動的PERと静的PER
PERについては、(1)株価(1株)を取り戻すのに、1株益の何年分になるか?という説明がされ、(2)株価÷1株益、という計算式で求められます。
しかし、この(1)と(2)はがイコールなのは、成長率がゼロのときだけです。
そこで、(1)を動的PER、(2)を静的PERとして、名付け、静的PERを動的に置き換えてみました。
両者の株価は1500円とします。
静的PER15 | 静的PER150 | |
(成長率ゼロ) | (成長率75%) | |
1年目1株益 | 100 | 10 |
2年目1株益 | 100 | 17.5 |
3年目1株益 | 100 | 30 |
4年目1株益 | 100 | 53 |
5年目1株益 | 100 | 93 |
6年目1株益 | 100 | 164 |
7年目1株益 | 100 | 287 |
8年目1株益 | 100 | 502 |
9年目1株益 | 100 | 897 |
10年目1株益 | 100 | xxx |
11年目1株益 | 100 | xxx |
12年目1株益 | 100 | xxx |
13年目1株益 | 100 | xxx |
14年目1株益 | 100 | xxx |
15年目1株益 | 100 | xxx |
累計 | 1500 | 1500以上 |
成長率ゼロの場合は、静的PER15の企業は、動的PERも15でした(当たり前)。しかし、成長率が75%の場合、静的PERは150もあったのに、9年目で、株価を追い越してしまいました。動的PERは9というわけです。
この視点では、PER150(成長率75%)の企業のほうが、PER15(成長率ゼロ)の企業よりも、はるかに割安だったのです。
(PER150を推奨しているわけではありません、他にも要因がありますから。別途、検証しますが、現在価値に割り引くときには「金利」「成長不確実性」を考慮に入れなければなりません。実際、PERの3桁は、私は買わないです、さすがに。)
真の割安さをはかるのに大切なのは、成長性と成長確実性だということが、いえると思います。
さて、長期投資の場合、将来の利益を買うのですから、今の利益の少なさは許容できるものですが、しかし、その理由が大切です。
ゴリラ企業の場合には、将来の利益と成長を安泰にするために、《参入障壁》を築くために、今はコストをかけています。そのため、CAP(競争力維持期間)が、長いのです。
しかし、モンキー企業の場合には、理由が立ちません。勢いがあって、成長率が高いかもしれませんが、将来は不確定であり、成長を織り込めるのは、せいぜい、2、3年でしょう。とすれば、それ以降の成長率はニュートラルに考えるべきで、上記の静的PER150のケースでいけば、せいぜい、動的PERは50程度です。
CAPの差が、PERそして、株価の差となっています。
現時点での、低PERに惑わされることのないように、
現時点での、成長率に惑わされることのないように、企業を選別したいものです。
繰り返しますが、将来の利益と成長を安泰とするために、今は参入障壁を積み上げているゴリラ企業に、狙いを付けましょう。
話は戻って、「動的PER」を、より、ややこしくしたものに、PFERというのがあります。
PFER = log(1+現在のPER[倍]×利益成長率[%]/100) / log(1+利益成長率[%]/100) [年]
大和総研吉野貴晶氏(毎月、今月は低PER優位であったとか、今月はEBITDA+EVだとか、データ分析ばっかりやってて、面白い注目アナリスト)によると、東証一部上場企業を対象に、PFERを基準に低いほうから並べて5グループを作成し、最もPFERが低い割安グループの銘柄を購入して、PFERが高い割高グループを売却したとすると、2003年から過去3年間PERの26%、PEGレシオの34%、を上回る37%のリターンが得られたようです。
けれど、式がややこしすぎますね。しょせん、目安なんですから。それなら、PEGレシオで、十分な気がします。暇ができたら、PEGレシオについて(理論的には意味がない指標ですが、実績的には成果があるようです)、書きます。