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2006.09.15

リゾートトラスト

 団塊の世代が大量退職を迎えます。
 時間がたっぷり余りますので短期間あたふたの海外旅行だけではなく、国内でゆったりというニーズも増えてくるかもしれません。ということで、都市圏から、車で1〜2時間アクセス圏での分譲型リゾートホテルを手がけているリゾートトラストを取り上げてみます。

 分譲型ホテルとは、分譲マンションのようにホテル客室(会員権)を販売します。主力商品の、XIV(エクシブ〜ローマ数字で「14」の意味)では、1つの客室を14人のオーナーの共有として不動産所有権登記しています。オーナーは、年間26日(365日/14)が、自分のものとして使えます、が、自分の使いたいときに使えなかったら、という心配は大丈夫。他の客室のオーナーと権利を交換できるタイムシェアリングシステムとなっています。例えば、私の職場は、エクシブXXの法人オーナーです。しかし、エクシブ鳴門とか、エクシブ初島とか、日本中のオーナーとの交換で、利用することができます(提携先の世界3700リゾートと交換できます)。
 つまり、規模が大きくなるほど、ホテル数が増えるほど、オーナーにとって魅力が増すのです。リゾートトラストは、33のホテル、この分野で60%以上(2002年)のシェアを持っている、チンプ企業です。

 私の利用した印象では、本物の高級ではないけれども、高級ぽく見せるのが上手という印象です。結構、気に入っていて、利用しています。ただ、夏の混んでいるとき以外には泊まったことはないので、イメージは限られていますが。

 もちろん、オーナーが、部屋を掃除したり料理したりはできませんので、リゾートトラストがホテル管理やレストラン経営をしています。ホテル別の消費単価も開示されていますが、少しずつあがってきているようです(景気連動ですかね)。営業利益比率で見ると、客室(会員権)分譲が6割、ホテルレストランが2割、残りゴルフ場とかが2割ぐらいの比率です。オーナーは元を取るために、必ず宿泊にやってきますので、客室分譲さえ順調に進めば、ホテルレストラン運営も、安定します。
 今、分譲に出されているエクシブ鳴門で見てみると、一番安いのが、44平米で698万円(運営管理費10.2万円/年)、高いのが、120平米で2822万円(同23.9万円/年)、このうち、不動産代金が半分で、あとは、登録料というよくわからない代金となっています。一部屋を14人に売ること、立地が市街地から離れていること、等を考えると、かなり「高い」気がします。それを裏付けるように、(全事業の費用ですが)売上げ原価率は21%で、相当に安い。逆に、販管費66%で、人件費比率がかなり高い、のですが、これは、400人の営業マンが、オーナーのプライドをくすぐるようにアフターフォローのお世話に、努めているそうです。
 

「このマーケッティングのやり方では、会員の方の満足度(CS)が高くなければ、ご友人の紹介もしていただけません。ですから、会員の皆様のCSをいかに高めるかが、経営の根幹に関わる問題となります。
 営業マンは地域の会員の方たちを回り、ご要望を伺って、参考になるような話は直接、企画会議に出してきます。(略)
 その結果、お友達を連れて行った場合も、特別扱いされているということで、オーナーとしてのステイタスを感じられます。ゲストの方たちもかえって、「自分もやっぱりオーナーになりたいな」という気持ちになって、販売促進にもつながるのです。
 やっぱりお金を払ってオーナーになっていただいているわけですから、普通のホテルのように「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」で終わりでは、ダメなんですね(社長インタビューより FinancialJapan2005.2月号)」

 じゃ、財務分析を軽く。
 先に述べたように、客室分譲の正否が、他事業を左右します。
 客室分譲については、マンション分譲が、強いていえば、似ていますので、18決算で比較してみます。

 

-売上営業利益率
リゾートトラスト(他事業除く)26,41020.2%
フージャース29,91316.9%
大京(単独)296,1946.0%

 あのフージャースよりも、良い利益率です。お金持ち相手の、ぼったくり商売ですから、比べるのが間違っていたのでしょうか。(事業ごとの原価率が記載されていなかったので省きましたが、全体から推測すると、原価率では格段に違います。が、上述したように販管費、特に人件費の差があり、利益率が近づいています)。それよりも特筆は、下記の表にあるように、営業CFが、ここ数年は、いろんな要因で落ち込んでいましたが、それでもプラスで回っていることです。

  

-売上経常利益営業CFROE会員数
H1565,6897,0892,68316.14%90,488
H1671,5177,9375,74616.41%93,880
H1774,1818,9657,08615.25%99,838
H1882,63510,89411,44211.34%103,030

