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2006.10.31

損益と営業循環

 企業分析についてですが、例えば、ROAを例にとりますと、「ROAが高い。良い企業だ」では、分析とは呼べません。それは、単なる確認です。ROAが高いというだけでは、なぜ、良い企業なのかわかりません。「なぜ、ROAが高いのか、原因は?」を探るのが分析です。

 さて、ROAについて、
 ROA(利益/総資産)の内容を探るためには、分解が必要です。
 ROA=総資産回転率 x 売上高利益率、という分解が、普通ですが、その手前に、
 
 「総資産」を「流動資産」「固定資産」に分解することを考えます。「営業循環が良好か」と「投資に対するリターンが良いか」の2つの視点に分解するわけです。「営業循環」とは、流動資産の範囲で各経営資源が、ぐるぐる循環していることを言います。つまり、「現金」が、物やサービスに形を変えて、また、利益(損失)を伴って、「現金」となる、以下のような循環のことです。

 現金100
  ↓ (a)
 棚卸資産100(名称は様々)
  ↓ (b) 利益が20%とする
 売掛金120
  ↓ (c) 
 現金120

 これを会計伝票処理で書くと、次のようになります(税金などを省略して簡略化しています。)
 
(a)  棚卸資産(流動資産)100 / 現金(流動資産)100

(b) 売上原価(損益計算書)100 / 棚卸資産(流動資産)100
  売掛金(流動資産)120 / 売上高(損益計算書)120
  
(c) 現金(流動資産)120 / 売掛金(流動資産)120

 このように、固定資産を除く経営資源が、流動資産内で循環しているのですが、(b)の時点で、損益計算書を生みます。損益計算書とは、営業循環の中で生み出されるものなのです。このことがわかれば、貸借対照表の流動資産の状態に着目すれば、将来の損益計算書が予想できるということもわかります。
 
 棚卸資産が最も直近将来ですが、売掛金の回収が良いかとか、現金が無駄に遊んでいないかとか、それぞれに分解して、検討します。棚卸資産の比率が大きいと、回転率が高くなることにつながりやすいです。それと、利益率を掛け算したものが、ROAの状況に反映されているのです。

 ただ、棚卸資産が多ければ、将来に単純に売上高が増えるというわけではありません。衣料品販売や、住宅販売などの、見込み生産の場合には、不良在庫になって循環が滞る可能性もあります。棚卸資産が同額で変化するのは、売上原価であって、売上高ではありません。不良在庫になれば、利益率も回転率も下がってしまうのです。
 
 次に、固定資産のほうですが、こちらは循環しているわけではないので、個別にリターンを測ることとなります。こちらについては、私は、ハイテク株投資を敬遠していることもあり、あまり、実用経験はありません。
 
 「よくわかるキャッシュフロー経営(林聡著 )」の中で、著者は、キャッシュの流れを、水の流れに例えて、三態に変化すると述べています。
 固体(固定資産)、液体(流動資産)、気体(費用)の、3つです。液体が固まると(不良在庫)、循環不良を起こします。無駄に気体となって、消えてしまうこともあります。しかし、固体の中で、上手に循環させて、上手に蒸発させると、それ以上の雨となって、戻ってくるというわけです。
 貸借対照表の【資産】と、損益計算書の【費用】は、同類。(拙稿「儲けのサイクル」参照)。私も最初は、なんのことだか、わかりませんでしたが、これがわかれば、一挙に、他の事柄もすらすら、わかってきました。
 会計は、人類の歴史的な発明の一つだと、アインシュタインが述べているそうですが、私もそう思います。貸借対照表と損益計算書の関わりなど、ほんとうに、うまくできているなあと、感心します。

 □ 過去の投稿「損益を考えるシリーズ」 □
 
 損益とキャッシュフロー
 

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