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2007.01.03

ユニバーサルソリューションシステムズ

 「成長株で億万長者」ブログで、ユニバーサルソリューションシステムズ(以下、「USS」)や、ジャストプランニング(以下、「JP」)について、取り上げられていましたので、さわりだけ、便乗して、書いてみます。

 まず、一般的な会計の話。

 商品を80円で仕入れて、100円で消費者に販売する、100円ショップをイメージします。損益計算書とは、売上に対して、費用がどれだけかかったか(費用収益対応の原則)、を示す計算書ですから、仕入れが、去年であろうが、一昨年であろうが、損益計算書上には、売上と同年度に計上されます。それまでは、棚卸資産として、貸借対照表に載っています。つまり、仕入れた次の日に販売しても、仕入れて5年間も倉庫に眠ったまま、6年度に販売しても、売上100円で売上原価80円の利益率20%(販管費など省略)ということになります。効率に関しては、回転率で見なければわかりません。
 
 ところが、「これは、売れそうにないなあ」という不良在庫があった場合、特別損失を出すこととします。売上がないのに、費用だけ80円がマイナスとなります。ところが、会計上は、損失として処理したのに、実際には倉庫に眠っていて、次の年度に、バーゲンセールで、80円で売れてしまったとします。実際には80円で仕入れて、80円で販売したのですから、儲けはゼロなのですが、昨年度に80円の費用を計上したため、今年、売上原価を計上するわけには行きません(昨年度と二重になりますから)。つまり、売上高80円、売上原価0円、で、今年度は、80円の儲けということになります。
 普通に売っていたら、売上高100円、利益20円
 今回の場合、売上高80円、利益80円
 
 特別損失とか出した翌期は、損益計算書上は、V字回復とか、ありがちなのです。
 特別損失ほどではなくても、今四半期で利益率が下がったために、次の期で、利益率が上がった、なんてこともあります。ここで、書きたかったのは、費用の前倒し、利益先送り、の、さわりです。
 
 さて、ここからは、ソフトウエア会社に話をすすめます。
 ソフトも、当然に、原価はあります。制作にあたった人件費とか、外注の委託費とか、ですね。仮に240円としましょう(話を単純にするために研究開発費はゼロとします)。この240円は、いったん、貸借対照表の無形固定資産に計上されます(前述100円ショップの棚卸資産と同じように)。そして、1年目に100円、2年目に100円、3年目に100円、と売れるとします。では、売上原価はどうしたらいいでしょう。いったん、ソフト資産に載っている240円を3で割って、80円とし、3年に渡って、原価とするのです(なぜ、3年で割ったか、については、わかりやすい例としただけで、話が長くなるので、省略します)。そうすると、1年目から、3年目まで、売上高100円、原価80円、利益20円、となります。ところが、4年目も同じように100円が売れたとしましょう(ソフトは、いくらでもコピー可能です)。しかし、貸借対照表上のソフト資産(棚卸資産のようなもの)は、会計上ゼロとなっており、損益計算書上の原価は、ゼロとなります。つまり、売上高100円、利益100円となるのです。
 実際には、ソフトは陳腐化するので改良が必要であり、2年目以降もソフト開発者は作業をしており、こんなシンプルではなく、ごちゃごちゃしていると思いますが。
 
 JPの利益率が、年々、向上しているのは、上記の例の4年目以降状態だからです。同業のUSSは、貸借対照表にソフト資産は、そこそこ載っています。
 
 もっとも、JPとUSSは、顧客ターゲットが微妙に異なります。USSは、「値段は高くてもいいから、自社仕様にしっかり作り込んでね」という中堅以上の客が相手。JPは「多少のカスタマイズは必要としても、値段を安くお願い」という中小以下が相手です。
 主に、USSは、受託制作です。ただ、通常の受託では、著作権(?)が、依頼主に渡ってしまいます。しかし、USSは、開発費の一部を負担することによって、別の案件に転用可能な著作権を手元に残します。そのことで、通常の受託開発よりも、今は、費用がかかっています。けれども、同じような案件が、次に出てきたときに、前に使用したモジュールを、転用できますので、安く制作できます。その一方で、受託開発並みの売上はとれます。
 これが、USSの強みです。あと、開発期間ですね。
 
 これについて、USS山口社長のインタビューより、
 

 具体的な事例をあげましょう。今年の1月にあるお客様からの提案依頼があり、我々ともう1社のコンペだったのですが、結局コンペにはなりませんでした。なぜならお客様の希望は、今年の4月にサービスインしてほしい、ということだったのです。

---年初に、その年の4月にサービスインのご希望ですか!
はい、我々はあたり前にその年の4月だと思っていたんですが、もう1社は翌年の4月でスケジュールを提示していました。開発期間が1年長くなれば、費用も1年分かかるわけです。期間もコストも、我々の比ではありません。

---それはそうですよね。
結局、コンペらしいコンペもなく、我々が受注。ベース部分を効率的に使うようにデザインすることで、1カ月半程度でサービスインができました。
(IBM特集記事より)

