フージャースコーポレーション
個人投資家に人気の企業で、私も良い企業だと思います。ここ数年の、70%近い経常利益の伸びと連動する株価上昇は、株主に多くのリターンを与えてきました。
難点は、マンション業界に所属していることですね。ここは、典型的な「モンキーの群れ」業界です。他の業界でフージャーズと似ているのは、ユニクロのファステリや、ラウンドワン、T&Gなどで、凡庸な経営者が揃っている業界に、突然に優秀な経営者が現れたときに、ぐいぐいと業績を伸ばすんです。しかし、やがて、模倣モンキーが現れて、差別化ができなくなってしまうんです。「女性の視点」なんて、参入障壁なんてほどのものではないです。
もっとも、市場は十分に大きいですから、怖いのは、むしろ景気のほうです。景気悪化は、まず、住宅市場から始まることが多いのです。
マンション業界は今、好調な企業が多いです。今、アイディーユーのマザーズオークションでは、せっかく出品準備をしているのに、どんどん先に売れてしまって、出品できなくなってしまうケースが多発しているそうです。それが逆に怖いところで、山高ければ、谷深し。過度に強気の企業が、供給過剰を引き起こし、不況の一番バッターとなりそうな。企業数が多すぎて、コントロールできません。土地の仕入れから販売までの時間差の長さが、対応を困難にさせるのではないでしょうか(青田売りという手もありますが、)。
フージャーズは、優秀な企業だと思います。ただ、業界の荒波に逆らうことはできません。首都圏最大手の長谷工でも、シェア20%弱で、誰も需給をコントロールできません。今、この業界にしては成長率が高すぎる企業が、ちらほらあることが不安にさせます。
団塊ジュニアの塊が、金利上昇懸念に急き立てられて、前倒し的に不相応なローンを組んでマンションを買っている、というケースが私の周りに多いです。買うべき人は、かなり買っており、金利があがる社会で、今のペースが続くのでしょうか
このように将来は読めないところから、常に、短期業績しか株価は織り込むことができず、PERは常に低いです。いくら成長率が高くなろうとも、PER水準が大きく訂正されることはないでしょう。
PER水準が訂正されるのは、「地上げ屋と思われていた不動産流動化企業が、金融ビジネスであった」とか「冠婚葬祭屋にすぎないと思われていたハウスウエディングが、認知された」とか、新しくて評価の定まらない業界のことであって、マンション業界は、既に、評価が定着しているんです。
98年頃、マンション業界にゴールドクレストという企業が彗星のように現れて、バリュー投資家の人気を集め、経営者は絶賛されました。株価上昇率は、年間1位だったこともあります。しかし、ブームも一過性。長年の投資家の多くは、マンション業界への投資の怖さを知っています。
もしかすると、マンション不況に突入しても、フージャースだけ好調を維持できるかもしれません。だからといって、市場は、マンション業界をひとくくりでしか観ないでしょう。 モンキー企業への投資は、常に、景気とにらめっこです。業績が下がる前に、株価は下がり始めますから注意が必要です。おそらく、住宅市況は、しばらく、相当の好況でしょう。しかし、株価は、先取りします。
ネガティブなことを書いてしまいましたが、業界が問題なのであって、良い企業であることは確かなので、住宅不況下での対応を見てみたいという気持ちもあります。けれども、景気敏感株であることは、避けられないので。
今ひとつ、この銘柄にのめり込んでいる、ブロガーさん達に共鳴できないのは、関西に住んでいるからでしょうか。
楽観的なことも書いてみます。私の意見の前提には、マイホーム購入は一生に一回きり、という思い込みがあります。しかし、もっと質の良い住宅が、もっと手軽に購入できるなら、みんなはいくらでも、家を買い替えるのであり、住宅好況は、いくらでも拡大します。そういう時代がくるのであれば、いくらでも応援したい。