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2006.08.11

「なぜ、この人たちは金持ちになったのか」トマス.スタンリー

 題名はチープですが、内容はすばらしい。
 現代版の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」といって良いでしょう。
 マックス.ウエイバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は、「なぜ、西欧だけが世界に先駆けて、資本主義を得て豊かになったか」を論証した古典的名著です。簡単にいえば、宗教改革の結果に生じた西欧市民の生活スタイルの変化、つまり、仕事においては勤勉を、生活においては質素を、実践した結果としての豊かさ、だというのです。
 これが現代においても、まったく生きていることを、実証したのが本著です。

著者は、1371名の大金持ちを調査し、分析した結果、「金持ち」の生活スタイルが、一般に思われているのとは大きく違うことを明らかにしました。一般に、「金持ち」とは、派手な衣装に身を包み、贅沢三昧な生活を過ごしている人種だと思われています。しかし、実際に贅沢三昧な生活をしている人たちの多くは、収入も多いが支出も多く、借金漬けのひとたちだというのです。
 実際の「豊かさ(資産)」を手にしている金持ちの実像は、質素で安上がりな生活を自ら好み、仕事好きで汗水たらして働いているような人たちだといいます。なるほど。

 筆者は、福祉の世界に深く関わっていた時期がありますので、最低水準以下の生活をしていると認定され生活保護を受給している人たちの生活に深く関わったことがありますが、生活保護を受けている人たちの金遣いの荒さは、尋常ではありません。ご飯を作るのがめんどくさいといって、すぐにコンビニやファミレスで用を足し、歩くのがしんどいといって、すぐにタクシーにのる。生活保護受給理由の多くを占めるのが「病気」ですが、このほとんどは、怠惰やぐうたらから生じる節制不足が原因じゃないかと思います。

 
 豊かさをもたらす支出と、浪費に過ぎない支出があります。浪費を、豊かさと勘違いしている人と、貧しさの現れと考える人、価値観の違いが、貧乏人と金持ちの分水嶺だと思います。
 例として。ひとつの傾向として、金持ちは、休日を、(スポーツクラブに入っている)子供の試合や、お稽古ごとの発表会などに費やすことが多く、安上がり、であるのに比べ、貧乏人は、金のかかる消費型のレジャーを好む、とあります。何をするにもお金がかかるのが、貧乏人のライフスタイルであり、安上がりなのが金持ちのライフスタイルだといいます。
 

 金持ちと貧乏人の分水嶺は、内面的なものなのです。

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