 この共通モジュール戦略は、シンプレクス・テクノロジーが、金融業界向けで成功している方法を、外食、介護業界向けに、適用しているという感じです。
 なぜ、他企業が同じような戦略がとれないのかについては、私も、ほんの少しだけ、この業界の人と交流がありますが、なんとなくわかります。体質が古く、現場の人のモチベーションが下がりがち。ITといっても、「ネット業界」などとは、かなり違うようです。どちらかというと、下請け孫請け構造の、「土木業界」に類似します。
 
 大和総研の上野真氏のレポート(2006.11.28)で、ソフト業界について、「引きこもり経営の打破がカギ」として次のように書かれています。
 

 当セクタは他社の製品や経営手法を見る機会がない業種である。マスコミや管轄官庁による大同高所、長期的視点からの分析提言も限られ、経営者は「世間知らず」となり易い。既に当業界は「好況下の淘汰の時代」を迎えているが、淘汰される側ほど経営者の危機感が薄い。


 簡単に、USSとJPについて書いてきましたが、「飲食店向けASP会社」と一括りにしていますが、この両社は、ビジネスモデル的に別ジャンルではないか、と思っています。
 今、読んでいる本に「ライフサイクルイノベーション(ジェフリームーア著)」があるのですが、ここで、「ビジネスの世界を二分する根本的な区分がある」とし、「コンプレックスシステム」と「ボリュームオペレーション」の二者をあげています。USSは前者、JPは後者だと思います。どちらが良い悪い、ということではなく、とるべき戦略が違うということです(詳しくは、後日)。
 
 USSについて、今だけの定量分析では、当然に見劣りします(その見劣りする状態ですら、今は、PER18程度です)。しかし、今、費用が余分にかかっているだけ、将来の費用軽減につながる、というイメージで、書いてみました。USSは、個別対応部分が大きいので、JPほど、費用軽減とはいかないでしょうが、利益は、より高いはずです。

 会計の説明は、わかりやすさのための単純化をしています。個別の紹介はまた、次の機会に。

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コメント

私も同様の感想を持ってます。
もっと安く買いたいのであまりブログには書かないで下さい(笑)

1つ気になるのは本業の飲食店向けシステムの拡販ですね。
ベンチャーリンク繋がりの取引先がほとんどなので、新事業だけでなくこっちにも力を入れて欲しいです。人数が少ないのでそこまでは手が回らないのかもしれませんが。

ゆきおんさん
あけましておめでとうございます。
いつも明快な分析、読ませていただいております。
私はJPが好みです。いちばんシンプルなので(笑)。「ボリュームオペレーション」を指向していて、それをわかってやっているところもいいですね。

さていきなり質問です(笑)。
JPは今期、テレウェイブを仮想フランチャイズ本部にみたてたシステムを開発中ですが、これは無形固定資産にいつどのように計上されるのでしょうか? 完成した時点でしょうか? 私は数字に関しては、かなりアバウトなので、こういう細かいところがわかりません…

本年もよろしくお願いいたします。

 AKIさん、こんにちわ。
 確かにそう思います。また、同業顧客の2社目、3社目には費用が安くなるわけで、対象業界を広げるより、同じ業界で顧客数を増やすほうが、《短期的》には、よっぽど利益が増えると思います。将来を考えると、早く対象業界を広げたほうがいいでしょうし、そのへんの判断は外部からはわかりにくいですが。

 ケンタ++さん、こんにちわ。
 現金出費したものは、必ず、その日のうちに、出費額全額を、貸借対照表の「資産」か、損益計算書の「費用」のどちらかに計上しなければなりませんので、人件費の場合には「給料日」とかに、どちらかに計上されます。今年の費用なら、損益計算書に。来年度以降の費用なら、いったん、「資産」に、という感じです。開発途上なら、「資産」でも「ソフトウエア仮勘定」とかいう名称になりますが、同じことです。
 テレウエイブには、「ほんと、ちゃんと頑張ってよ!」という感じです。
 

同業比較、興味深く拝見しています。

私自身IT業界に人脈があるわけではないので思い込みなのですが、
「特定顧客向けにカスタマイズすれば利益率は上がるが、打合わせにかかる手間やクレーム発生(カスタマイズしたのに満足のいく仕上がりになっていない等)というリスクが増える為、カスタマイズの少ないグループウェア (サイボウズ等)やJPのまかせてネットなどのほうが手間をかけずに拡販できる」

くらいの認識でした。
ですが…

USSのやり方も素晴らしいですね。
(受託開発でも自社の他の案件に応用できるよう著作権を手元に残すという部分が非常に興味深いです。)
参考になります。
アルファクスについては多少ネット検索で調べていたんですが、USSは四季報コメントくらいしかみてませんでした。

またの更新、期待しております。

 ボウズ応援投資家さん、こんにちわ。
 (重複分は削除しておきました)
 言われるとおりで、「ハイタッチな売り込み」と「ロータッチの流通」という違ったビジネスモデルだと思います(実際には、サイボウズも、JPも、サービスも良いみたいですが。)
 だとすれば、顧客は「大規模」方向、よりも「小規模」方向のほうが、特性を活かせるし、強力ライバルも居ないし、市場開拓余地も大きいと思います。ただ、あんまり零細になると、違った意味で、ハイタッチが必要なので、テレウエイブには頑張って欲しいと思います。

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