 ここは、財務がすぐれたビジネスモデルとなっています。
 まず、オーナーへの販売ですが、開業前の契約の場合では、契約時に60%の代金を受け取り、竣工時には100%を受領済み。全体でも、開業2-3年で販売を終えるそうです。はやめ早めにお金が入ることが、資金繰りをかなり楽にします。損益計算書に載るより、早ければ2年前に現金が入っていて、負債に載ります(なぜ、「将来の収益」が負債なのかは、拙稿「儲けのサイクル」の応用で考えてください。)。ですから、損益計算書上より、実際は成長が進んでいます。
 つぎ、私が、感心するのは、施設の共有部分などの相互利用契約に基づいて、オーナーから受け取る「預かり保証金」です。これは、オーナーから、無利息で借金しているのと同じことなのです。貸借対象表上は、負債比率は80%もあります。しかし、その6割が、この無利息の「預かり保証金」なのです。私は、拙稿「株主のための株主資本比率」で書いたとおり、負債が多いほうがいいという考えですが、無利息なら最高です。
 こういう不動産系の企業って、お金が先に出ていって、入ってくるのは後、というのが常態なのです。しかし、ここは、逆になっています。「こういう業界だからね。しかたないよ」ではなく、知恵が大切だということだと思います。

 次に成長性ですが、会社側は、5年で利益倍増という、このブログで取り上げた企業としては、ゆっくりな成長を予定しています。供給計画と実施は、着々とこなしていますので、販売ですね。近年は、高級化路線を追求し、2008年には、「東京ベイコートクラブ ホテル&スパリゾート」を、東京お台場に開業を予定しています。あと2年ありますが、17%が売れています。住居や職場から近いリゾート、というコンセプトが受け入れられるかどうか、一つの注目点です。それも含め、契約状況などの開示が、丁寧にされていますので、こういう分析に長けたような人なら、取っつきやすいのではないでしょうか。
 もっと、先のこととしては、セカンドハウス需要がどれぐらいなのか、わかりません。現在のオーナーは、法人が1/3、個人が2/3で、個人オーナーの平均年齢は60歳、平均資産は約1億円、年収は2000万円から3000万円で、個人事業主が多いそうです。新規会員の8割は、既存会員から誘われて、1、2度、利用したあとに購入するそうです。今後も、こういうプチ金持ち層に、退職金の使い道を迷っている団塊退職リーマンリッチ層を加えて、という感じですが、毎年1つずつのエクシブ開業ですから、しばらくは大丈夫な感じもします。会社資料によると、2001年末のリゾートクラブ会員市場は、北米が165万人、日本は30万人にすぎないのだとのことです。法人も、儲かってくれば、税金対策のために、福利厚生として、買ってくるケースも増えるかもしれません。
 リゾートトラストが、2009年以降の主力事業と位置づけているのが、ハイメディックという施設によるメディカル事業です。山中湖や大阪に続いて、今秋には東大病院の中に、ハイメディックをオープン予定です。15年連続で全米ベストホスピタルランキング1位となったジョンズホプキンス病院の国際統治機関と日本初の業務提携を実現したんだそうです。個人的には、ここまでやるか、という印象ですが、お金持ちは、不老長寿好きですし。

 今は10万人強のオーナー会員(法人含む)ですが、プチ金持ちの人脈で会員を増やし、いろんな宿泊型のサービスを提供する、なかなか、おもしろいんではないでしょうか。何しろ、年に最大26回も宿泊に来てくれるという、美味しい会員なのです。今も、会員の中でゴルフ、テニス、ダンス、写真、グルメなどの倶楽部もつくって、活動をしているそうですが、会員からは、もっと、会員相互の交流活動を企画してくれという要望が強いそうです。
 財務分析とは、こういう金銭換算のできない「資産」も、貸借対照表に載っているイメージでおこなわなければ、まったく不十分だと思います。形式的なスクリーニングでは、出てこないのです。
 私が、ここの企業を調べ始めたのは、T&Gの投稿を書いていて、「ホテル業界ってどうなんだろう」って、思ったことがきっかけでした。しかし、リゾートトラストは、ホテル業界というのは、不適切な気がします(ホテルレストラン運営そのものは、2割のウエイトしかありません)。意識して、都市圏の近郊に建てるという戦略から、セカンドハウス業界(及びオーナーの金持ち会員組織)とか、そういう新しいジャンルのような気がします。
 私が、この企業を評価するのは、みかけの成長力とか、そういうことではありません。思うに、かつて、リゾートホテルというのはバブルの象徴であり、この15年、「まだ、そんな時代遅れの商売をやっているのか」という世間の目だったのではないでしょうか。しかし、そんな中を、新しいビジネスモデルで、道を開いてきたわけです。この企業には、誰もが魅力を感じなくなっていた古い市場が、新しい市場に見えたのです。こういう企業は、次にも、新しい市場を創造する可能性があります。創造するというより、古い市場を作り替えるといったところでしょうか。団塊世代時間余りの時代に、少し、期待するものがあります。
 
 最後に、軽く締めます。
 お金持ちネットワークという「資産」は、もっと活かせます。独力では余裕がなくとも、他企業と提携するという手もあります。
 もし、私が経営者なら、ミクシィでの投稿でも書きましたが、SNSを始めます。団塊退職リーマンリッチ層は、退職して毎日が暇なんですから、パソコンぐらい始めますよ。また、会社と切れて、新しい友人関係をさがし始めたりもするでしょう。SNSに、ぴったりではないでしょうか。そして、経営者である私は、SNSで行き交う会話をこっそり読んで(笑)、「なるほど、プチ金持ちには今、こういうニーズがあるのか」って、新しい事業につなげます。最後は、いつもどおりの妄想モードでした。

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