« 「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」遥洋子 | トップページ | 動的PERと静的PER »

2006.08.11

低PER相場に慣れっこに

 以下は、ニューヨーク大学ビジネススクールからの資料で、低PER株と高PER株の、どちらが儲かるの?ということを、比較した表です。

 低PER高PER
1950年代21.84%19.27%
1960年代13.96%10.96%
1970年代8.89%2.26%
1980年代7.56%7.99%
1990年代11.44%16.99%
2000年代33.60%-14.73%
50年平均16.22%7.12%
 

 高PERと言っても、「業績が急降下して利益急減、計算上、高PER」なのか「好業績で人気化した」のか、まったく正反対のものを同じグループに入れても、どうなのかな、と思います。調査の意図は、「後者の人気株は危ないよ」だと思いますが、実際には、前者が足を引っ張っているケースも多いのではないでしょうか。
 グループ化したら、低PERグループが勝つのは、非常に理解できます。株価上昇は、期待と実際の格差是正から生まれます。株式市場は、行き過ぎる傾向がありますから、不人気株は、必要以上に、低PERになりがちですし、高期待株は、実情以上に高PERになりがちです。しかし、それは、一般論、平均点の話であって、高パフォーマンス株が、必ず低PERから出てくるということではありません。企業分析に自信があれば、自分の評価と、市場の評価の差が、大きい銘柄を選ぶことが、一番の裁定取引でしょう。

 とはいえ、時代間比較という意味では面白い資料です。
 50年代60年代80年代は、小さな違いである。
 70年代は、アメリカは超不況だったが、低PERのパフォーマンスが、かなり上回っていた。
90年代は、アメリカは絶好況だったが、高PER優位が強かった。
 00年代は、上の反動か、高PER不振がひどすぎた。低PERのパフォーマンスは飛び抜けている。

 これは、アメリカの状況ですが、日本でも、90年代の個人投資家ホームページは、高PERでなければ株でない、といった雰囲気でしたし、今は、低PER推奨の一色です。最近、株を始めた人は、この状況しか知りません。
 けれど、これは、時代のムードにすぎないと思います。今は、歴史的に異常な高PER受難時代、低PER好調時代なのであって、将来はわからないのです。(大和総研の吉野貴晶氏の統計では、東証の2001年から2006年の一桁PERパフォーマンスは、17.02%という異常高でした。それ以前は、一桁前半なので、やはり、際立っています。)
 最近、株で成功した個人投資家の本がたくさん出ています。ほとんどが、2000年以降に一財産を稼いでいます。彼らは、それなりに秀でた人が多く、他の状況でも儲けられるのかもしれません。しかし、たかが数年の実績であり、特殊事情下での元だということを肝に銘じないといけません。初心者が、安易に受け取って、バリュートラップ(いわゆる「割安株の罠」といわれる状況)にずるずると、逝ってしまわないかと....。


「PERの低い割安株だけを買おうとする人がいるが、私には賛成しかねる。リンゴとオレンジを比べるわけにはいかないのだ。
 (「ピーターリンチの株で勝つ」第10章 収益、収益、そして、収益)」

 テクニカル投資が、テクニカル線とのアービトラージ取引、さや取りにすぎないように、割安株投資は、ファンダ理論株価との、さや取りにすぎません。(これについては、また、書きます)
 それどころか、ファンダ価格も出すことなく、低PERというだけで買えなんてことになれば、博打です。(高PERがいいといっているわけではないです。)

 バフェットやピーターリンチのように、値段ではなく、企業を買いましょう。間違っても、低PERだという理由で、企業を選別することのないように。安く買いたいなら、株価を見ずに企業を選んだ後で、安くなるのを待ちましょう。

« 「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」遥洋子 | トップページ | 動的PERと静的PER »