« 株主のための株主資本比率考 | トップページ | バリュー投資至上主義を批判する »

2006.08.14

アプリックス

 テクノロジー企業は、常に、新技術開発競争が激化しており、開発費がかさみ利益を圧縮、華やかだが、株主は報われないというイメージです。モンキー企業は、そのとおりだと思います。
 しかし、ゴリラ企業は違います。初期の研究開発費の会計前倒し処理で、利益は少なく見えますが、それは参入障壁を作っているのです。
 つまり、テクノロジー業界ほど、ゴリラを捕獲する、絶好の狩り場なのです。

 アプリックスは、携帯電話のミドルウエアなどを作る企業です。近年、マクロプロセッサの性能の大幅向上により、これまで、ハードウエアで実現していた機能をソフトウエアで実現することが可能になり、携帯電話、デジタル家電などでは、ソフト比率が、どんどん高まっています。こうした組み込みソフトウエアの業界は、標準規格が共有の乱世となるのか、一社が主導権を握るのか、まだ不確かですが、もし後者なら、アプリックスが一番手です。
 もし、この業界のマイクロソフトとなることができるのなら、投資魅力はあまりにも大きいので、私は、コネクトなど複数に少しずつ打診買いをしてきましたが、アプリックスに一本化することを決めました。
 
 携帯端末メーカーは、最初はJAVAのエンジンを自社開発してきましたが、開発コストに耐えかねて、次々と外部調達に切り替えています。アプリックスは、そのうち、国内過半を制し、海外勢も、サムスンやモトローラなどとも契約をしています。さらに、携帯電話にとどまらず、デジタルカメラやDVDプレイヤーなど、家電にも使われ始めています。
 
 まだ、不確実とはいえ、アプリックスはゴリラへの道を歩んでいます。
 もし、この分野でゴリラになれば、周辺分野も侵略し放題です。
 例えば、インテルは、パソコンのCPUを押さえた後、CPUにFPUの機能を加えました。FPUメーカーはインテルのチップの上で動くことを前提にしていただけに、太刀打ちできません。さらに、グラフィック、通信、いろいろと機能を加えるたびに、それら専門で食べてきたメーカーは脱落していきました。
 
 時価総額は、800億円程度(18.8)。携帯チップ界のインテルであるクアルコム(米国)が6兆円程度ですから、「最良」のシナリオでは同程度までの上昇も、不可能ではありません。
 
 会計を見ると、ドコモに第三者割り当てをしたおかげで現預金が170億円もあります。固定負債はほとんどなし。赤字が続いていますが、暖簾代であり、ペーパー上のことです。キャッシュフローは問題ありません。
 
 ただ、残念なことに、私は技術屋ではないので、この企業を十分に理解できません。そういうわけで、投資金額も、それなりです。
 四半期決算では、ときどき、転けてくれますので、投資チャンスは、まだまだありそうです。相当に下がる場面があると思います。
 確信が持てない人は、ACCESSと、両方買いという手もあります。

 最後に会計の話題です。
 会計には費用収益対応の原則というのがあります。収益と費用の因果関係をはっきりさせるために、収益と費用の年度を同じくするというものです。例えば、3年後に完成するソフトウエアの開発のための支出が今年にあるとします。しかし、収益は3年後です。ですから、今年の支出が、損益計算書の費用となるのは、3年後なのです。
 しかし、研究開発費については、収益に直結するとは言いがたいことから、この適用外であり、今年度中に費用とせねばなりません。つまり、同じように見える今年度の支出であっても、「研究開発費」なのか「開発費」なのかによって、今年の費用となったり、次年度以降の費用となったりするのです。費用が変われば、利益も変わります。「利益」は、会社の見解にすぎないのですね。
 そして、アプリックスのことですが、当初、「開発費」として、次年度以降の費用と見込まれていた人件費4億円が、「研究開発費」であると監査法人にみられ、今年度の費用となるようです。つまり、下方修正の可能性あり、になったのです。逆に海外の子会社では、額はしれているものの「研究開発費」が「開発費」となったようです。
 現金支出もやっていることも一緒です。ただ、見解が変わることで、費用しいては利益額が変わり、下方修正になったり上方修正になったりすることがあるのです。
 私が、PERよりもキャッシュフローを重視するのは、そんなところもあるからです。

 もう一度、アプリックスの研究開発費についてですが、内容的には、レゴのようなモジュール化等であり、今後の開発費用を大きく軽減する研究開発です。製薬会社のような、ものになるかならないか、わからないようなものとは性質が違います。
 研究開発費は、もともと、「費用の前倒し」「利益先送り」傾向があるものですが、アプリックスの場合は、それが顕著だと考えます。当面の利益の少なさに、惑わされる必要はありません。

« 株主のための株主資本比率考 | トップページ | バリュー投資至上主義を批判する »