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2006.08.12

動的PERと静的PER

 PERについては、(1)株価(1株)を取り戻すのに、1株益の何年分になるか?という説明がされ、(2)株価÷1株益、という計算式で求められます。
 しかし、この(1)と(2)はがイコールなのは、成長率がゼロのときだけです。
 そこで、(1)を動的PER、(2)を静的PERとして、名付け、静的PERを動的に置き換えてみました。

 両者の株価は1500円とします。

  静的PER15静的PER150
  (成長率ゼロ)(成長率75%)
1年目1株益10010
2年目1株益10017.5
3年目1株益10030
4年目1株益10053
5年目1株益10093
6年目1株益100164
7年目1株益100287
8年目1株益100502
9年目1株益100897
10年目1株益100 xxx
11年目1株益100 xxx
12年目1株益100 xxx
13年目1株益100 xxx
14年目1株益100 xxx
15年目1株益100 xxx
累計1500 1500以上

成長率ゼロの場合は、静的PER15の企業は、動的PERも15でした(当たり前)。しかし、成長率が75%の場合、静的PERは150もあったのに、9年目で、株価を追い越してしまいました。動的PERは9というわけです。
 この視点では、PER150(成長率75%)の企業のほうが、PER15(成長率ゼロ)の企業よりも、はるかに割安だったのです。

(PER150を推奨しているわけではありません、他にも要因がありますから。別途、検証しますが、現在価値に割り引くときには「金利」「成長不確実性」を考慮に入れなければなりません。実際、PERの3桁は、私は買わないです、さすがに。)

  真の割安さをはかるのに大切なのは、成長性と成長確実性だということが、いえると思います。
 さて、長期投資の場合、将来の利益を買うのですから、今の利益の少なさは許容できるものですが、しかし、その理由が大切です。
 ゴリラ企業の場合には、将来の利益と成長を安泰にするために、《参入障壁》を築くために、今はコストをかけています。そのため、CAP(競争力維持期間)が、長いのです。
 しかし、モンキー企業の場合には、理由が立ちません。勢いがあって、成長率が高いかもしれませんが、将来は不確定であり、成長を織り込めるのは、せいぜい、2、3年でしょう。とすれば、それ以降の成長率はニュートラルに考えるべきで、上記の静的PER150のケースでいけば、せいぜい、動的PERは50程度です。
 CAPの差が、PERそして、株価の差となっています。

 現時点での、低PERに惑わされることのないように、
 現時点での、成長率に惑わされることのないように、企業を選別したいものです。
 繰り返しますが、将来の利益と成長を安泰とするために、今は参入障壁を積み上げているゴリラ企業に、狙いを付けましょう。

 話は戻って、「動的PER」を、より、ややこしくしたものに、PFERというのがあります。
 
PFER = log(1+現在のPER[倍]×利益成長率[%]/100) / log(1+利益成長率[%]/100) [年]

 大和総研吉野貴晶氏(毎月、今月は低PER優位であったとか、今月はEBITDA+EVだとか、データ分析ばっかりやってて、面白い注目アナリスト)によると、東証一部上場企業を対象に、PFERを基準に低いほうから並べて5グループを作成し、最もPFERが低い割安グループの銘柄を購入して、PFERが高い割高グループを売却したとすると、2003年から過去3年間PERの26%、PEGレシオの34%、を上回る37%のリターンが得られたようです。
 
 けれど、式がややこしすぎますね。しょせん、目安なんですから。それなら、PEGレシオで、十分な気がします。暇ができたら、PEGレシオについて(理論的には意味がない指標ですが、実績的には成果があるようです)、書きます。


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