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2006.09.03

ミクシィ

 本当は、ミクシィそのものよりも、SNS業界に興味があります。しかし、せっかく上場ということで目論見書が出てきましたのでざっくりと見てみます。
 ん、ミクシィの財務諸表って、なかなかいい数字です。

 借入金がゼロ。売上げ原価率が5%以下です。しかも、原価の半分以上を占めるのがサーバのラック賃貸料です。販管費を合わせても980百万円で、公表500万会員で割ると、一人当たりのコストが、何と、1.96円、となります。安いのでは。
 
 収益に目を転じますと、会費は原則無料で、広告費から収入を得ています。しかし、私はこれに、異論があります。
 だって、そうですよね。東京ディズニーランドが「入場料を無料にして、看板広告代で儲けることにします」なんてことにしたら、どうなるでしょう。ディズニーランドは、時間を持て余した若者で満杯になって、全然楽しい場ではなくなります。今は、料金がバリアになって、快適な場を保っているのです。
 そもそも、ソーシャルネットワーキングとは、「インターネットの中に、秩序ある、顔の見える、安心な、ネット社会を創る」という壮大なビジョンなのではないでしょうか。どれだけの人が、会費が無料であることを期待しているでしょう。大切なのは、秩序と安心です。
 例えば、芦屋の高級住宅地では、異質者の転入を防ぐために、自治会費が、X百万円だと聞きます。庶民の感覚では自治会費なんて安ければいいという物ですが、ここでは、高いことに役割があります。
 また、会費の課金には、もっとメリットがあります。決済手続きのため、会員の個人情報をつかみ、成り済ましや、匿名の無法者をブロックできるのです。もし、入会契約書上に「中で知り得た個人情報を暴露するなどの無頼を働いたときには、法外な賠償請求をします」と一文を入れておけば、決済口座を握られている無頼者も無茶はできません。無頼者を簡単に入会させておいて、いくらパトロールに力を入れたって、だめです。
 
 だとすれば、どのぐらいの会費料金設定が適当でしょうか。私は、日本に百万人以上もいる億万長者こそ、安心ニーズは高いですから、ここに絞って、高い値段設定で、会員数を絞ったほうがいいと思いますが、まあ、そういうことはさておき、最低ラインとして、月3000円程度ぐらいではないでしょうか。
 
 会費導入で会員数が半減して、250万人程度になったとして、【250万人x月3000円x12ヶ月=900億円/年】となります。コストのほうは、会員数減少ですが、入会チェックに手間もかかりますし、今決算の2倍で20億円とすると、880億円の経常利益/年。現在、予定されている初値から時価総額を2000億円とすると、PER=4という激安株価になります。おおざっぱですが、違う計算をしても、だいたいは、こんなものです。
 DeNAが、モバオク会費を有料としたことで、思ったより会員は減少せず、利益は、前年度比400%増加ということとなったことを考えれば、起こりうるシナリオと思います。
 
 さらに、こんな方策はどうでしょうか。(妄想モード突入です)
 ホリエモンがライブドアの株価を数百円にして、実現しようとしていたアイデアをパクります。会員を、自動的に株主にするのです。具体的には、会費を月に1000円としておいて、会員持株会を作り、会員は、毎月2000円を積み立てることを強制します。会員からすれば、月に3000円の出費ですから、同じことです。ただ、SNSの運営がうまくいけば、株価が上がるので、より良いSNSを作ろうという会員の動機付けとなるのです。
 さらに良いことに、運営者から見ると、会費なら収益で(費用引き後)税金が40%もかかりますが、株の購入積み立てなら、増資ですから、税金がかからないのです。極論すれば、月に会費ゼロ、全額を株の積み立て代金とすれば、運営は万年赤字で税金は払わなくてすみます。形式的には、どんどん増資をして、どんどん食いつぶすという形になりますが、実態は、会員がSNSにお金を預けているのと同じことなのです。そのお金の運用方法ですが、ん。そもそも、ミクシィって、お金を使う予定があまりなさそうですよね?なぜ、上場するの。
 
 妄想が、あらぬ方向に行ってしまいましたが、ユーザーが、SNSに求めているのは、過剰なサービスではありません。安心です。「夜警ネット社会」を構築してほしいのです。それが、確保されたうえで、オプションとしてサービスをしたらいいでしょう。
 ごく普通の人たちは、趣味や話題が一致する人たちと普通にコミュニケーションを楽しみたいのです。違う世界で、違う自分になりたかったりします。ネット上では善人(逆あり)だったりするのです。
 過剰な商業主義は、逆に、しらけるのです。
 
 私は、SNSの可能性は大きいと思います。もし、明確なビジョンとそれに向けた施策が打ち出されることが約束されるのなら、今のミクシィの株価は、割安といえないこともありません。(あっという間に、PER一桁があり得ますから)
 しかし、そうでないなら、割高バブル株でしかありません。
 
 この業界から、すぐれた経営者が出てくるのを、期待して待ちたいと考えています。
 
 最後に、私の体験を書きます。
 90年代初め頃、パソコン通信文化の華やかりし頃です。私は、パソコン購入と同時に、商用サービスのNifty Serveに入りました。当時は、商用と言っても、インフラを提供するだけで、その中の小さなコミュニティであるフォーラムは、ボランティア的に運営されていました。参加者は、数十万人はいたと思いますが、急拡大中であり、私は、ずぶの初心者だったのに、一年後には、古株になっていました。やがて、あるフォーラムのシスオペ(運営管理責任者)を任され、メンバーの入会、退会、ルール作り、適用、いろいろとやらせていただきました。そのフォーラムの、参加総数は数百人で、オフ会にまで出てくるようなアクティブな人(顔と名前が一致するような人)は、百名弱でした。議論が白熱することもありましたけど、険悪になれば、仲裁者が電話をかけてきて(笑)、まあまあ、と、仲直りを口実に飲み会を、と、牧歌的なものでした。
 でも、あるとき、メンバーの中にとんでもない人がいて、オフ会で知った他の人の個人情報の、それもかなりプライベートなことを、ネット上で暴露したのです。退会?いや、結局は仲裁者がいて、収まったのですが、荒れれば確実に、すーっと、メンバーが大量に消えていきました。個々のアクセスの推移がわかっていたので、本当に残念でした。秩序と安心へのニーズが、全ての利便性に優先するのです。
 その後、インターネットが普及し始め、私は、これから、バラ色のネット社会がくるのかな、と期待しましたが、実際にやってきたのは、匿名社会、無法者が跋扈する無秩序社会でした。しかし、やっぱり、今は、過渡期のような気がします。18世紀のアメリカ西部が、荒くれガンマンが、暴れ回る無法地帯から、少しずつ、市民社会へと変貌していったように、21世紀の新大陸も、そうなっていくのではないでしょうか。そこで、出てくるのは、グーグルに代表される新しい経済原理であり、旧来の感覚で、SNSの将来を推し量ることはできないのではないかなと思うのです。
 
 ミクシィそのものは、どこか、ずれていると思います。広告代でまかなうという発想は、ずれています。ヤフーの二番煎じです。しかし、この業界には、何か、大きな変化をもたらすものを期待してしまうのです。
 

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