ゴリラ企業の破壊力
普通の成長企業(元気なモンキー)と、新創造市場の盟主たるゴリラ企業の違いを、年代風に説明します。
車でもテレビでもパソコンでも、新しい技術が社会に浸透していくとき、その普及率は必ず、「S字カーブ」を描きます。最初はゆっくりと、そして、どんどんと加速していき、そして、少しずつ減速していくというコースです。
このことを「ゴリラゲーム〜株式投資の黄金律」では、次のように5つの消費者タイプを用いて説明しています。
(1)マニア(新しい物好き)
(2)進歩派(他者を出し抜きたい)
(3)実利主義者(群れから離れるな)
(4)保守派
(5)懐疑派
順を追って説明します。
新しい技術はまず、(1)マニアによって試されます。
次に、他者を出し抜くために常に社会や技術の動向に目を光らせている(2)進歩派の人たちに受け入れられて、初期市場が生まれます。
ですが、次の関門である(3)実利主義者は、「新しいことをして失敗したくない」と、新技術導入に慎重です。つまり、(2)と(3)の間にキャズム(深い溝)があります。
キャズムを渡ると、ボーリングレーンが待っています。つまり、実利主義者達に少しずつ受け入れられていく過程で、ボーリングのピンが次々と倒れるように、ニッチ市場が次々と生まれるのです(パソコンが普及すれば、アプリケーションソフトの市場が生まれるように)。こうして認知が進み、実利主義者達が、「新しいことをして、失うものより得られるものが大きい」と考え始めると、「皆に遅れたくない」と殺到するようになります。こうして、トルネードが起こり、「S字カーブ」を駆け登ることになります。
このあたりで、誰の目にも、どこがゴリラ企業なのかが明らかになります。ゴリラ企業は、「供給サイドの規模の経済」だけでなく「需要サイドの規模の経済(参照)」にも支えられて発展します。例えば、皆が、ワードを使っているのに、一太郎の文書が送られてくると困りますよね。こうして、需要者サイドが、「勝ち組に乗れ」と殺到するのです。さらに、ニッチ市場の企業達も、勝ち組を支えます。規格が様々でいつ廃れるかわからなければ、安心して、商品開発ができません。心情的にはマックを支えたくても、ウインドウズに乗らざるを得なくなるのです。
こうして儲かった利益を、ゴリラは、投資に注ぎ込み、供給サイドの規模の経済面からも、有利に事を進めます。需要供給の両面から、皆が勝者を祭り上げていくのです。これを、ダブルワミーと言います。
トルネードが暴れ狂った後、市場は落ち着き始め、メインストリート(安定期)に入ります。大衆市場となり、「S字カーブ」も減速し始めるのですが、この市場の盟主たるゴリラ企業は、その限りではありません。業界存続の心配も、マーケットシェアの心配もなくなったので、マージンシェア(利益率)の拡大に入るからです。
「初心者にも優しく」などと、見かけだけの改良で、(4)保守派の取り込みを始めます。少しの改良で、新しい利益を獲得します。保守派は、新しいことを覚えるのがおっくうなので、これまで、新技術に抵抗してきました。しかし、いったん覚えたからには、今度は、最も強いゴリラの支持者になります。
ここまでくると、スイッチングコストが高すぎて、誰も、ゴリラから離れようとしません。果敢なライバルが、現れたとしても、ゴリラは標準を握っているので、少し標準を変えるだけで、ライバルに壊滅的な打撃を与えることができます。
さらに、ニッチ市場への侵略を開始します。マイクロソフトがOSを押さえた後に、ワープロや表計算に乗り出したように。ゴリラは、かつて、自分を支えてくれたニッチ市場のモンキー達の、もっとも美味しいところを、かっさらっていくのです。
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さて、ここで、大切なのは、どの段階でゴリラ企業への投資を開始するかということだと思いますが、著者と私の見解は違います。
ゴリラ企業は、市場そのものと誕生、成長を共にしますので、最初は、「S字カーブ」の左下、つまり、成長率は低いのです。高PERから始まって、低PER好業績株へと成長するのです。
割安成長株に固執する人は、「PERが高い割に、成長率は低いのね」と、ゴリラは避けて、モンキー企業を選択しがちです(以前の私)。
そのため、「ゴリラが強そう」というだけの単純な素人投資家に、負けてしまうのです(以前の私)。
話は戻して、いつ投資するか、ですが、私は、状況次第としか言えません。
しかし、早くとも、ボーリングレーンの最中でしょう。