明しているようなものであり、有望です。
 ただ、(3)は、とりあえず長期投資の対象外です。というのは、本当にビジネスモデルが優れているのか、単に業界の好調に引っ張られているだけなのに、それをビジネスモデルと勘違いしているのか、わかりにくいのです。成長率もあてになりません。景気循環株の場合、好況期に頑張って業績拡大を図った企業は、上がってしまった固定費のために、不況期に苦しむことが多いです。賢明な企業は、仕事を逃してシェアを下げてでも、適正な固定費の維持に努めるものだそうです。(真っ直ぐな道路では、アクセスさえ踏めば、運転技術に関係なく、いくらでもスピードが出ます。しかし、そういうドライバーほど、急カーブで激突するのです。曲がりくねった道でスピードが出せるテクニシャンなのかどうか、判断できません)。成熟市場の好調さなんて、いつまでも続かないと考えるべきです。その場合、営業CFの赤字が続いている企業は、特に危険です。
 業界が好調なだけの単なる景気循環株にしか見えない銘柄に、個人投資家が熱中し、成長が続くように盛り上がっている状況は、とても心配です。もっとも、四半期決算や月次の度に、一喜一憂して判断する中短期投資なら、有効だと思います。もちろん、本当にビジネスモデルに自信があるのなら、長期投資対象内であることは言うまでもありません。
 
 その後に、銘柄を選ぶためには、最も大切な、ミクロのビジネスモデル等の分析ですが、話が広がりすぎるので省略します。
 ただ、業績に対する《業界全体の好不調の影響度》と《ビジネスモデルの影響度》では、後者のほうが大きい銘柄ほど、長期投資に値することだけは、押さえておかなければならないポイントです。
 
 こうして、定性分析スクリーニング【→b→c→d】をかけると、個人投資家の限られた時間と能力では、あまり残りません。そこから、【d→e】でふるいにかけると、ほとんどなくなってしまいます。そこで、究極の選択です。
 
《選択肢1》PER等数値だけの【a→d→e】定量スクリーニングで残った中から、【→b→c】の、ましなものを選ぶ。
《選択肢2》【→b→c→d】を最重視し、【d→e】は、甘くする。
 
 私は、「期待はずれ」が起こらない確実性を最重視するのであれば、【→b→c→d】を最重視し、そのためには、優先順位として割安性をやや損なってもしょうがないのではないか、と考えます。
 いうまでもなく、定性面を無視して「割安株」と「割高株」を比較すれば、前者の結果が、当然に良いでしょう。しかし、例えば、「定性結果は良いが定量結果は悪い」株と、「定量結果は良いが定性結果は悪い」株のような比較ではどうなるでしょう。「定性は要らない」と主張する科学的な投資家は、こういう比較をしたことがあるのでしょうか。この部分では、思いつきの域を出ない「非科学的」なことを言っているのではないでしょうか。
 
 「割安性」を重視するあまり、定性分析を軽視し、結果として、割高銘柄となってしまうよりは、多少は割高でも「期待はずれ」が起こらない確実性を最優先するべきなのです。もちろん、単純に「割高株を買え」と言っているのではありません。
 株価は、将来予想の数字を元に決まりますから、最後は「定量」に行き着きます。しかし、将来の定量予想を、ふらふらさせないために、「定性分析」を中心にして【a→b→c→d→e】分析をしつくして、ぱっと見は、割高に見えても、真の割安株であることを確認してから、買わなければなりません。
 
 
  □ 過去の投稿「バリュー投資至上主義批判シリーズ」 □
 
 売切り型ビジネス、累積型ビジネス
 バリュー投資至上主義を批判する
 低PER相場に慣れっこに

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コメント

>定性分析なしに、定量だけで、ここまで言い切れるものでしょうか
これ、耳がいたいです(^^;

私が過去にやってきたブログは全部これです。
過去の実績の判断だけじゃ不安なので、経営者の中期経営計画から見た割安度、今期の四半期の進捗、棚卸資産の推移、長期金利の動き(経営者は金利何%まで見ているか)、賃料相場の動き、物件価格の動き、ファンド残高の履歴と今後の計画、ファンドのフィー率、含み益はいくらと経営者がいっているか・・流動化の市場(今15兆で10年で50兆と経営者は見ている)などの数字も整理してます。言われてしまうと、全部定量分析です。

定性分析ができるようになるには、私からみると、ある程度の想像力も必要そうで、色々なビジネスのモデルケースなども目にしておかないといけなそうです。
ゆきをんさんは、色々なビジネスのことを書いてらっしゃるので相当勉強されてるのかなと感心しています。

私の場合、流動化しかしらないので流動化が行き詰った場合、暫くの間、投資対象の選定に困る期間が発生しそうです。。(今後の課題です)

ブログみて個人的に面白そうな印象受けたのが、リゾートトラストですね。このブログはいろいろと勉強になりますので、これからもここで勉強させて頂きます。

 らうさん、こんにちわ。
 らうさんのブログは、参考にさせていただいています。
 
 リゾートトラストは、そこそこの成長率があり、マンションデベロッパーと同じような形態ながら、営業CFを黒字で回しているところが良いと思っています(爆発力には欠けますが)。マンションデベロッパーの皆さんも、工夫次第で真似できると思うのですが。

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