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2006.11.26

フィンテック グローバル

 フィンテックは、企業からのオーダーメイドで金融商品を製造する会社です。複雑で多様化する企業のニーズに、銀行の画一的な金融商品だけでは対応しきれないという空白にビジネスチャンスを見いだし、成長を続けてきました。

 世間一般の分類では、「投資銀行」ということになりますが、
 あえて、区別して例えるなら、「料理人」といっても、「レシピを考える人」が、フィンテックであり、「良い素材を見いだし料理を作る人」がアセットマネージャーズリサパートナーズという感じになります(!?)。
 
 現況を、フィンテックの発表文書から引用します。

 あらゆる産業界あらゆる規模の企業において、このストラクチャードファイナンスへのニーズは非常に高まっています。
 ところがわが国においては、この金融サービスの提供者が絶対的に不足しています。理由は、専門業務経験者の不足であったり、法的整備などのインフラ拡充によって急激に高まったニーズに既存金融機関の内部体制が追いついていないことなどがあげられます。サービス供給不足の結果として、ニーズを満たされる企業はごく一部の優良大企業のみで、資金調達などのニーズがもっとも高い中堅企業・中小企業は無視されているのが現状です。

 これらニーズを満たされていない企業群は、いつまで待てばいいのでしょうか。既存金融機関はその巨大さゆえに多くの不採算間接部門を抱えています。全組織構成員のうち数%の少数部隊がこれら間接費用を吸収しつつサービス供給するためには、案件の規模が大きいか非常に利益率が高いかのどちらかでなくてはなりません。数億円からせいぜい20〜30億円の小額ロットで、かつ適正なコストによる組成ニーズを持つ企業群はまったく出口の見えないトンネルの中です。

 また、既存の金融機関において、これら希少性の高い人材は、より実入りの良い外資系投資銀行へ流出(転職)傾向にあり、外資系投資銀行では収益効率を最も重要視するので、ますますお先真っ暗な状態となります。日本にはこのストラクチャードファイナンスという金融サービスを供給する「ファイナンシャル・サービス・インダストリー」という業界が欧米のようには発達していないのです。(略)
 
 私たちはまさに、日本における本格的な「ファイナンシャル・サービス・インダストリー」形成の一翼を担う専門的な投資銀行として、あるいは常に先端的革新的な金融技術を身につけた「匠」の技をふるう金融サービス製造業として、日本の金融業界にしっかりとした根を張っていきたいと思います。(2006年9月期 決算説明会資料より)


 
 少し長くなりましたが、フィンテックが目指している、最先端の金融技術を駆使して利用者のニーズに適した商品を製造する《金融界の専門ブティック》が、市場で求められていることがわかります。あまりにも、証券化などのファイナンスのニーズが高いので、メガバンクでは、高度専門家集団は超大型案件だけに取り組んでいる以外は、既製品で対応するので手一杯という感じのようです。
 なんか、小難しいですが、個人投資家に人気のある不動産業界とも、大きな関連があります。不動産開発企業は、ご存知のように、増益を続けていますが、営業CFが真っ赤、財務CFが真っ黒、というように、資金繰りニーズが高く、フィンテックの主要顧客です。フィンテックの商品は、従来型の「青田買い」開発型証券化とは異なる、出口を特定しないタイプです。これが、デベロッパーにもたらすメリットなどについては、こちらのインタビューが、面白いです。
  
 具体的に、業務を観ていきます。
 「アレンジャー業務」とは、金融商品を企画し製造する業務のこと、「プリンシパル業務」とは、その金融商品に自ら投資する業務のこと、です。そこから派生して、その商品のリスクを分離する
「再保険保証」業務とか、「その他投資銀行業務」としてその商品をさらに投資家市場へ販売したり、とか、広がっています。
 高度な知識とアイデアと余力があれば、商品ラインアップは、いくらでも派生して広がるわけで、この6月にはプリンシパル業務の一部としてカードのファクタリング(カード加盟店の資金繰り)事業も開始していますし、前掲の決算資料でも「新規顧客の獲得を抑制してまでリソースを投入した結果、(略)相当数のR&D(研究開発)をこなしており、今後の加速的な商品化を企図いたします。」と書いてあります。R&D途上の新プロダクツの具体例も、説明会資料に書いてありました(次のとおり)。
 
◯ 運輸会社:卸問屋が担っていた分野への進出という物流産業構造変革のための資金システム構築(具体的には倉庫物流センターの内製化・在庫ファイナンス・掛売決裁ファイナンス)
◯ 半導体製造設備メーカー:設備納入から検収完了(売上げ)までの長期間にわたる「売上げ未計上=売掛債権未成立」状態の是正
◯ 警備会社:現金売上集荷サービスの収益効率のアップ(具体的には『毎日集荷』を『10日毎集荷』へ変更するための立替金ファイナンスシステムの構築)
◯ 電設会社:地上デジタル放送開始に対応するための工事代金決裁のタイムラグの是正(具体的には顧客からの売掛金ファクタリングシステムの構築)

