歪みも裁定もない株式市場では
株式市場は短期的には非合理的だが、長期的には合理的だと考えられています。もし、「需給」「過度の楽観と悲観」「情報認識不足」などの、非合理性が、全くなかったら、例えば、市場参加者のすべてが、冷静沈着、頭脳明晰なスーパーコンピューターだったら、どうなるでしょうか。
市場の歪みは存在せず、裁定取引がない株式市場では、割高株も割安株もありません。割高となった瞬間に売られ、割安になった瞬間に変われ、即座に、割安割高は解消します。全ての情報に、予測的中確率が乗じられ、株価に織り込まれています。高PER株には、それだけの成長が、低PER株にはそれだけの停滞が織り込まれています。
もし、予測どおりに企業の成長があるなら、企業の株価には上下の変動が全くないはずです。株価が変わるのは、予測と結果、あるいは予測自身が変わるときだけ。
なのでしょうか?
違います。
違うことがわかると、テクニカル投資(移動線とのさや取り)や、バリュー投資(ファンダ価格とのさや取り)と異なった、株式投資の別の面が見えてきます。テクニカル投資も、バリュー投資も、市場の非合理性を前提にして、裁定取引から利益を得ようとするものです。誰かを踏み台にして、自分が勝とうとするものです。
しかし、それは、「値段」を買っているにすぎません。
「企業」を買うとは、別のことなのです。(何度も書いてすみません)
続けます。
いくら、株式市場が合理的でも、一般社会は、そうではありませんから、株価も外部動向に合わせて刻々と変化しますが、それだけではなく、スーパー合理的な市場で、株価が変動する要因は、2つあります。
1)企業の中に予測されなかった価値(特に、別マーケットへの足場のアドバンテージ)が発見されること。(別に書きます)
2)時間が経過すること。
2)だけ、解説します。
外部社会が流動的なので、いくら合理的な市場でも株価は将来を100%織り込むことはできません。5年後に30%成長していると、コンピューターがはじき出したとしても、株価に織り込めるのは、30%から不透明性XX%を減じた率だけです。不透明性は予測とは別の問題だからです。
だとすれば、時間が経過するだけで、他の要因はそのままでも、不透明性は減少しますから、その分だけ株価は織り込むことができ、上昇するんです。
実際には、株式市場は非合理的で、不透明性を必要以上に過度に嫌いますから、その分、普通は株価は下がっているんです(バブル時とかは除いて)。つまり、情報を完全に織り込んだアービトラージフリーな株式市場では、時間の経過とともに、その期間に相当する長さの企業の将来成長の分だけ、株価は上昇すると、理論的には、そうなるんです。
成長株に投資する醍醐味はそこであって、ゴリラ企業は、モンキー企業よりも、将来に対する不透明性は低いですから、当然に、その分だけ株価は高くなるはずなのに、そのことが十分に理解されていないために、株価は本当の価値よりも低いんです。割安なのに、割高と思われているんです。