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2007.01.14

アイディーユー

 2回目の投稿です。年末の投稿で書いたように、年明けに、アイディーユー株の多くを売却しました。しかし、いずれ買い戻す予定であり、私が、アイディーユーの将来にネガティブになったということではありません。

 今回は、事業をもう少し、見てみます。
 アイディーユーの事業区分は、「マザーズオークション関連事業」と「戦略コンサル事業」に大別されます。
 その2つに分けて、3ヶ月毎(累計ではなく)の損益を書き出してみました。
 

- オークション戦略コンサル
17年1△163△15
17年2113856
17年3△129△345
17年45551,156
18年1749117
18年2△5441,398
18年3△589△7
18年4△3844,826
19年1△365252

 
 マザオク事業に関しては、17年度第4四半期頃には、損益が黒字転換していました。しかし、17年秋に中期経営計画を発表し、株価は暴騰します。一方、それ以降は、毎四半期、赤字が続いています。しかし、これは、こじんまりとマザオクをすることをやめ、大きく発展するために費用を注ぎ込むこととしたためです。
 一方の戦略コンサル事業に関しては、収益の多くが第4四半期、次いで第2四半期に偏っています。しかし、前年同期比で見ると、例外なく、全ての四半期で大きく成長していることがわかります。
 つまり、ここまでの業績に関しては「順調」と、片付けてよいと思います。
 
 上記の表にすれば、1、3四半期は数字が悪いことは、誰にでも予想できるのに、この1月の第1四半期決算の翌日の株価は、狼狽売りで10%ダウン、昨夏の第3四半期の翌日はストップ安比例配分、その翌日までで21%ダウンでした。この様子だと、今夏の第3四半期にも、同じことが起きそうですね。
 
 次に、アイディーユーの現在の企業価値を考えてみます。
 まず、「財産価値」ですが、貸借対照表上の資産は842億円です。そのうち、マザオク出展用のたな卸資産(いわゆるマザオクファンド)583億円をはじめ、流動化用途のもの、現金、投資有価証券、などを拾い上げると770億円程度になります。
 一方、負債総額は547億円ですので、差し引き223億円。慎重に考えて、2割を割り引いて180億円を財産価値とします(本当は、含み益があるでしょうから、2割増にしたいぐらいです)。
 次に事業価値を見てみます。
 前述のマザオクファンド583億円(この3ヶ月で43億円増加)は、投資委員会で想定IRR(内部収益率)15%以上を目途に投資決定したものだそうです。発表資料によると、大阪市内オフィスビル62億円(想定IRR68%)とか、店舗ビル44億円(想定IRR37%)とか、並んでいます。数字が高いのは、アイディーユーが得意なバリューアップ(大阪江戸堀の築70年の老朽化ビルでは、レトロな外観を活かした複合ビルとして再生し、賃料収入を5倍に高めたそうです)を施してから流動化するためでしょう。
 ただ、かなり慎重に考えて、年利回り8%とします。すると、年に47億円。事業価値は、10倍化(PER16相当)で470億円となります。
 ここまでで、財産価値180億円、事業価値470億円、あわせて650億円の企業価値となり、現在の時価総額490億円を大きく上回っています。
 実際には、現在の収益の大半は、自己不動産投資を除いた開発案件なのですが、上記の数字は、この貢献を全く無視し、販管費等の経費を埋めるだけで、損益ゼロ、としたものです。また、マザオクの将来性も含まれていません。つまり、現在の収益源も、将来の収益源も、その双方を完全に無視しても、現状は、十分にお買い得、です。
 
 では、なぜ、アイディーユー株は「割高」と言われるのでしょう。それは、マザオク事業が(中期経営計画以降)大きな赤字を出しているからです。私は、それは「先行投資」だと考えていますが、単なる消耗経費と考える人にとっては「お荷物」なのでしょう。
 たしかに、経営陣は、経営資源をマザオクに集中投下することを公言しており、もし、マザオクに将来がないのなら、いくらでも費用を吸い取っていく蟻地獄になるでしょう。ですから、上記の数字は、今後も、マザオク発展に注ぎ込む資金はとりあえず大丈夫、という意味で受け取るべきだと思います(これは大事なことで、新市場創出企業が挫折する要因の大半は、資金不足です)。
 
 で、マザオクですが、決算説明会で池添社長は、昨年度は「空中戦」で戦った。今年は「地上戦」で戦う、と説明しました。
 「空中戦」とは、八千草薫さん、などを登用したCMのことですね。とりあえず、認知度は高まりました。「地上戦」とは?
 