 新商品も、ソフトウエアと同じで、作成するまでが大変で、同じものを複製(?)して使えますので、今後、利益率は、上がるでしょう。

「全ての家庭の主婦を楽にするために当社の製品を全家庭に!」という大家電メーカーの向こうを張って、「全産業分野にストラクチャードファイナンスの効用を!」。この仕事を為すのが人材です。実はこれ「無茶苦茶おもしろいんです」。当社に転職してくる人の殆どが金融マンです。一般的に金融マンの実態は「仕事はきつくてつまらないけど給与がいいからプライベートを楽しみ我慢する」という感じだと思います。銀行でできなかったこと、面白い金融をする為にみんな来てくれるんですね。「タマイノキモチ」2006.10.02より

 ありきたりの定番料理を黙々と作らされるのではなく、レシピを考える楽しさが、職員にとっての、この会社の魅力ということですね。
 「ストラクチャードファイナンス」と称していても、ありきたりの仕組みの事務処理をするだけの企業もありますから、その質が問題となるのですが、フィンテックの特徴は、「再保険保証」業務に関連する「信用補完」です。作成した金融商品に対して、資金提供者に、より有利な条件で販売するためには、S&P、ムーディーズなどの格付け機関から、より高い格付けを取得することが、効果的なのですが、そのために、金融商品のリスクの一部を保険会社に引き受けさせることが信用補完です。また、リスクを切り離すことで、これまでは、証券化が不可能だった案件まで、商品化が可能になります。
 そのために、フィンテックは、欧州JLTリスクソリューションズ社との間で、合弁日本法人FCRSを設立したほか、今年に入って、信用補完供与能力の内製化をはかり、Stellar Capital AGをスイスに設立、また、再保険会社であるCrane Reinsurance Limitedを英国領バミューダに設立しています。自社グループ内で、信用補完供与能力を保有することで、組成に要する時間も短縮することができるようになり、様々な案件に対処可能となっています。06年度のアレンジメント商品についても、2割以上が、信用補完付となっています。
 
 さて、業績です。
 下の表は、決算資料から、抜き出したものです。資料は、個々の子会社毎になっていたので、業務別に再編集しました。どうしても、数字が合わないところはそのままにしていますので、細かい数字は気にせずに(笑)、大勢だけ見てください。業務毎の数字は売上高の推移と予測で、一番右だけが経常利益です。
 

年度アレンジメントプリンシパルその他再保険保証合計経常利益
04.99063080945462
05.92,1502575602,4631,571
06.94,6742,7962744768,2315,581
07.9(予)6,0005,9002242,28314,3869,012
08.9(予)7,00011,4003373,30321,91015,014
 
 
 すごい伸びですね。アレンジメント中心だったものが、今年あたりから、派生して広がりを見せていることがわかります。予測の根拠は説明資料に書いてありますが、あまり無理がないように思います。
 自己投資については、まとまった資金がいるので、こういった企業には常に、増資の不安があるのですが、フィンテックも、昨年末と今春に試みています。ただ、現在は、つなぎ融資を受けているとはいえ、580億円の流動資産がありますし、プリンシパル事業の予測の想定が、「400億円を8%で回す」ということですので、既存株主に大きな不利益をもたらす資金調達はしないと思います。ちなみに、8%というのは昨期並の数字ということですが、今後は、設立したばかりのフィンテックグローバル証券を使って、自己投資した債券を証券化し、販売、ぐるぐる回転させて利ざやを稼ぐことが可能となりますので、いずれ、もっと上積みが期待できるようになるでしょう(将来的に15%で回すことが目標だということです)。ほかの数字も、保守的な印象さえあります。
 このように、一口に自己投資と言っても、アセットやリサよりは、リスクが低めです。
 
 最後に気になるのは、今後の金利上昇局面ではどうかということです。それについては、玉井社長が述べています。
 一般事業法人の方々も、かつてそうだったように事業の維持拡大に必要とする資金には「コストがかかる」ということに気づかれるようになる。M&Aなどの資金は多種多様なリスクが存在し当然金融コストも高くつく。よって慎重に事業シナジーなどを検証しリスクを精査しなくてはならない・・・良い循環があちこちで始まると思います。
 ストラクチャードファイナンスの本質はリスクマネジメントです。顧客がリスクを充分に認識しその回避軽減策を求めてこられることが根源的なニーズです。リスクを認識してそれを「恐れるキモチ」が我々のマーケットです。
「タマイノキモチ」2006.09.08より

 長くなるので、詳細は本文を参照してください。要は、金利上昇局面でこそ、真価が発揮できるということですね。
 これまでは、メガバンクからの紹介案件も多かったようですが、これからは、かち合うことも増えてくるかもしれません。しかし、市場への人材供給が限られている一方、需要は当面は増え続けると考えられますので、まだまだ、勢いは止まらないのではないかと期待しています。
 
 こうして見ていくと、成長予想がかなり高いわりには、リスクが低いことがわかります。業績の《リスク×リターン》期待では、私の中では、【フィンテック > リサ > アセット】となっています。しかし、相対的にリスクの高いアセットは、その分、一番、割安ですので、三社の株価水準比較は、なかなか、微妙なのですが、現在、フィンテックの今期予想PERは「24」です(これから上方修正もあるでしょう)。既に、保有しているものの、追加決定。冬のボーナスの使い道は、ここに決まりました。

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