 アイディーユーは、今年度、「MOTHER’S AUCTION」セミナーを年間約50回、開催するほか、全宅連を通じての不動産オークション勉強会も開催するそうです。これが、地上戦の一つですね。「全宅連」とは?
 
 アイディーユーは、昨年11月27日に、社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と「不動産オークションの利用と普及に努めることを目的とした基本協定」を結びました。
 全宅連は、全国の宅地建物取引業者13万業者のうち11万弱を擁する不動産業界の国内最大の業界団体です。いちおう、不動産オークションの、全宅連公認基準を制定し、それを満たした場合は全て公認するということとなっていますが、そもそも、このような公益的団体が、一民間団体と排他的契約を結ぶことは考えにくいことであって、公認基準のハードルを上げることで、事実上の独占性を確保できるのではないかと思います。株主総会では、ハードルが高くて他社は追随できないだろうと話されたそうです。万が一、競合他社が、同様に基準を満たしたとしても、それはそれで良いのではないでしょうか。大切なのは、不動産オークション自体がメジャーになるかどうかということです。
 不動産オークションがキャズムを渡れば、ボーリングレーンでピンが次々に倒れるようにニッチ市場が生まれます。例えば、オークション向けのローン(売り主への決済までのつなぎ融資、買い主へのローン)。アイディーユーは、メリルリンチ日本証券と共同で「マザーズ・ローン・サービス」を設立しています。周到なこと。
 
 話は戻して、全宅連は、アイディーユーと、官民を委員とした研究会を立ち上げるということですので、かなり前進と思います。というのは、研究会を立ち上げて、官民委員にお願いして報告まで出してもらいながら、結果は知らん、なんてことは全宅連としても、できないと思います。民間企業では朝令暮改は日常的ですが、公益団体の理事会決定は、重いですから。会員に対して、働きかけをするでしょう。協定の中でも「全宅連は傘下会員業者に対し、必要に応じて不動産オークションの利用を教育」とあります。
 また、全宅連公認となれば、財務省も国有財産売却に、堂々と、マザオクを使える環境が整備されることになります(これは、今は夢にすぎませんが)。国有財産を大々的に売却するのには、それなりの公平性、透明性がなければ、今どき、説明がつかないでしょう。
 
 結局のところ、このような道筋が経つためであれば、費用は最大限使ってもらいたいと思います。私のような投資家にとっては、そのためなら、今年度の利益は、ゼロでも良いのです。四半期毎の数字に一喜一憂する必要は、もとより、ありません。
 
 今でも、少数は売らずに保有していますが、残りは、その道筋が見えてくるのかどうかが、買い戻しの基準となります。
 
  □ これまでの投稿 □

1回目 2006.09.09

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コメント

IDUがキャズムを渡ったとして、投資をするタイミングはボーリングレーン時になるのでしょうか?それともトルネード時になるのでしょうか?

こんにちは
中古車オークションがもはや市場として成り立っているのを見ると、いずれ不動産でも同じことが起こり、それを牛耳ることができそうなIDUは期待できそうです。
ただ、マザオクはどうか?月次で進捗状況を見ていても、場当たり的なものであまり参考にならないのかもしれませんね。
短期思考の強い相場では、月次もリスクになりえますし。

 AKIさん、こんにちわ。
 想像にすぎませんが、実利主義者が、マザオクに参加し始めたら、そのまま、一気にトルネードに行くような気がします(次のコメントに)。
 ただ、いつ買うべきか、については、資金に限りがあるし、他の株との関係もあり、悩むと思います。今の値段でも、年初の売り値との差額で、十分に美味しい値段ですし。

 理系リーマンさん、こんにちわ。
 中古車と違い、不動産は世界に一つしか存在せず、価格は需給で決まります。買い手候補が多いほど、高値になります。《売り手》は常に、「もっと高値の買い手がいるのではないか」と疑心暗鬼です。私が不動産を売るなら、不動産屋の言い値(買価格)に、素直に判を押すのではなく、「ダメで元々。試しにマザオクに出展してください。それで売れなかったら、その値で売ります」と、申し入れます。そういうケースが増えてくれば、不動産屋は、客を逃すか、マザオク代理店(年基本料42万円)になるか、二者択一です。
 不動産屋は、物件情報量が収益に直結します。今、マザオクに盛り上がりが欠けるのは、情報量が少ないからです。情報が増えれば、マザオク代理店であるほうが、売り側の客にも、買い側の客にも、アピールできるようになります。実利指向の不動産屋は、今、様子を見ている段階ですが、一定量を超えると、堰を崩すように、マザオク代理店になると思います。私の妄想です。

 コメントに余分なことを書いてしまいました。
 値ごろ感を、《買い基準》にしては、失敗しますね。

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